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第9章 リーラの貴族学院デビュー
第14話 知らされる真実
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帝国に向かう船内の一室でクリストファー達はサムを呼びゾーンでの話を聞き取っていた。
「リヴァリオン国から歳の若い子達が召集され、僕より年上の子達はリヴァリオンで兵士や城の小間使いとして働き、僕と同じ10歳位の子達はみな、ゾーンに送られました。
僕達はゾーンに着くとアクアリディア神殿に案内され、ある部屋で待つように言われました。
しばらく待つと白い外套を被った男の子が指を差し、「これとこれと…」と言いながら僕達を選別しました。2人の友人が白い外套被った男の子に連れて行かれ、残った子達は奴隷として働くように言われました。
僕はザガルケ将軍という人の屋敷の奴隷となり、カーヤ様と言うザガルケ将軍のお妾様に仕えました。一か月前でしょうか、副将軍がクーデターを起こし、ザガルケ将軍の屋敷にたくさんの兵士が来たのです。カーヤ様は「今のうちに逃げなさい」とにお金を持たせ、逃してくださいました。途中、偶然に逃走していた息子さんのユーリス坊ちゃんに助けてもらいなんとかベルク国までやって来たのです。あ、兄は元気ですか?」
サムは兄の安否をすぐに聞きたかったのか今までの経緯を一気に話すとビルは言いにくそうに口を開く。
「君の兄さんは…死んだ」
「えっ…嘘…」
「君の兄さんはノーザンランドにいる王女を連れてきたら君を救ってやるとリヴァリオン国の王妃に脅されたんだ。君は魅惑の香を知っているか?」
「はい、知っています。友人達は嗅がされておかしくなっていました」
「君の兄さんも魅惑の香の影響を受けていたんだ。帝国でも王女を誘拐するために友人になった騎士を刺している」
「えっ?!」
リーラはこの後は私が話しますとビルに話すとサムと向かいあった。
「サム、その王女が私なんだ。私の真名はリーラ・リヴァリオン・ラクラインなんだ」
「えっ?!王女様だったですか…、失礼しました!」
「彼は私を連れ去ろうとし、私と戦闘になったんだ。彼は最後に正気に戻り、サムを助けてくれと言いながら私の剣に向かってきて自害したんだ」
「えっ?!うそだ…そんな…兄さん…」
「すまない、ルーカスを救うことが出来ず、本当にすまない」
「………すみません…少し一人になってもいいでしょうか…」
サムは真実を受け入れることができないのか呆然と床だけを眺めていた。
リーラは部屋を出ると甲板に向かい、青い海を見つめる。瞳からは涙が次々に溢れていた。サムから民が置かれている状況を改めて聞かされ、自分の無力さを感じていた。
本当に国を取り戻せるんだろか…
私に出来るのだろうか…
ウィンターニアの戦いから自身の身体の異変を感じていたのだ。今まで使っていた光の力が使えなくなっていたからだ。この身体の状態ではゾーンに勝てないという焦りも感じていた。
「うっ…うっ…どうしたらいいか、わからない…」
泣いているところを見られてはいけないと両手で顔を覆うが涙は止まることなく溢れている。
「どうしたらいいの…うっ、うっ…」
「リーラ、大丈夫か」
と優しく包み込むようにクリストファーはリーラを抱き締める。リーラは泣き止むことが出来ず、首を振る。
「わ、わたしがあの国に行ってもきっと民は救われないし…」
「そうだな…、民を解放しないだろう」
「でも、今の私じゃ戦えたい…」
「まだ、時間はある。それまで力を取り戻せばいい…精霊王なら治せるといってただろう。焦るな」
クリストファーはリーラの背中を優しく撫でる。
「うっ、わかってるんですが…うっ…」
「ナターシャがゾーンに戦を仕掛ける」
「…えっ…」
「ノーザンランドも参戦するつもりだ」
「本当ですか…」
「その際にはおまえを隊長に推薦するつもりだ。そして国を取り戻せ。ナターシャ王の婚儀が済み、落ち着いたら挙兵すると聞いている。1年か2年以内だろう。参戦に向けて、すでに我が国を含め賛同する国は準備を進めている」
「隊長……国を取り戻す…」
「きっと勝てる、そして取り戻せ」
「はっ、はい!必ず勝ちます」
クリストファーはリーラの頬に流れていた涙を手で拭ってやると優しく笑いかけ、そしてもう一度、リーラを包みこむように抱き締めた。
◇◇◇
「あれ?副隊長は?」
ダンがウロウロとリーラを探していると、何人かの仲間が隠れて何かを見ていた。
「おい、ルディ、何してるんだ」
と声をかけると皆がシーっと静かにしろと言わんばかりに睨みつける。
「わかったよ、もう、港に着くぞ…」
とチラッと何を見ているのかと確かめると、リーラとクリストファーが抱き合っていた。
素早く口を押さえ、嘘だろっとルディと共に身を隠す。
『リーラしゃま、ラブラブでしゅね』
オリーもルディの周りを嬉しいに飛んでいる。
「いや、でもね、陛下だよ…」
とルディもこの状況を飲み込めないでいた。
「あとで聞こうぜ」
ダンの一言に
「聞いちゃダメですよ!恋を邪魔する奴はなんとかと言うじゃないですか!」
他の仲間達もうん、うんと邪魔してはいけないと頷く。
