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第8章 孤立した皇太后の故郷 ウィターニア編
第16話 亀裂の入った魂の器
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「ほら、口を開け」
とクリストファーにみずみずしい葡萄を口に入れられるリーラ。
ここは皇宮にある貴賓室だ。
「美味しい~!はっ…陛下、申し訳ないで自分でします」
とリーラは顔を赤くしながらクリストファーの持つ皿を取ろうとすると皿を遠ざけられ る。
「気にするな」
「うっ…、だって…」
「わざわざナターシャから取り寄せたんだ。果物なら食べれるだろう」
ともう一粒、口に近づけられ仕方なしにあーんと口を開ける。甘い葡萄を次から次へと口に入れられる。
「陛下~お腹いっぱいで食べれません…」
そう言うとクリストファーはクッと笑うとリーラの額に手を置き熱を確認すると安堵した表情になる。
「熱は完全に下がったな、調子は?」
「……。大丈夫なんですが、以前より力が抜けていく感覚がするんです。気のせいかな…」
「そうか…」
皇宮にある貴賓室でリーラは療養中だ。リーラを横に寝かすとリーラはぼんやりと豪華な紅色の天幕を見ながらクリストファーに尋ねた。
「陛下、我が隊はまだウィターニアですか?」
「そうだな。大方落ち着いたが、医療面で手が足りないようだ」
「エリザベス殿下は?」
「ベスもまだウィターニアだ。しばらくあちらに残りウィターニア全体を回るそうだ」
「そうですか…、みんな働いているのに私だけベッドの上なんて…」
リーラはしょんぼりと元気のない表情になる。
「気にするな、おまえはよく働いた。今は休む時だ」
「あのぅ…家に帰っていいですか?この部屋、綺麗すぎて落ちつかないです」
「ダリル殿も戻っていないのに駄目だ。そうだ、これから皇宮に住め。よし、これは命令だ。わかったな」
「えーッ、私の部屋は小さいからなんでも手を伸ばしたら届くから便利なんです、だから、家に帰り…陛下ッ!」
クリストファーはまた来ると立ち上がるとリーラの抗議も聞くことなく部屋を出るとふぅと息をつく。
「傍に置かないと気になって仕事にならない」
クリストファーはリーラが倒れた時を回想した。ウィターニアの混乱は水の精霊が起こし、水の精霊を浄化させるには火の精霊の力が有効だとぺぺから聞かされ、その加護がある剣を持ってこいと言われたのだ。誰かに託せば良かったが火の剣は自分の所有物であり誰かに渡すなど有り得ないと自らウィターニアに出向く事を決めた。本当は火の剣を使い未知なる敵と闘える好奇心の方が勝っていたのだ。躍る気持ちを抑えれず馬を走らせ街に入るとなんとも言えない異臭が漂い、視界まで悪くする霧が発生し領都は不気味な雰囲気に包まれていた。街を走り抜け様子を横目で見ると家や店は扉をしっかりと閉めていたが所々に倒れている民がいたのだ。
「陛下!化け物が城に向かっています!」
途中で合流したウィターニアの騎士に報告を受け城に向かうと人の形をした水の塊が城に向かって歩いていた。
「なんだあれは…」
リーラ達はあのような化け物と戦っていたのかと唖然となる。
「皇女様と6番隊副隊長が化け物を城前の広場に誘導し、一気に燃やす作戦を遂行中です」
騎士団の報告を聞き、城の高台を見上げるとリーラとエリザベスが高台から光りを出し化け物を誘き寄せている姿が見えた。
「2人は何をやっている!!!」
嫌な予感した。全速力で城の階段を駆け上がり2人に近づくと突然リーラが血を吐き出して崩れるように倒れた。
「リーラ!!」
無茶ばかりする彼女のことだ、力を使い過ぎたと思った。2人の前に立ち、化け物を睨みつける。
おまえは俺が殺る
火の剣は気持ちに応えるかのように炎を纏った。
「遅いピヨ」
「申し訳ありません」
「オリー!化け物の頭に酒をかけるピヨ!」
「クリストファー、酒をかける瞬間を狙い炎の剣で化け物の頭から真っ二つに斬れピヨ!おまえを風で飛ばすピヨ!行けピヨ!!」
剣を振り上げ、高台から飛ぶと風が身体をさらに化け物の頭へと導いてくれた。
「タァーー!」
バァッ!
