32 / 48
31
しおりを挟む「できたわ!!」
「まあ!すごく素敵!」
ラウラが目の前にパッと広げたのは深紅で作られた隣国のマーメイドドレス
胸元はハートカットで、そこから腕に広がるチュール生地がふわりと幾重にも重ねられ肘部分までを覆うように膨らみがあった
胸から膝のラインまではピッタリと体に寄り添って膝下からは人魚のヒレのようにヒラヒラと揺れていた
「こんなにドレスを早く作ったのは初めてだけど…うん、いい出来だわ」
「ありがとうラウラ。疲れたでしょ…?」
「楽しかったから大丈夫よ」
化粧をした上でもうっすらと目の下にクマが見えるラウラに心が苦しくなった
そんな私に気にしないで!といつもの笑顔を向け、ラウラはメイド達にドレスを私に着付けるように指示を出した
ーー
「さて、これは春の祝賀会のお楽しみとして、今日の夜会ではこのドレスにしましょう!」
「借りてばっかりで本当にごめんなさい…」
深紅のマーメイドドレスはメイド達が丁寧にクローゼットに片付けてくれた
そしてラウラがそれと入れ替わるようにネイビーのベルラインの一般的なドレスを持ってきた
ネイビーだがふわりと腰からつけられたチュールが重たさを中和してくれるラウラお気に入りのドレスらしい
「いいのよ!ロックフェラー伯爵家も今は復興中だから色々と大変でしょ?友達なんだからたまには頼ってよ!」
それにシャーロットは歩く広告塔になってもらうわ!と宣言するラウラに苦笑しつつ私は渡されたドレスに袖を通した
今日はルフェリ侯爵邸で毎月開かれる夜会に出席する予定だった
ロックフェラー伯爵令嬢としての復活戦としてラウラから正式に招待状も貰っている
あと数時間後にはお父様もルフェリ侯爵邸にやってきて私をエスコートしてくれる予定だ
つまり今日の夜会は私とお父様の復活戦でもある
お父様に手紙で事の詳細を送った
返ってきた手紙でわかったのはフィル様に見染められたという事実に困惑していることだった
『会った時に詳しく!!』と最後に殴り書きされていたのには笑ってしまったのはここだけの話だ
「さーて、今日の夜まで磨くわよー!!」
ラウラのその合図で私とラウラはメイド達からもみくちゃにされながら夜会のために準備を始めた
ーー
(「ラウラったら私が傷つかないように配慮してくれたのね」)
メイド達にもみくちゃにされてから半日後
日が落ちると同時に始まった夜会は貴族達の鮮やかなドレスとルフェリ侯爵家の準備で華やかな場所と化していた
お父様にエスコートされながら夜会会場に入った私たちにも貴族達の視線が突き刺さる
だがその視線は好意的なもので居心地は不思議と悪くなかった
ラウラが本日招待してくれている貴族達は王家派の貴族達ばかりだったからだ
これで、貴族派の人達がいたらきっと不躾な視線に晒されていたかもしれない
ラウラの配慮にジーン、と感動しながらお父様と主催者であるルフェリ夫妻の元へと静かに歩く
「ひ、久しぶりの夜会だ…」
「お父様、お父様。手と脚が一緒に出てますわ」
「仕方ないだろう…緊張しているんだから…」
カチカチになって手足が同時に出ている父に苦笑しながらルフェリ夫妻に挨拶を行う
ラウラがニヤリと一瞬だけ笑ったのをみて私も無意識に入っていた体の力がスッと抜けた
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
【完結】逃げ出した先は異世界!二度目の人生は平凡で愛ある人生を望んでいるのに、平凡では終われない
絆結
恋愛
10歳の時に両親と妹を一度に事故で亡くし、親戚中での押し付け合いの末、叔母夫婦に引き取られた主人公。
暴力、暴言、実子との差別は当たり前。従姉妹からの執拗な嫌がらせの末暴行されそうになり逃げだした先は異世界。
─転写─
それは元の世界の自分の存在を全て消し去り、新たな別の世界の人物として魂を写すこと。
その人の持つ資産の全てを貰い受ける代わりに、別世界に創られた"器"にその魂を転写する。
前の人生の記憶は持ったまま、全く別の身体で生まれ変わる。
資産の多さに応じて、身体的特徴や年齢、性別、転写後の生活基盤を得ることができる。
転写された先は、地球上ではないどこか。
もしかしたら、私たちの知る宇宙の内でもないかもしれない。
ゲームや本の中の世界なのか、はたまた死後の夢なのか、全く分からないけれど、私たちの知るどんな世界に似ているかと言えば、西洋風のお伽話や乙女ゲームの感覚に近いらしい。
国を治める王族が居て、それを守る騎士が居る。
そんな国が幾つもある世界――。
そんな世界で私が望んだものは、冒険でもなく、成り上がり人生でもなく、シンデレラストーリーでもなく『平凡で愛ある人生』。
たった一人でいいから自分を愛してくれる人がいる、そんな人生を今度こそ!
なのに"生きていくため"に身についた力が新たな世界での"平凡"の邪魔をする――。
ずーっと人の顔色を窺って生きてきた。
家族を亡くしてからずーっと。
ずーっと、考えて、顔色を窺ってきた。
でも応えてもらえなかった─。
そしてある時ふと気が付いた。
人の顔を見れば、おおよその考えていそうなことが判る─。
特に、疾しいことを考えている時は、幾ら取り繕っていても判る。
"人を見る目"──。
この目のおかげで信頼できる人に出逢えた。
けれどこの目のせいで──。
この作品は 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
ごめん、好きなんだ
木嶋うめ香
恋愛
貧乏男爵の娘キティは、家への融資を条件に父と同じ様な年の魔法使いへと嫁いだ。
私が犠牲になれば弟と妹は幸せになれるし、お母様のお薬も手に入るのよ。
辛い結婚生活を覚悟して嫁いだキティは予想外の厚待遇に驚くのだった。
あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。
※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。
元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。
破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。
だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。
初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――?
「私は彼女の代わりなの――? それとも――」
昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。
※全13話(1話を2〜4分割して投稿)
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない
櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。
手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。
大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。
成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで?
歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった!
出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。
騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる?
5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。
ハッピーエンドです。
完結しています。
小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる