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しおりを挟む「エマと第一王子の婚約が決まった?」
「そうだ。父から聞いたから間違いはないはずだ」
平穏な学園生活を送っていたある日
いつものようにクラウスと学園内のローズガーデンでお茶をしているときにクラウスから伝えられたその内容にメルージュは目を見開いた
「第一王子って側妃様のお子でしょ?まだそんな年齢ではなかったはずじゃ…
」
「まだ10歳かそこらのはずだよ」
「エマがその婚約に納得するとは思わないけれど…」
「それが案外乗り気らしい。ラランド侯爵夫人は第一王子を臣籍降下させて未来のラランド侯爵にしようとしているみたいだけど…エマは違うみたいだ」
「王妃に慣れると喜んでそうね」
「正解。彼女お得意の自己解釈で自分は未来のプリンセスだとか言ってるみたいだよ」
ニコニコと笑いながら周りに吹聴しているであろう義妹の姿を想像しながらメルージュは笑いそうになるのを堪えた
傲慢で上から目線の彼女はきっと義姉である私よりも立場が上になると思っているのだろう
「(現実はそんなことないのに。この国が長子継承しか認めてないのを知らないのね)」
サスーン王国で認められているのは長子継承のみである
そこには男も女も関係ない
長子というのがポイントだ
正妃との間に長子である第一王女がいる以上、第一王子が王となるのはあり得ないことだがエマの頭ではそれを理解していないのだろう
それもこれもエマの実母であるイライザのせいだ
イライザはエマに対して毎日のように「王家の血を持つ貴女は特別よ」と言い聞かせている
それを間に受けたエマの脳内はそれはそれはお花畑となってしまったのだ
そもそもここ最近のサスーン王国は、国王の妹であるイライザのせいで法などあってないようなものになってきていることはメルージュも理解していた
国王であるイライザの兄はイライザを溺愛している
イライザが望めばその全てを叶えているのが兄である国王だ
なんでも王太子時代にイライザに来ていた縁談を全て断っていたのは兄だったという噂までも流れている
そんなイライザがラランド侯爵に恋をしていたら?
メルージュの母が邪魔だと思っていたら?
あの時の事故が実は仕込まれているものだったら?
考えれば考えるほどに疑問は生まれ謎は深まる
メルージュは母の仇をとりたかった
いくら事故とはいえどもイライザは母の霊前に弔いもしなければ謝罪すらしていない
むしろ王妹である自分が嫁いできたのだから喜べ、という始末だ
その時からメルージュはこの義母に復讐をしようと誓った
差し違えてでも義母を殺したかったメルージュを止めたのはクラウスだ
「殺すのは簡単だけど、然るべき法で裁いてからのほうが君のお母様は喜ぶんじゃないかな?」
そう教えてくれたクラウスの言葉でハッとした
母を苦しめたこの女は中々に手強い
感情的で愚鈍な一面もあるが腹黒さはピカイチだ
メルージュの心の中の黒い部分が燻りだるのを感じたクラウスはメルージュの手を握った
「メルージュ。今日はうちに遊びに来ない?」
「突然お邪魔して大丈夫なの?」
「父も母も君に会いたがっているし、何より会わせたい人がいるんだ」
「誰かしら?」
「それは会ってからのお楽しみだよ」
放課後の約束を楽しみにメルージュは午後からの授業に臨んだ
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