剣が酒に触れた瞬間に酒に火がバッとつき、炎の剣で化け物の身体を真っ二つに斬り捨てた。炎は化け物の身体を燃やしていき蒸発していく。
2人の元にもどるとエリザベスが涙を流しリーラの名前を何度も叫んでいた。
「リーラ!!!」
「力を使い過ぎ、魂の器にさらにヒビが入ったピヨ。死んではいないから安心しろピヨ」
「魂の器??」
「会った時からかなりヒビが入ってたピヨ。自然と光の力もヒビから漏れていたからすぐわかったピヨ」
「リーラは大丈夫なのですか」
「うーん、こればかりは精霊王様に聞かないとわからないピヨ。あまり良くはないピヨ…血を吐くぐらいピヨ、光の力が使えてない証拠ピヨ」
その話を聞きダリルは動揺して顔を真っ青にさせ「姫が…姫が…」と呟いているとぺぺが翼でバシバシと心配するなと叩いている。
「冬は難しいから夏になったら精霊王様のとこに連れていくピヨ、それまで安静にさせるピヨ」
ウィターニア城で休ませ翌日意識を戻したが医療面で混乱しているウィターニアでは治療は不可能と判断し、帝都に連れ戻す。しかし、無理をさせたのか高熱を出し始め、ようやく数日前から熱が下がり起き上がれるようになったのだ。アマーノにも診せたが表立って悪い箇所は見当たらず、魂の器の話をするとヒビなど治せるか野次を飛ばされた。
熱を出し苦しむリーラを見ると、胸がなぜか苦しくなり彼女を早く治してやりたいと思うようになった。苦しむ姿より彼女は笑っている姿が一番似合う。熱が下がり、家に戻りたいと言われたがまた、何が起こるかわからない状態で目を離すことなど出来なかった。
そうだ…
私は彼女を手離したくない…
己の感情の変化に少しずつ気付き始めたクリストファーだった。
とクリストファーにみずみずしい葡萄を口に入れられるリーラ。
ここは皇宮にある貴賓室だ。
「美味しい~!はっ…陛下、申し訳ないで自分でします」
とリーラは顔を赤くしながらクリストファーの持つ皿を取ろうとすると皿を遠ざけられ る。
「気にするな」
「うっ…、だって…」
「わざわざナターシャから取り寄せたんだ。果物なら食べれるだろう」
ともう一粒、口に近づけられ仕方なしにあーんと口を開ける。甘い葡萄を次から次へと口に入れられる。
「陛下~お腹いっぱいで食べれません…」
そう言うとクリストファーはクッと笑うとリーラの額に手を置き熱を確認すると安堵した表情になる。
「熱は完全に下がったな、調子は?」
「……。大丈夫なんですが、以前より力が抜けていく感覚がするんです。気のせいかな…」
「そうか…」
皇宮にある貴賓室でリーラは療養中だ。リーラを横に寝かすとリーラはぼんやりと豪華な紅色の天幕を見ながらクリストファーに尋ねた。
「陛下、我が隊はまだウィターニアですか?」
「そうだな。大方落ち着いたが、医療面で手が足りないようだ」
「エリザベス殿下は?」
「ベスもまだウィターニアだ。しばらくあちらに残りウィターニア全体を回るそうだ」
「そうですか…、みんな働いているのに私だけベッドの上なんて…」
リーラはしょんぼりと元気のない表情になる。
「気にするな、おまえはよく働いた。今は休む時だ」
「あのぅ…家に帰っていいですか?この部屋、綺麗すぎて落ちつかないです」
「ダリル殿も戻っていないのに駄目だ。そうだ、これから皇宮に住め。よし、これは命令だ。わかったな」
「えーッ、私の部屋は小さいからなんでも手を伸ばしたら届くから便利なんです、だから、家に帰り…陛下ッ!」
クリストファーはまた来ると立ち上がるとリーラの抗議も聞くことなく部屋を出るとふぅと息をつく。
「傍に置かないと気になって仕事にならない」
