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第11章 リーラと精霊王 フォールド領編

第1話 島への奇襲

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帝国暦321年 初秋

フォールド領 領都ホックス

 朝から港にはフォールド騎士団の騎士達が集まり、軍隻出港の準備にかかっていた。

「ルマンド様、お考え直しを!島には不吉な噂がございます」
サザリーは必死に島への奇襲攻撃を中止するようにルマンドに懇願していた。

「黙れ!サザリー!お前の様な役立たずはもはや、側近から外す、下がれ」
 サザリーに一切耳を貸そうとしないルマンドは船へ向かう。

「ルマンド様…」


横で傍観するしか出来ないロックはサザリーに、
「サザリー、すまない。後は頼んだ」
と小さく呟くとルマンドの後を追い、船へ乗り込んだ。



◇◇◇


ザブーン
ザブーン

 空も雲一つなく晴れ渡り、北特有の深い青色に澄んだ静かな海を2隻の軍隻は静かなに颯爽と進んでいた。

 フォールド騎士団長はご機嫌な様子で目を輝かせて、ルマンドに話をかけた。
「ルマンド様、よくご決断されました。この
軍船もリッチモンドから購入した後、一度も使用することなく見せ物になるかと心配しておったのです。ようやく航海に出れ、感無量です」

「あぁ」

「島に何もなくとも騎士達にも刺激的な予行訓練が必要ですから」

「団長、私は予行訓練などに船を出したのではない」

「はい?」

「本気で島を陥す。我が治世に新しい風を吹かすためだ。騎士達にも遊びではないことを伝えてくれ」

「はっ!了解しました」
深々と礼を取るとフォールド騎士団長は自身頬をパチンと叩き、気合いをいれると船室から退席した。

 隠匿されていた島の情報を調べると、昔、島に漂流した領民の証言から島には人が住み、人々は火や水、風を操り、一瞬で怪我を治す治癒能力も持っていたそうだ。話せる動物も共存し、豊富な食料に北の地にあるにもかかわらず温暖な気候でまるで天国のような場所であったと語られている。

「なんとかその力を得たいものだ」

「……」
ぽつりと呟いたルマンドの一言にロックはただ横で見守ることしか出来なかった。


「島が見えたぞーー」
騎士の声が船内に響き、ルマンドとロックは船室を飛び出した。

 海の中を浮かび上がるように島の姿が見えて来た。

「あれだけ大きな島がどうしていままで知られなかったのだ…」
ルマンドは唖然となりながら呟く。
「まるで存在を隠していたようです」
ロックも隣で呟いた。

 目の前に現れた島を見た騎士達は騒めき、フォールドの高台からも未だかつて見えることのなかったことに動揺し始めた。

「間も無く、島に上陸する!島を陥すぞ!」
団長の声が船内に響くと同時に快晴だった空の様子が変わり、雨雲が現れた。

ゴロゴロ…
ピカッ
ドドドーーッ
雷も鳴り響く。

「なんだ!」
「何が起こった!」

「なんだ、あれは!」
「沖から大きな波が押し寄せてる?!」

突然、島の左右から大きな波が出現し、船に向かい襲って来た。

「ロック、なんだ?あれは…」
「ルマンド様、マズイですよ」

かなりの速さで巨大な波が押し寄せる。

「波、出現!!皆、船内に退避しろ!!」

「うわぁーー!!目の前だ!」
「船が傾いて動けない!」
「助けてくれー!!」

既に船が傾き、身動きが取れないルマンドは波の衝撃で船から落ちてしまった。
「うぁーーー」

「ルマンド様ァーーー!!うぁーー」
ロックもルマンドの後を追うかのように船から落ちる。



ザブーーーン!!!

巨大な波はあっという間に船を飲み込み、邪魔な船をフォールド岸へと追いやったのだ。





◇◇◇


ブク、ブク…

ーーうっ、苦しい…



『此奴らに光の力の痕跡を感じる…あの子の知り合いか…仕方ない、救ってやるか』



深く沈んでいたルマンドはある力により海面へと浮上していく。そして、海の外へ出るとゆっくりと浮きながら身体は島へと運ばれていく。


「た、たすかった…」

暗い海から光を見えた安堵からルマンドは意識を失っていったのだ。


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