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しおりを挟む「どうして、そう思うのかしら?」
最初に動き出したのは王妃様だった
扇子をパンっと広げて口元を隠しながら問いかける王妃様はどこか機嫌が悪そうにみえた
「だって、王女になるってことは王子様達と兄妹になるってことですよね」
「ええ。私の娘にもなるってことよ」
「兄妹になったら、その…」
ちらりちらりとアイシラ様がこちらに視線を向ける
正確にいうといつの間にか私の目の前に立っていたフィルナンド殿下に向けて恋する乙女の如く視線をちらつかせていたのだ
(「「「なるほどね…」」」)
その態度に鈍感な国王陛下以外はアイシラ様の言わんとすることを理解してしまった
(「フィルナンド殿下はかっこいいものね」)
アイシラ様からの視線を鬱陶しそうにしているフィルナンド殿下の顔を見て苦笑する
彼は異性から明らか様に好意を向けられることが好きではなかったからだ
「養子になりたくないなら、貴方は王族ではなく一般市民として生活してもらう事になるけれど…」
それでいいの?と王妃様が眉間に皺を寄せながらアイシラ様に問いかける
王妃様の機嫌が悪い事に気づいたのかアイシラ様は焦ったように声をあげた
「そんな…!!そ、そしたらどこかの貴族の養子でも構わないです!!」
そうすれば王女にならなくてすみますよね。と笑うアイシラ様にその場にいる全員が言葉を失った
(「無知という無謀というか…王族をそんな簡単に養子に出すなんて無理な話なのに…」)
王妃様も美しいお顔をどんどんと強ばらせていった
扇子がミシミシと言っているのは幻聴ではなさそうだ
「陛下!私のお願い、聞いてくれませんか??」
アイシラ様がいきなり陛下に駆け寄りロケットペンダントを胸元に握り込みながら陛下に話しかけた
「……とりあえず、この件は保留にしよう」
「あなたっ!」
「王女宮は長らく使われていなかったからすぐに掃除を。アイシラはそこに一旦住みなさい」
解散だ、と頭が痛そうに陛下が扉に向かって歩き出す
オロオロとしながら王妃様はその後を追いかけていく
不安そうな顔をしたローズマリー様とカロリーナ様を連れて王子達も部屋を後にする
残された私たちも部屋を出ようと歩き出した
(「え、私なんで呼ばれたの?」)
それだけが謎に包まれたままだった
ーーー
アイシラ様との顔合わせの日に何故か呼ばれていた私は特に何をするわけでもなく立っていた
部屋を出てフィルナンド殿下の仕事部屋に帰ってきて通常業務に当たった
その日の午後に王妃様から呼び出された
「午前中はごめんなさい」
「いえ!王妃様が謝られることではありません!」
王妃様の部屋に来て開口一番で王妃様から謝罪をされた
なんでもあの場で私に頼みたいことがあったから呼んでいたのだと聞かされた
「アイシラ様の教育係ですか?」
「ええ。フィルナンドをあそこまで立派に育て上げたあなたならアイシラ嬢に良い教育を施せると思って…」
午前中のことを思い出したのか疲れ切った顔をする王妃様が痛々しかった
王族女性が行う公務は多岐にわたる
パーティーの準備から王宮内の管理とその量は膨大だ
しかし、現在の王族で女性は王妃様、ローズマリー様のみ
そのローズマリー様も妊娠中であるため公務をセーブしており、実質王妃様が全ての公務を行なっているのが現状だった
だからこそアイシラ様という王女が増えることは王妃様にとって喜ばしいことだったのだ
まさかあんな形で断るとは露にも思っていなかったかもしれない
「週に3日。午前の1時間だけでいいの。王女にはならないと言ったけど…どっちみち教育をしていても損はないと思って」
「そう、ですね。かしこまりました。では早速来週から取り掛かります」
フィルナンドからは私が言っておくわね~と王妃様の言葉に甘える事にした
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