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第6章 亡国の王女の子達

第13話 ザイデリカの戦いー城内戦闘編ー

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ザイデリカ城塞内は城壁の爆発音を聞き、逃げ惑う人だかりで混乱していた。

キャサリンは鞘から剣を抜き、城に向かって剣を指し示す。

「城内作戦を実行する!!ザイデリカとパスカルを優先に捕らえよ!城内抵抗する者は斬れ!ザイデリカの騎士であろうと斬り捨てろ!左翼はコールディア、右翼は第4番隊、進め!!!」

キャサリンの叫びに騎士隊も吶喊とっかんする。

 左翼を進むネイサン率いるコールディア隊は部屋の扉を開けザイデリカとパスカルの潜伏場所を確認する。

「隠し部屋も注意して探せ!」

ネイサンは小間使いの男を襟ぐりを引っ張り捕まえる。
「そこの男待ちやがれ!パスカルはどこだ!!」

「わ、わかりません。身なりの綺麗な方々は今、厨房の裏口から逃げる姿は見ました。」
 
「くそっ!!!二手に分かれぞ。副団長はこのまま捜索を続けろ!おまえ達は俺について来い!」
ネイサン達は厨房を駆け抜ける。

「うわぁー!騎士だー!逃げろ!」 

「使用人であろうと邪魔すると斬るぞ!退けっ!!」

裏口をでると、老人を引き連れた貴族らしき人だかりを見つける。

「全く、こんなに早く城が落ちるとは、想定外だ!!」

「ザイデリカ侯爵達の巻き添えなんて馬鹿らしい!父上、ゾーンに逃げるましょう!」

「早く裏道へ案内してちょうだい。」
パスカル一族は騒ぎながら裏道へ逃げこもうとしていた。

「逃すか!!パスカル一族を斬れ!」
ネイサンの叫びを聞いた護衛達がパスカル一族を守ろうと前に立つ。

「お前達、ってしまえ!」
パスカル伯爵らしき老人が護衛に命じる。

カン!
カキーン!
コールディア騎士隊は護衛騎士達を斬り捨てパスカル一族に向かう。

パスカル伯爵の前に立ったネイサンは伯爵に剣を向ける。
「我が名はネイサン・ローレンヌ。一族の恨み果たさせてもらう」

「ロ、ローレンヌ?!ギャァーー!!たすけっっ」
グサッ!
「てくウーーゥ……」
ネイサンはパスカル伯爵の胸に剣を一刺する。

「地獄に落ちろー!!」
胸の剣を抜き取り思い切り剣を振り上げパスカル伯爵の首を落とす。
ガキッ。

「父上!!このー!!」
パスカル伯爵の息子らしき者が剣を抜き向かってくる。
バサッ!
コールディアの騎士がネイサンに向かう前に斬りつける。

「アーーッッ」

「己の至福の為に民を苦しめた罰だ!!受け止めろ!!」
グサッ!ネイサンが止めを刺す。

「きゃあー!お爺様ー!お父様!」

「殺される…」
腰を抜かし、ガクガクと震え泣き叫ぶパスカル一族。

「この男と女共はどうします」

「縄で結べ、すぐにコールディア収容所に連れて行け!」  

「はい!!」

「城に戻り部隊と合流する。行くぞ!!」


 キャサリン達は城内中央階段からザイデリカ捜索を始める。

「キャサリン隊長!城外問題なし。第2戦闘部隊も合流します」

ビル達が駆け着く。
「わかった。では我らと共に一緒に正面から動いてちょうだい」

「了解しました」

「行くぞ!」

 キャサリンが逃げ惑う侍女の1人の胸ぐら掴みあげる。
「ザイデリカはどこだ!」

「ひぃぃ。二階の広間に大勢の騎士に守られております。お助けを…」
壁に放りなげオースティンを合図を送る。

さらに奥に進みオースティンも逃げようとした召使いの男の首に刀を当てる。

「ザイデリカはどこだ」

「あ、あっ、二階の奥に騎士達に囲まれております…お許しを…お許しを…」

殴り気絶させて2番隊隊員に縄で縛るよう命ず。

「やはり狙い通り二階の広間で間違いないようね…」

「さぁて、どれぐらい騎士かいるのかな」

「おまえ達ここからは帝国騎士同士の戦闘になる。抵抗せずとも全て斬れ!私が許可する!!剣を構えろ!!とびらを開けろー!!」
扉が開くと広間には大勢騎士がいる。

「たぁー!!」
グサッ!
バサッ!
オレンジ色の長い髪をなびかせた騎士は飛び跳ねるように待ち構えていた同色髪の騎士を流れような動きで次から次へと斬りつける。

「「早い!!」」
バサッ!
「お前達が遅いだけよ……。ふふ」

バサッ!
グサッ!

