父が再婚しました

Ruhuna

文字の大きさ
上 下
12 / 13

12.

しおりを挟む
その日、ラランド家は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれた




「なにかの間違いです!私には婚約者が既にいます!」
「それが何だというの?王命は絶対よ。あなたはクラウス・シェイドと婚約解消し、国王の第二側室として嫁ぐのです」
「そんな横暴な…!!」


イライザはとうとう強行手段に出た
兄である国王にメルージュが嫁いでしまえばあとはメルージュをどう扱おうがラランド侯爵は手出しができない
イライザはメルージュを婚姻したのち病にかかったと適当な理由をつけて死に追いやるつもりでいた


「これは王命です。王命に背くということは反逆と同じ!速攻死刑よ!」
「いくら国王と言えどもこればかりは元老院が許しませんわ!お世継ぎがいないならまだしもご立派なお世継ぎがいるというのに私が嫁ぐメリットはありません!」


メルージュはこれがイライザの罠だということを確信していた
父のブラッドか王城に急遽朝一で呼ばれたあたりから嫌な雰囲気はしていた
ここ最近は朝食など一緒に取っていなかったイライザが食堂に出てきた時から何か起こるかもしれないと身構えていたがまさかこんなことを企んでいたなど誰が思っただろうか


「つまりあなたは王命に従わないということね?」
「従う従わないという事ではありません。これは元老院に掛け合って再度審議して頂くのが正しいと思います」
「あーだこーだうるさいわね!!黙っていうことを聞きなさい!!」
「お断りします!!」
「本当に憎たらしい!!!誰か!メルージュを部屋に閉じ込めておきなさい!!!」



私が許可するまで部屋から出すことは許しませんわ!!とメイド達に怒鳴りつけるイライザをメルージュは睨みつけた
だがメルージュが言うことを聞かないとイライザはメイド達に手を出し始めるのでメルージュは大人しく部屋に篭った




「これをクラウスに届けて」
「かしこまりました」


一応監視役であろうメイドに手紙を渡す
メイド達はイライザに暴行されないように順従なフリをしているだけで実際はメルージュの味方であった

メルージュは自室から見える外の風景に目を向けた
季節は晩夏から初秋に移ろうとしている
どうか寒くなる前に全ての問題が終わってほしいと心から願ったら







ーーーー




「奥様!それはなりません!」
「メイドの分際で私に指図する気?!首にするわよ!!!!」


あれから何時間たっただろうか
窓際のソファでウトウトしていたメルージュはドアの向こうから聞こえる声で目が覚めた

どうやらメイド長とイライザが言い合いをしているようだ
バタバタと聞こえる足音がどんどん近づいてきた


「メルージュ!!」


バタン!!とドアを勢いよく開けた先には髪が少し乱れたイライザが立っていた
その後ろには男性の姿があった


「誰ですの?」
「ふんっ貴女が言うことを聞かないからこうやってわざわざ国王陛下がお越しになられたわよ」
「なっ…!」


イライザの後ろからずっと出てきたのは国王だった
イライザに似たその顔はニヤニヤとメルージュを見つめていた



「ほお。イライザほど美しくはないが、まあ行けなくもないな」
「約束は守って頂きますわよ?必ずその女を傷物にしてくださいね」


メルージュは身の危険を感じた
王城ならまだしもここはラランド侯爵家だ
王城ほど警備も手厚くない上に国王に意見ができる公爵もいない
父が留守にしている今この瞬間は悔しいがイライザに決定権がある以上メイド達も助けに入るのは難しかった


「それでは、1時間後にまたきますわ」


そう言い残しドアをがちゃんとしてられた


目の前には国王だ
普段ならば腰を落とし敬意を表する相手だが今この瞬間下卑た笑顔をする国王はメルージュからしたらただの犯罪者と変わりはない


「陛下!これはあまりにも横暴でございます!同意なしの行為はいくら陛下といえども罪に問われます」
「私を誰だと思っている、国王だぞ!この国で最も偉いこの私に抱かれると言うのに何を怯えている?」
「いくら国王といえど今やっていることは犯罪者と変わりありませんわ!!」
「小娘ごときが私に意見するな!!」
「きゃぁ!!」


あろうことか国王はメルージュの頬を平手で叩いた
その衝撃にメルージュは倒れ込み打たれた頬を庇いながら国王を睨みつけた


「国王が人に手をあげるなど随分と王族は堕ちたものですわね」
「ふん!いつまでその虚勢がはれるから実物だな」


国王はそういうとメルージュに近づき手を伸ばしてきた
ハッとしたメルージュはその手を叩き急いで立ち上がった
鍵はしまっているがメイドに託した手紙が今頃クラウスに届いてるはずだ助けがくるそれまではどうにか時間を稼げないかと部屋の中を走りながら考えた
そうしてベッドの上に置いてあった大量のクッションをメルージュは国王に投げつけた



「はっはっは!その程度で私の足を止めれるはずがな、いたぁ!!」
「もうあなたは国王でもなんでもないわ!犯罪者よ!!」



クッションが無くなってきたため、メルージュは部屋に置いてある調度品を次々投げ始めた
それら見事に国王にあたり僅かながらの時間を稼ぐことができた


「小娘が~~~!!!図に乗り追って!!」
「ッッ!!」


物がゴツんと当たった国王が激怒し床に落ちていた調度品を掴みメルージュに投げつけようとしてきた




「そこまでだ!!」




塞がれていたドアから助けがやってきた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

忍びの末裔の俺、異世界でも多忙に候ふ

たぬきち25番
ファンタジー
 忍びの術は血に記憶される。  忍びの術を受け継ぐ【現代の忍び】藤池 蓮(ふじいけ れん)は、かなり多忙だ。  現代社会において、忍びの需要は無くなるどころか人手が足りない状況だ。そんな多忙な蓮は任務を終えた帰りに、異世界に転移させられてしまった。  異世界で、人の未来を左右する【選択肢】を見れるレアスキルを手にしてしまった蓮は、通りすがりの訳アリの令嬢からすがられ、血に刻まれた【獣使役】の力で討伐対象である猛獣からも懐かれ、相変わらず忙しい毎日を過ごすことになったのだった。 ※週一更新を予定しております!

転生してもノージョブでした!!

山本桐生
ファンタジー
八名信夫40歳、職歴無し実家暮らしの無職は運命により死去。 そして運命により異世界へと転生するのであった……新たな可愛い女の子の姿を得て。 ちなみに前世は無職だった為、転生後の目標は就職。

運命の人は貴方ではなかった

富士山のぼり
恋愛
「パウラ・ ヴィンケル……君との婚約は破棄させてもらう。」 「フレド、何で……。」 「わざわざ聞くのか? もう分かっているだろう、君も。」 「……ご実家にはお話を通されたの?」 「ああ。両親とも納得していなかったが最後は認めてくれた。」 「……。」 「私には好きな女性が居るんだ。本気で愛している運命の人がな。  その人の為なら何でも出来る。」

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...