クリストファーはリーラが倒れた時を回想した。ウィターニアの混乱は水の精霊が起こし、水の精霊を浄化させるには火の精霊の力が有効だとぺぺから聞かされ、その加護がある剣を持ってこいと言われたのだ。誰かに託せば良かったが火の剣は自分の所有物であり誰かに渡すなど有り得ないと自らウィターニアに出向く事を決めた。本当は火の剣を使い未知なる敵と闘える好奇心の方が勝っていたのだ。躍る気持ちを抑えれず馬を走らせ街に入るとなんとも言えない異臭が漂い、視界まで悪くする霧が発生し領都は不気味な雰囲気に包まれていた。街を走り抜け様子を横目で見ると家や店は扉をしっかりと閉めていたが所々に倒れている民がいたのだ。
「陛下!化け物が城に向かっています!」
途中で合流したウィターニアの騎士に報告を受け城に向かうと人の形をした水の塊が城に向かって歩いていた。
「なんだあれは…」
リーラ達はあのような化け物と戦っていたのかと唖然となる。
「皇女様と6番隊副隊長が化け物を城前の広場に誘導し、一気に燃やす作戦を遂行中です」
騎士団の報告を聞き、城の高台を見上げるとリーラとエリザベスが高台から光りを出し化け物を誘き寄せている姿が見えた。
「2人は何をやっている!!!」
嫌な予感した。全速力で城の階段を駆け上がり2人に近づくと突然リーラが血を吐き出して崩れるように倒れた。
「リーラ!!」
無茶ばかりする彼女のことだ、力を使い過ぎたと思った。2人の前に立ち、化け物を睨みつける。
おまえは俺が殺る
火の剣は気持ちに応えるかのように炎を纏った。
「遅いピヨ」
「申し訳ありません」
「オリー!化け物の頭に酒をかけるピヨ!」
「クリストファー、酒をかける瞬間を狙い炎の剣で化け物の頭から真っ二つに斬れピヨ!おまえを風で飛ばすピヨ!行けピヨ!!」
剣を振り上げ、高台から飛ぶと風が身体をさらに化け物の頭へと導いてくれた。
「タァーー!」
バァッ!
剣が酒に触れた瞬間に酒に火がバッとつき、炎の剣で化け物の身体を真っ二つに斬り捨てた。炎は化け物の身体を燃やしていき蒸発していく。
2人の元にもどるとエリザベスが涙を流しリーラの名前を何度も叫んでいた。
「リーラ!!!」
「力を使い過ぎ、魂の器にさらにヒビが入ったピヨ。死んではいないから安心しろピヨ」
「魂の器??」
「会った時からかなりヒビが入ってたピヨ。自然と光の力もヒビから漏れていたからすぐわかったピヨ」
「リーラは大丈夫なのですか」
「うーん、こればかりは精霊王様に聞かないとわからないピヨ。あまり良くはないピヨ…血を吐くぐらいピヨ、光の力が使えてない証拠ピヨ」
その話を聞きダリルは動揺して顔を真っ青にさせ「姫が…姫が…」と呟いているとぺぺが翼でバシバシと心配するなと叩いている。
「冬は難しいから夏になったら精霊王様のとこに連れていくピヨ、それまで安静にさせるピヨ」
ウィターニア城で休ませ翌日意識を戻したが医療面で混乱しているウィターニアでは治療は不可能と判断し、帝都に連れ戻す。しかし、無理をさせたのか高熱を出し始め、ようやく数日前から熱が下がり起き上がれるようになったのだ。アマーノにも診せたが表立って悪い箇所は見当たらず、魂の器の話をするとヒビなど治せるか野次を飛ばされた。
熱を出し苦しむリーラを見ると、胸がなぜか苦しくなり彼女を早く治してやりたいと思うようになった。苦しむ姿より彼女は笑っている姿が一番似合う。熱が下がり、家に戻りたいと言われたがまた、何が起こるかわからない状態で目を離すことなど出来なかった。
そうだ…
私は彼女を手離したくない…
己の感情の変化に少しずつ気付き始めたクリストファーだった。
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