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第5章 リーラとアンデルクの王子

幕間 北の地で君を想う…

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「リーラ、君は今何をしているのかな?」
 
リーラから届いた手紙を読みながら窓に目やりノース山脈の方へ見るルマンド。
 父であるギルバートが財務大臣に復帰することになり領地の仕事と騎士団の副隊長の仕事を兼務する事になったのだ。このフォールド領を治める者として定められた道だ。

「雪が降り始めたな」
雪はなにかと災害を引き起こす。
 領内はフォールド家の臣下達が分割して治めている。各地区の臣下達に早めに伝令でも出しておくかと考えていると扉がノックする音がした。

「入れ」
サザリーがルマンドの執務室にやって来た。
「失礼します。メレディス嬢がご一緒に休憩にお茶でもといらっしゃています」

「お茶??ふざけるな。私は暇ではない!帰れと伝えろ!」

「はい…。わかりました」
サザリーは一瞬辛そうな表情をするが表情を隠し退室しようとする。同時にロックが執務室に入って来た。

「失礼します。副隊長。騎士総本部から伝令をお持ちしました。今回の功績一覧です」
ロックが書類を渡す。

「ありがとう」
封をされている伝令に目を通す。

「あっ?!」
リーラ・ハントンの名があった。小隊長の位を得たようだ。

「先程帝都の伝令に聞いたのですがリーラがアンデルクの王子襲撃事件に遭遇して王子を救助したそうです。帝都では4番隊のロゼッタ隊長を思わせる活躍ぶりだそうですよ。最年少功績ですね」

「そうか……」
 リーラ、君はどんどん先に進んでいくね。
 リーラが貰ったカフスボタンをそっと触る。

「私もリーラ負けていられないよ」

「そうですね。私もですよ」

 サザリーは黙って話を聞いている。

「さて、この後騎士隊長にこの伝令の報告に行くよ。あと雪が積もりそうだ。
早めに隊長と対策会議をしたい」

「はい、では先に隊長に声をかけてきます」

「あぁ、よろしく頼む。サザリー、いつまでぼさっと立っているんだ。私が戻るまでに前年度の雪の被害の資料を用意しておけ」

「かしこまりました」

 ルマンドは帝都に向けて語りかけた。
 
 リーラ、君が頑張っているんだ。
 私も頑張って君にふさわしい男にならなくてはね。功績を挙げ、君を必ず迎えに行くんだから…
 
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