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「その女を黙らせろ」

「ん~~~!!」


泣き喚く妹さんの声に頭が痛いのか陛下は妹さんの口を閉じるように命令した
そのおかげか唸り声は聞こえるがだいぶ静かになった


「さて、ディアナ公女。此度は色々と迷惑をかけたな」

「滅相もございません」

「そうだ、何か一つ褒美を与えよう」

ニヤニヤと笑う陛下につい私も苦笑してしまう
私が何を言いたいか王太后から聞いているのにこうやって本人の口から言わせたいのは陛下の性格の問題なのだろうか


私はゆっくりと一歩を踏み出した
そしてチラリとディアナのお父さんを見てから陛下に視線を合わせた


「2年後、私は成人を迎えます。その際にベルトラ公爵として認めて頂きたいと存じます」

はっきりと、堂々と私はそう告げた


「なんだと?!」


私の言葉にいち早く反応したのはディアナのお父さんだった
それもそうだろう、2年後に娘が爵位を寄越せ!と言って来たのだから


「お前、何を言ってるかわかっているのか!」

「勿論でございます。婚約者がいなくなり、姉妹もいなくなった。公爵家を継げるのは私しかおりません」


ディアナのお父さんの視線に負けじと私は言い返した


「お前は女だ!女は爵位は継げないんだぞ」


「ですからこうして陛下にお願いしているのです」


ルーニー王国で爵位を継げるのは男子のみ
直系男子がいない場合は本家の娘と分家の男子を結婚させて爵位を繋いでいくのが一般的な方法だった
なので、実はディアナの妹さんにも婚約者はいたのだ
ベルトラ家の分家に属する伯爵家の子息が
まあそれは今は置いといて問題は目の前のことから解決していかなければならない


「女性への爵位継承を承認せよ。ということか?」

「はい」

「ふむ。たしかに昨今の少子化により婚約を結ぶのが難しくなっている貴族は多い。………良いだろう。初の女公爵としてどこまで登れるか見てみようじゃないか」

「ありがとうございます!」


『やったわね!!ヒナ!』


周りの目からしたら歴史の動いた瞬間に思えるが、実はこれは最初から仕組まれたことだった


国王は元々女性への爵位継承を考えていたが、凝り固まった貴族達には受け入れ難いことでもあるのは理解していた


だからこそ今回このような形でやや強引ではあるが前例を作って仕舞えば、みんなが自ずと納得してくれるのではないかという打算があったそうだ


それもこれも王太后のおかげである
最上級のカーテシーを行いチラリと王太后をみるとパチンと可愛らしくウインクする彼女と目が合った

それにふふっと笑いながらも、感謝の意を込めてもう一度頭を下げた




「話はこれで終わりだ。下がれ」


陛下のその声で、その場は解散となった
退場する国王と王太后を見送り、私はくるりと後ろにいる妹さんへと向き直った



「んんん~~~!!!」


「ディアナ…」


怒りに震えている妹さんと、顔を真っ青にしているディアナのお父さん
2人を交互に見た後、私は何も言わずに2人を無視して外へと足を向けた
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