しかし帝都までの道中、やっぱり気になる仲間たちからの何かしらの視線を痛いほど感じるリーラだった。
「リヴァリオン国から歳の若い子達が召集され、僕より年上の子達はリヴァリオンで兵士や城の小間使いとして働き、僕と同じ10歳位の子達はみな、ゾーンに送られました。
僕達はゾーンに着くとアクアリディア神殿に案内され、ある部屋で待つように言われました。
しばらく待つと白い外套を被った男の子が指を差し、「これとこれと…」と言いながら僕達を選別しました。2人の友人が白い外套被った男の子に連れて行かれ、残った子達は奴隷として働くように言われました。
僕はザガルケ将軍という人の屋敷の奴隷となり、カーヤ様と言うザガルケ将軍のお妾様に仕えました。一か月前でしょうか、副将軍がクーデターを起こし、ザガルケ将軍の屋敷にたくさんの兵士が来たのです。カーヤ様は「今のうちに逃げなさい」とにお金を持たせ、逃してくださいました。途中、偶然に逃走していた息子さんのユーリス坊ちゃんに助けてもらいなんとかベルク国までやって来たのです。あ、兄は元気ですか?」
サムは兄の安否をすぐに聞きたかったのか今までの経緯を一気に話すとビルは言いにくそうに口を開く。
「君の兄さんは…死んだ」
「えっ…嘘…」
「君の兄さんはノーザンランドにいる王女を連れてきたら君を救ってやるとリヴァリオン国の王妃に脅されたんだ。君は魅惑の香を知っているか?」
「はい、知っています。友人達は嗅がされておかしくなっていました」
「君の兄さんも魅惑の香の影響を受けていたんだ。帝国でも王女を誘拐するために友人になった騎士を刺している」
「えっ?!」
リーラはこの後は私が話しますとビルに話すとサムと向かいあった。
「サム、その王女が私なんだ。私の真名はリーラ・リヴァリオン・ラクラインなんだ」
「えっ?!王女様だったですか…、失礼しました!」
「彼は私を連れ去ろうとし、私と戦闘になったんだ。彼は最後に正気に戻り、サムを助けてくれと言いながら私の剣に向かってきて自害したんだ」
「えっ?!うそだ…そんな…兄さん…」
「すまない、ルーカスを救うことが出来ず、本当にすまない」
「………すみません…少し一人になってもいいでしょうか…」
サムは真実を受け入れることができないのか呆然と床だけを眺めていた。
リーラは部屋を出ると甲板に向かい、青い海を見つめる。瞳からは涙が次々に溢れていた。サムから民が置かれている状況を改めて聞かされ、自分の無力さを感じていた。
本当に国を取り戻せるんだろか…
私に出来るのだろうか…
ウィンターニアの戦いから自身の身体の異変を感じていたのだ。今まで使っていた光の力が使えなくなっていたからだ。この身体の状態ではゾーンに勝てないという焦りも感じていた。
「うっ…うっ…どうしたらいいか、わからない…」
泣いているところを見られてはいけないと両手で顔を覆うが涙は止まることなく溢れている。
「どうしたらいいの…うっ、うっ…」
「リーラ、大丈夫か」
と優しく包み込むようにクリストファーはリーラを抱き締める。リーラは泣き止むことが出来ず、首を振る。
「わ、わたしがあの国に行ってもきっと民は救われないし…」
「そうだな…、民を解放しないだろう」
「でも、今の私じゃ戦えたい…」
「まだ、時間はある。それまで力を取り戻せばいい…精霊王なら治せるといってただろう。焦るな」
クリストファーはリーラの背中を優しく撫でる。
「うっ、わかってるんですが…うっ…」
「ナターシャがゾーンに戦を仕掛ける」
「…えっ…」
「ノーザンランドも参戦するつもりだ」
「本当ですか…」
「その際にはおまえを隊長に推薦するつもりだ。そして国を取り戻せ。ナターシャ王の婚儀が済み、落ち着いたら挙兵すると聞いている。1年か2年以内だろう。参戦に向けて、すでに我が国を含め賛同する国は準備を進めている」
「隊長……国を取り戻す…」
「きっと勝てる、そして取り戻せ」
「はっ、はい!必ず勝ちます」
クリストファーはリーラの頬に流れていた涙を手で拭ってやると優しく笑いかけ、そしてもう一度、リーラを包みこむように抱き締めた。
◇◇◇
「あれ?副隊長は?」
ダンがウロウロとリーラを探していると、何人かの仲間が隠れて何かを見ていた。
「おい、ルディ、何してるんだ」
と声をかけると皆がシーっと静かにしろと言わんばかりに睨みつける。
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とチラッと何を見ているのかと確かめると、リーラとクリストファーが抱き合っていた。
素早く口を押さえ、嘘だろっとルディと共に身を隠す。
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「いや、でもね、陛下だよ…」
とルディもこの状況を飲み込めないでいた。
「あとで聞こうぜ」
ダンの一言に
「聞いちゃダメですよ!恋を邪魔する奴はなんとかと言うじゃないですか!」
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しかし帝都までの道中、やっぱり気になる仲間たちからの何かしらの視線を痛いほど感じるリーラだった。
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