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第10章 恋の波乱を巻き起こすデビュタント
第4話 エリザベスの婚約
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久しぶりにウィンターニアから帝都に戻ったエリザベスは皇宮にて休養を取っていた。
ウィンターニアの騒動以降、拡散された水の化け物を鎮める為に領内を巡回し、帝都との医療格差を驚かされたのだ。少しでも改善したいとウィンターニアへ残留を決め、領民の為に活動していたが初夏に行われるデビュタントの準備とある報告の為に帝都に戻ったのだ。
そして、今、エリザベスは最も会いたい人物に会えずに困っていたのだ。
「何ですって?リーラが休暇でアンデルクへ?デビュタントも出席しないですって?」
リーラがデビュタントに出席するとばかり思い、夏の宴に近づいてから話せば良いと思っていたエリザベスは愕然とする。今年の夏の宴にはアンデルク王族も招待されている、リーラに想いを寄せているライアンと共に双子の妹のアネット姫も来る予定なのだ。
「なんだか嫌な予感するわ」
エリザベスは何故かとてつもない不安に駆られていた。アネット姫とはナターシャ国に嫁いだアンジェラ姫の婚姻式、お披露目の宴で顔を合わせていたのだ。少し話を交わしだけだがアンジェラ姫とは違う、頭の切れる策略家だと感じていたのだ。嫌な予感がする、恐らく、アネット姫も皇后の座を狙うために帝国にやってくる筈だ。そしてライアン王子は間違いなくリーラ狙いだ。エリザベスとしては最近良い雰囲気のクリストファーとリーラの邪魔をさせたくなかった。今まで女性に興味がなかった兄がリーラのためにドレスを作る明らかに好ましく思っているはずなのだ。
「リーラに私のことも報告したかったのに」
エリザベスはぷくっと膨れると横に腰掛けていた青年はクスッと笑う。
「まだ時間はあります。彼女が戻ったら私達のことを話しましょう」
エリザベスの髪を一房掴むと愛おしそうに口付けをするとエリザベスは頬を赤らめながらそうねと青年に微笑む。
「ウィターニアに嫁いでしまうとリーラと会えないなってしまうから今のうちに沢山話をしておきたかったの」
エリザベスが微笑む先には、ベンジャミン・ウィターニアがいた。ウィターニアの事件後、領地を回るエリザベスの護衛としてベンジャミンは寄り添い、共に心を通わす間柄になったのだ。二人の関係を叔父のショーンが逐一母であるシャーロットに報告しており、二人の気持ちが一緒であれば婚約をと後押ししたのだ。
始めは嫌な顔を見せていたクリストファーだが、政略結婚ではなく二人の想いが一緒ならばと渋々承諾し、貴族の集まる夏の宴での発表となったのだ。
1年後に婚姻式を行い、エリザベスは次期ウィンターニア侯爵夫人として、そして結婚後もカーヤ医療院の院長として二足の草鞋を履く予定なのだ。
「私には残された時間が少ししかないの。リーラ早く帰ってきて…」
◇◇◇
外交大臣室に侍従がアンデルクの書状を持ちユーリアム大臣の元へ訪れた。
「ユーリアム様、アンデルク側からの書状でございます」
「内容はどうだった」
「いえ、特には。陛下への婚約打診もございませんでした」
「そうか、アネット姫には既に内定者がいるやもしれないな」
「夏の宴には両殿下と騎士団長様とアネット様のお抱えのお嬢様が参加されるようです。こちらが書状でございます」
「いや、よい。婚約の打診がないなら、そのまま、陛下に報告して参れ」
「かしこまりました、では」
アンジェラ王女に続いて、娘のアネット王女を押してくるかと思われたがアンデルク王も諦めたようだとユーリアムは安心する。最近では陛下とリーラ王女の関係も良好だと報告が上がっている。このままいけば上手く縁組ができ、リーラ王女の力は我が一族のものだ、ユーリアムはそう考えると安心して微笑んだ。
ウィンターニアの騒動以降、拡散された水の化け物を鎮める為に領内を巡回し、帝都との医療格差を驚かされたのだ。少しでも改善したいとウィンターニアへ残留を決め、領民の為に活動していたが初夏に行われるデビュタントの準備とある報告の為に帝都に戻ったのだ。
そして、今、エリザベスは最も会いたい人物に会えずに困っていたのだ。
「何ですって?リーラが休暇でアンデルクへ?デビュタントも出席しないですって?」
リーラがデビュタントに出席するとばかり思い、夏の宴に近づいてから話せば良いと思っていたエリザベスは愕然とする。今年の夏の宴にはアンデルク王族も招待されている、リーラに想いを寄せているライアンと共に双子の妹のアネット姫も来る予定なのだ。
「なんだか嫌な予感するわ」
エリザベスは何故かとてつもない不安に駆られていた。アネット姫とはナターシャ国に嫁いだアンジェラ姫の婚姻式、お披露目の宴で顔を合わせていたのだ。少し話を交わしだけだがアンジェラ姫とは違う、頭の切れる策略家だと感じていたのだ。嫌な予感がする、恐らく、アネット姫も皇后の座を狙うために帝国にやってくる筈だ。そしてライアン王子は間違いなくリーラ狙いだ。エリザベスとしては最近良い雰囲気のクリストファーとリーラの邪魔をさせたくなかった。今まで女性に興味がなかった兄がリーラのためにドレスを作る明らかに好ましく思っているはずなのだ。
「リーラに私のことも報告したかったのに」
エリザベスはぷくっと膨れると横に腰掛けていた青年はクスッと笑う。
「まだ時間はあります。彼女が戻ったら私達のことを話しましょう」
エリザベスの髪を一房掴むと愛おしそうに口付けをするとエリザベスは頬を赤らめながらそうねと青年に微笑む。
「ウィターニアに嫁いでしまうとリーラと会えないなってしまうから今のうちに沢山話をしておきたかったの」
エリザベスが微笑む先には、ベンジャミン・ウィターニアがいた。ウィターニアの事件後、領地を回るエリザベスの護衛としてベンジャミンは寄り添い、共に心を通わす間柄になったのだ。二人の関係を叔父のショーンが逐一母であるシャーロットに報告しており、二人の気持ちが一緒であれば婚約をと後押ししたのだ。
始めは嫌な顔を見せていたクリストファーだが、政略結婚ではなく二人の想いが一緒ならばと渋々承諾し、貴族の集まる夏の宴での発表となったのだ。
1年後に婚姻式を行い、エリザベスは次期ウィンターニア侯爵夫人として、そして結婚後もカーヤ医療院の院長として二足の草鞋を履く予定なのだ。
「私には残された時間が少ししかないの。リーラ早く帰ってきて…」
◇◇◇
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「いえ、特には。陛下への婚約打診もございませんでした」
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「いや、よい。婚約の打診がないなら、そのまま、陛下に報告して参れ」
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