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最終章 我が祖国よ永遠に……

第6話 300年ぶりの父母との対面

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 ローフェス男爵の情報から北の村にリヴァリオンの騎士の男が住んでいると聞き、協力を求めようとリーラとダリルは村へと向かう。

「この場所を知っている、こっちよ」

かつての魂の持ち主の記憶が重なっていく。街から外れた村への道は歩き慣れた、見知った道であった。

「姫、どこへ?」

「ダリルのお父さんとお母さんの家へ」

「?!」

 二人は街から外れた小道を湖に向かい歩くと集落を発見する。近づくと廃れた家々が何軒か見えて来た。リーラは一軒の家の前に立つ。

「リーリラ王女の家…」
リーリラの家は300年立ったと思えぬほど状態が良い家だった。

「あれがダリルの両親が晩年住んでいた家だよ」

「そうなのですか…」
ダリルは疑心暗鬼な表情で家を眺めていると周りから幾つか光が集まってきた。

『あれっ?ダリルがいる?!』
『リーリラもいる??』
と精霊達が集まって来た。

「ごめんね、リーリラじゃないの。私はリーラ。新しい継承者だよ。もしかして、この場所を守ってくれてたのかな?」
リーラが精霊に優しく尋ねる。

『みんながいつでも戻って守ってたんだ』

「ありがとう、みんな。ハントンおじさんとおばさんはどこにいるか知ってる?」

『知ってるよ、こっちだよ』
精霊達は手招きすると村の共同墓地へ案内してくれた。墓地にはハントン夫妻の名が記された墓石があった。ダリルは墓石を見た瞬間に崩れるように座り込む。

「父上、母上…申し訳ありません。帰りが遅くなりました」
花の精霊が一輪の花をリーラに手渡した。ダリルの傍に座るとリーラは花を墓石に置く。

「おじさん、おばさん、私が死んだ後も子供達がお世話になりました。あの子達は立派に育ち、エステール家を立派に引き継いでくれたようです」
リーラがハントン夫妻に話かけると、精霊達は立派な騎士になったと教えてくれた。

「姫…子供ってどういうことですか??」
まだ未婚のはずなのに…と怪訝そうな顔をするダリル。

「前の魂の持ち主だったリーリラ姫の記憶があるのよ」
とリーラは頭を指差した。
「リーリラ姫の…」
ダリルはリーリラ姫と聞き、ほっと胸を撫で下ろすとかつて共に過ごしたお転婆王女の姿を思い返した。

『カイルとリーリラのお墓はこれだよ』
と精霊達は教えてくれた。

墓石にリーリラと夫であるカイルの名前が記されていた。せめてリーリラの名だけでも残したいというカイルの想いを感じ、リーラは物悲しそうに微笑んだ。

「リーリラ姫、カイル…国を守ってくれてありがとう」
ダリルは亡き二人を懐かしむように思い出しているようだ。そして、懐にある短剣を取り出すとリーラに手渡した。

「姫様、リンダをお連れ下さい。彼女が生きているならこれからの戦い、姫の力になってくれるでしょう」

リーラはダリルから短剣をじっと見つめ、「ありがとう」
と短剣を受け取った。




「おまえ達誰なんだ!」
村人と思われる男が後ろから叫ぶ。リーラが振り向くとその懐かしい面影に驚く。

「まさか…リヨンおじさん?!」
リーラはすぐに走り出しやつれた村の男に抱き付いた。

「リヨンおじさん…無事で良かった…」

「ラリーなのか?!無事だったのか?!」
リヨンはリーラを抱き締めると、
「あんなに小さかった子が大きくなって」
と頭を撫で始めた。

その感動の再会を横で見ていたダリルは「コホン!」と咳払いをする。リヨンはダリルを見るとびっくりしたように目を見開く。

「おい、まさかダリルなのか!俺だよ、エステールさんの部下のリヨン・グリットだよ!」

「グリット?!あの怠け者のグリットか?」

「馬鹿野郎!怠け者は余計だよ!改心して真面目に働いてるさ!」
懐かしい同僚に再会できた喜びでダリルとリヨンはガシッと抱擁を交わす。

「おまえがラリー、いや……姫様を守っていたのか?」

「あぁ」

「さすが騎士の鏡だよ」
二人は手をパンと合わせ合う。

「おまえも姫様の存在に気付いていたのか」

「北の地には聖女伝説が残っていてな…大半の国民は知っている。知らないのは新来者や馬鹿な王族だよ…」

「そうか…」

「リヨンおじさん!!ロンはどこ?」

「ロンは……四年前に兵士に連れ去られ戻ってない…」

「ロン…………、
 おじさん、私は国を取り戻すために帰ってきました。力を貸して下さい!子供達は救う為に!!!」

「姫様……よくぞ戻って下さりました。私は王族を守る騎士です、姫様がお戻りの今、あなたのために働かせてください!私、リヨン・グリットは姫様の為に忠誠を誓います」

「おじさん……、リヨン・グリット、その忠誠受け取った。国を奪還するために力を貸してくれ」

「はい、もちろんでございます、姫様」
リヨンは肩肘をつき、ようやく会えた君主である王女に頭を垂れた。

 二人は力強い仲間を手に入れ、西の街へと進軍を進めたのだ。



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