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第5章 リーラとアンデルクの王子
第13話 姉妹 (ローズ目線)
しおりを挟む私の名はローズ・リッチモンド。
かつてリヴァリオン王国の王女だった私は今の夫のビル様の手を借りて、このノーザンランドへ逃げてきたのだ。ビル様の妻となり彼の子も授かり、産み落とすこともでき、愛する彼と出会えたこと神様に本当に感謝している。
出産後の療養を理由に家に閉じこもっていたがこのままではいけない。
妻として夫のために社交の場を広げなくてはいけないのだ。
今日はアンデルク王族の歓迎晩餐会。
ノーザンランド帝国に来て初めて公の場に出席する。
ローズは自分自身に言い聞かせてはぁと溜息をついた。
義母様に貴族について教授を受け、社交の場に立つ。リッチモンド家は宰相という国の最上の位を頂いている。お父様の顔に泥を塗ることはできない。
緊張をほぐすためにビル様とダンスを踊った。
「きれいだよ」
と声をかけてくれ終始愛しい者を見る眼差しを送ってくれる旦那様に恥ずかしく頬を赤らめてしまった。
「すまない、呼び出しがかかった。すぐに戻るからここにいてくれる」
騎士隊から急遽呼び出しがあったようだ。ビル様が傍にいらっしゃらないという不安を隠しながら大丈夫だと精一杯微笑む。
義母様の元へ行こうかと思っていたら懐かしい方から声がかけられた。
「あら、ローズ王女お久しぶりね」
アンデルク王国のアンジェラ王女だった。いつも自信に溢れて美しいアンジェラ王女。今日のドレスも一段と綺麗だった。しかし、昔と違い私との身分は違う。ここで私が話を続けるのはあまり良くないと判断し場を離れた。
少し落ち着きたくて広間から廊下へ進む。私と同じ歳位の若い女性達が私に向かってきた。
パシャッ。
「あらっ、ごめんあそばせ。ローズ夫人。素敵なドレスにワインがかかってしまったわ」
さっそく女性ならではの洗礼にあってしまったわ。
「くす、くす。ビル様もお側にいらっしゃらないの。もうお一人なんて~」
「もう、飽きられたんじゃなくて。ふっふっふ」
悔しさで手を握る。
どんな言葉で反撃してやろうと考えていると、
「お嬢様方、こちらでどうかされましたか?」
ふと振り返ると黒い騎士服を着た銀髪の女性騎士が声をかけてきた。私のドレスを見て状況を判断したのだろうか。
3人の令嬢達に笑いかけ、
「偶然とはいえドレスにワインがかかるのはあまり良いとはいえません。令嬢達に悪い噂が流れるかもしれません。皆様お早めにこの場を立ち去りくださいませ」
はっとした令嬢達は自分達の行為に気づき、騎士に礼を言うと慌てて立ち去った。
口は災いの元、要らぬ一言を言う前に立ち去ってくれて良かった。
「令嬢大丈夫ですか?」
ハンカチを出し優しく拭きとってくれた。
「ありがとうございます。紺色のドレスなので目立ちませんわ」
嘘を言った。このまま汚れたドレスで広間に戻る事はできない。
「良かったら、私の知り合いがドレスを持っています。さぁ、行きましょう」
手を取られた。
「でも…」
くすりと笑い大丈夫ですよと言ってくれた。
あなた、リーラなのよね。
銀髪の女性騎士は1人しかいない。
私の妹…
私より少し背の高い彼女を見上げる。
気づくと皇宮の奥の方まで来たようた。
「おばあ様~」
「あらっ、リーラどうしたの?」
「令嬢がワインをかけられてたみたいで…可哀想だからなんとかできる?」
「はい、はい。はっ……」
「………」
「じゃあ、私は警備に戻るからね。では、令嬢失礼します」
パタンと扉が閉められた。
「ローズ王女様、お久しぶりでございます」
女性は私に礼を取るためにカーテンシーを取る。
「王女でないわ。たしか、アレク小隊長の奥方かしら」
「はい。ローリーでございます。あら、まぁワインの跡が残りましたわね」
ローリーは付き人にドレスを持ってくるように指示した。
「まぁ!」
水色のシンプルなドレスだったが一面にダイヤが散らばっているドレスだった。
「こちらにお着替えください」
「でも、こんな高価な物…」
「ふっふっふ。これはダイヤではございませんよ。ダイヤに見せかけたガラスでございます。試作品なのでサイズが合うかわかりませんが…さぁ、どうぞ」
申し訳なく思いながら袖を通す。ふわりと軽くガラスが光りにあたりキラキラ光る。ウエスト部分を濃い青色のレースでリボンを作り絞ってくれた。
「サイズは大丈夫そうですわね、足元もしっかり隠れていますわ」
小柄な私には足元が隠れるちょうど良い長さになっていた。
「あの、お代を」
「ローズ様、必要ございません。我が孫を救って頂いた恩を返させてくださいませ」
「私は何もしてないわ」
「いえ、そんなことありませんわ。あの国から脱出させて頂けた…。夫も感謝していますわ」
「………」
トン、トン、扉がガチャリと開く。
「ローズ!」
「ビル様!」
「えっ?何?!また綺麗になってしまってるじゃないか?!あぁ、また他の奴等に見せたくない!」
「どうしてこちらに?」
「こちらの付き人が呼びに来てくれて」
「ローリー様、ありがとうございます」
私はローリーと付き人達に頭を下げる。
「じゃあ、行こうか?御婦人感謝する。お礼は後ほど。」
ローリーは必要ありませんと首を振った。
「ローズ様。どうかリーラを妹として接して下さいませ」
「……、リーラは私を許してくれるかしら?私を姉と認めてくれるかしら?」
「大丈夫ですわ。お二人は姉妹ですもの」
ローリーは優しく微笑んでくれた。
私は自分のことでいっぱいいっぱいで今日まで彼女と接触してこなかった。
私は怖い、どんな顔をして彼女の姉として接すればいいのだろうか。
「大丈夫だよ。あの子はね、優しい子なんだ。時間はかかるかもしれない。ゆっくり話していけばいいんだ」
ビル様は私に優しく微笑んでくれ、そうなればいいなと思い頷いた。
ローリーから貰った武器を身につけ、広間に戻り淑女の仮面を被る。ビル様のおかげもあり数多くの夫人方と交流を持つことが出来た。
この国での私の戦いは今始まったばかりだ。
もっと力をつけて、そして自信をつけて彼女にリーラに会いに行こう。
リーラ…
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