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プロローグ
しおりを挟む『復讐、して欲しいの』
ーー
「復習…?」
『違うわ。復讐よ』
私こと、小鳥遊緋夏25歳は目の前に浮遊する女性ーーディアナ・ベルトラと名乗る彼女の言葉に首を傾げた
「そもそも此処はどこなの?」
『あの世とこの世の間…貴女はヒナって呼ぶわね。亡くなったのよ』
「へー」
『の、呑気ね…』
この子で大丈夫なのかしら…と小さい声で話す彼女の姿をまじまじと見つめた
足はないし、そもそも体も透けている
これが幽霊か、と心の中で特に驚きもせず納得している自分がいた
「最後の記憶がバスが突っ込んでくる瞬間だったから、死んだのも納得しているの」
『ばす?貴女の世界のことはよくわからないけど…私の話を聞いてくれるかしら?』
こくり、と頷いた私を見て彼女ーディアナはぽつりぽつりと話し始めた
ーー
「……お気の毒な人生だったのね」
『そうでしょう?自分でもこんな最期が情けなくて涙が出てくるわ』
ディアナが話した内容は私が想像していたよりも酷いものだった
彼女の不幸は10歳で母親が亡くなった頃から始まる
彼女の母親を愛していた彼女の父親は妻を失った喪失感から家に帰ってくることはなくなった
屋敷に残ったのは10歳のディアナと1つ年下の彼女の妹だけ
この妹がどうやら曲者だったようで、父親がいなくなるや否や屋敷のメイド達を味方につけ、姉であるディアナを使用人部屋に追いやり、本来であればベルトラ公爵家「百合の間」、ベルトラ家長女が使う広くて日当たりの良い豪奢な部屋を取られてしまったそうだ
『でも私も黙ってたわけじゃないわ。何度もヴィオラには抗議したし、お父様にも手紙だって書いたわ』
「返事はあったの?」
『「好きにしろ」その一言よ。』
ガクッと項垂れたディアナに苦笑した
その寒々しい部屋で彼女は8年も過ごしたそうだ
「それで、貴女の死因は?私と同じで亡くなったからここにいるんでしょ?」
『……風邪を、ひいたの。でも軽い熱だったわ…その、部屋で休んでたらヴィオラが、機嫌が悪かったのか鞭を持ってきて…』
「まさか…」
『痛かったのだけは覚えてるわ…その後の記憶はちょっと曖昧。でも死ぬ間際に「神様。どうか私をいじめてきた人たちが楽な死に方をしませんように!!」ってお願いしたらここにいたわ』
「なるほど…でもそれが私とどう関係するの?」
私は一番の謎ポイントであるそこに触れた
彼女の人生が散々だったのは重々理解した
だがそれが私とどう関係あるのかは謎に包まれていた
『神様らしき声が聞こえて、今から連れてくる人にお願いしたらきっと私の仇をとってくれるって』
「えぇ…」
『神様がそういうってことは貴女はそれだけの力があるんじゃないの?』
こてんと首を傾げたディアナに私はハハッと乾いた笑いしか出なかった
神様など信じていなかったが、ディアナの話と、私の過去を照らし合わせるとどうやら神様というのは存在しているらしい
「私、検察官だったのよ。そうね、簡単に言えば罪人の罪を事細かく調べる仕事をしてたの』
私の話を聞いたディアナはなるほど。と納得した
『それじゃあ私の代わりに仇をとってくれる?』
スイっと近寄ってきたディアナが私の手を取り握りしめる
冷たく細いその手からディアナの必死さが伝わってきた
「私でよければ、頑張るわ」
『ありがとう!!』
そうして私は小鳥遊緋夏改め、ディアナ・ベルトラとして生きることを決めた
ーーー
検察官、と言っていますが専門的なことは出てきません。
ふわっとしたイメージだと思ってもらえれば幸いです。
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