「アーーッ……」
ドサリ。
隙のない剣捌きで滅多斬りにするオースティンはキャサリンを追う。

シャリン!
剣を振り上げ構えるビル。
「ギャァーー」
バサッ!
「さぁ、次来いよ」
バサッ!
バサッ! 
向かってくる敵騎士を無駄のない素早い動きで斬りつけていく。

 剣を振る前に斬り捨てられ倒れていく仲間の騎士を見てザイデリカの騎士達は少しずつ後退りする。 

「袖3本…ノーザンランドの3大騎士が来たー!!逃げろ!!!勝てない!!」 

「逃す訳ないだろう」
ビルは容赦なく騎士を斬り捨てる。
グサッ!
ドサリ…

剣を構え、紫髪のゾーンの用心棒らしき男達を睨むジョン。

「ご賢しいゾーン共よ。全て消し去ってやる。死ねぇ!!」
シャリーン!

右手の剣で斬りつけ左の剣で胸を一刺する。
「ウッ……ッ」
ドサッ!

「クソッ、おまえこそ死ね!!」 

「動きが遅いんだよ」
ジョンは飛び跳ね、敵の剣を左の剣で飛ばし、右の剣で頭からかち割る。
ドサリ…

「ジョンさんの二刀流、久しぶりに見ましたよ」
血の付いた剣を払いながらビルが側にきた。

「あははは、そろそろ本気ださないとね。さぁ、さっさと終わらせましょう」

「そうですね」

カキーン!
カーン!
カキーン!

剣の音、怒号、罵声、呻き声が広間に響き渡る。
ガチャーン!
ザイデリカの騎士達は逃げ場なく、窓から飛び降り自害するも者もいた。

シュッ、パシャリ!
キャサリンが剣についた血を床に払う。

「大方やったかい」
床には大量のザイデリカの騎士達が血塗れなって倒れていた。
キャサリンの背にいたオースティンが答える。

「だいたいやったんじゃないか。最後はメインだな」

「ひぃー。おまえは!おまえは!」
震える2人の騎士に守られているウェイド・ザイデリカが叫ぶ。

「ウェイド・ザイデリカ,お前の首は貰うよ」
キャサリンは剣を握りしめウェイドに一歩、一歩と近づく。

「帝国五大騎士だ…」

「む、無理だぁー」
震えながら剣を握っていた二人の騎士は勝てないと思いウェイドを残して左右に逃げる。

グサッ!

バサッ!

キャサリンとオースティンがそれぞれ騎士を斬る。

「ひぃー、なんでだよ!なんでだよ!あの時死んでおけば!!」

グサッ!
それ以上は喋らさないようにオースティンがウェイドの胸を一刺する。

「グハッ…」
ウェイドは口から血を流す。

オースティンはウェイドにしか聞こえないように話す。
「あぁ、本当だよ。騎士学校の時おまえを始末出来なかった、俺のミスだ。じゃあな、地獄に行きな」

オースティンは刺さった剣を抜き、大きく振り上げ剣でウェイドの首を斬り落とす。
バサリ!
ドサッ…
ウェイドの首が落ちる。

「逃すか!!」
腰の短剣を素早く投げ、ザイデリカ城の執事ヤードンの足に刺す。

「アーーッ…お、お許しをくださいませ、お許しくださいませ」

オースティンはヤードンの足に刺さった短剣を足でさらに踏み食い込ませる。
「ギャァーーッ!」

「おまえが許されないとわかっているだろう。おまえの罪の深さを思いしれ!」

グサッ!
寝転がっていたヤードンの胸を一刺する。
「アッ……」


「はぁ???ちょっと!!なんでよ!!オースティンがメインをやってんのよ!!」

「すまない。俺のケジメをつけたかったんだ」

「もぉ~。仕方ないわね」
最後を仕留めれず腰に手を当てキャサリンはねる。

他の騎士達が隠し扉を探していると女達が隠れているのを見つけた。

「離しなさい!無礼者!」

「隊長!ザイデリカの妻と娘を発見しました」

「縄で縛り、コールディアに送れ!」

「はい!」


「きゃあー!!お父様!」

「あなた!!あなた!!」
2人の泣き叫ぶ女と侍女達は縄で縛られて連行されていく。

「キャサリン、終わったか。うわぁ!!こりゃ、すごい有様だな。容赦ねぇな」
血に塗れた広間を見てネイサンはうなる。

「ふっ、少しの恩赦おんしゃも隊を危険にさらすなら必要ない」

「はい、すみません、キャサリン隊長。出過ぎたことを言いました。それでメインはキャサリンがやったのか?」

「それなのよ~。メインはオースティンがやったのよ」
プクッとキャサリンはふくれる。
真実を知るネイサンはオースティンに近づき握手する。

「ありがとう」

「いえ」

「??」
首を傾げるキャサリンだった。

 たくさんのザイデリカの騎士達の死骸が並ぶ血塗れの広間の窓から夕焼けの光が入ってきた。
 こうして黒獅子戦闘部隊はザイデリカ一族の制圧に1日で成功する。1日で抑えれる軍事力は他国にも知れ渡り、ノーザンランド帝国の脅威を他国に見せつけれる結果となったのだ。

ノーザンランド帝国暦319年9月
ザイデリカの戦いが幕を下ろした。


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