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レベルファーイブ!

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 ギルドに戻った俺たちは、もうヘトヘトだった。
 枝って束になるとあんなに重いのね。非力な自分がうらめしいよー。

「二人ともお疲れ様! よーし今日もご馳走にしちゃおうか!」
「あんたねぇ。枝運び如きでご馳走振舞ってたら赤字じゃないの」
「えへへ。そうでした。でもほら! この鍵があるのよー!」
「鍵付きのミミックなんてのもあるのよ? 知らないの?」
「えーっ、きっとお宝だよー。ね? シロンちゃん」
「いやな予感がします。それより今日は戻って休みましょう。
鑑定もしてほしいよー」
「そうにゃ! 強くなったニャトルの実力をこいつに見せびらかしてやるにゃ!」
「ふん、貴様はたかだかレベル五だろう。頭が高いぞ」
「ニャ!? いつの間にか上をいかれたニャ!?」
「あんたも五でしょ! いばるな!」
「突っ込まずにはおれないサルサさんでした。ちゃんちゃん」
「終わるな―! ……はぁ。私魔術ギルドよってくから。ちゃんと私がいる時に
鑑定しなさいよね」
「うん! それじゃ二人とも……身体を洗おうー! 随分汚れたしね。
そのまま宿屋に戻ると女将さんが困るでしょ?」
「ご主人、こいつよりは綺麗です。白ふわは健在ですよ?」
「にゃふん。私の毛並みにかなうはずないにゃ」
「ほほーう。この毛並みに勝てるとでも? いいだろう! 貴様を完膚なきまでに敗退させてやる! 
出でよ、ブラシ!」

 ぽとりと犬用ブラシが落ちる。フフフ、猫とは違うのだよ、猫とは! 

「あら、これならどっちにも使えそうね! 偉いわシロンちゃん!」
「なにーーー!? 策士、策に溺れるとはこのことか……」
「ニャーッハッハッハ! 出直してこいってなもんニャ! さぁご主人、存分にとかすがよい!」
「ダメよ、二人ともー。まずは洗わないと! 桶を借りてくるから外で待っててね!」
「あっという間に行ってしまったニャ。何という突撃娘だニャ……」
「前が見えない……違うな。前しか見ていない。そんなタイプだ。
俺たちはこのままご主人と三人きりで旅をすると死ぬ。これは何占いでもデスマーク確定だ」
「確かにそうニャ……絶望という名に相応しいニャ。希望など欠片も無いニャ……」

 立ち尽くしてご主人を見送る俺たち。この先不安だよー。
 サルサさんをどうしたら加入させられるか……俺たちが魔術を使えればいいのか? 

「おいニャトル。魔術ってどうやったら使えるんだ?」
「クックック。このニャトルはきっと、レベルが上がれば魔術が使えるニャ。今に見てろニャ」
「そうじゃなくてどうやったら魔術が使えるんだ? お前は使えてもすぐ役に立たなくなるだろ」
「ニャ!? そんな事ないニャ。もうじきご主人の鑑定でニャトルの真の実力が露になるニャ……クックック」
「お前、なんか俺の喋り方うつったなー……それでどうやって使えるの! はよっ、はよぉー!」
「才能が無いから無理そうニャ。精々進化で願ってみることニャ」
「進化はいつなんだ。五になったのに進化しないぞ?」
「知らんニャ。進化神様の声はもう聞こえない……きっと切られたニャ。怒られるニャ……」
「おーいお待たせ―! どう? 立派な桶でしょ? 行くよー。
空を舞う水泡よ、万物ありて大気から水を生成せん。ウォーターメイク」

 ご主人が持ってきた桶に水を張る。冷たそうだよー。お風呂が恋しいお風呂入りたい。
 ……ごしごしと入念に洗われる俺たち。綺麗になるのは気持ちいいのです。
 ニャトルも喜んでやがる。猫は綺麗好きだが水を嫌うんじゃないのか? 

「さささ、寒いニャ。信じられないくらい冷えるニャ」
「そりゃ猫の毛は水をはじかないからな。寒がりだし」
「ニャトルちゃんは先に布で乾かしてあげるね。シロンちゃん、自分で洗える?」
「勿論です。俺はこいつと違って優秀なので! ワンハンド! 泡ブクブク!」

 片手で器用に体を洗う俺。ふっふっふ、実に有意義な使い方だ。
 しかし使い過ぎは厳禁。燃費が悪いよー。それでも自分で洗えるようになった分、各段に進化だ! 

「それでご主人、明日は宝箱探しに行くんですか?」
「勿論! シロンちゃんの嗅覚と、ニャトルちゃんの猫目があればすぐ見つかるよ!」
「俺たちってそんな能力あったっけ?」
「無いに決まってるニャ。夢見がちな少女の妄想ニャ」
「だよなー……明日からも不安だよー」

 体を洗い、乾かしてもらった後宿屋に戻った。
 鑑定をせがんだらちゃんと鑑定してくれるみたい。
 宿屋に戻ってすぐ、草臥れた表情のサルサさんが来る。

「ふぁー、もう眠いわ。早く鑑定してさっさと休みましょ」
「ふふん、眠そうにしていられるのも今だけですよ! さぁご主人! 鑑定!」
「それじゃシロンちゃんからね。鑑定! ……ニャトルちゃんも鑑定!」

 シロン

 種族 ウルフィ 種族形態 ハンディウルフィ
 性別 雄
 年齢 一歳
 レベル 5
 耐久 20/20
 魔珠 20/20
 体力  10
 力   12
 器用  9
 速   14
種族技 ワンハンド
習得技 異界召喚、行動経験、革新進化、????、
????、????、????、????

 ニャトル

 種族 ニャコン 種族形態 ニャコン
 性別 雌
 年齢 一歳
 レベル 5
 耐久 12/12
 魔珠  32/32
 体力  6
 力   5
 器用  9
 速   22
 習得技 行動経験、猫だまし、猫まっしぐら、
????、????、????、????

「ついに明かされる俺の能力! ドン! ……あれ、結構魔珠増えた?」
「ニャコハーッハッハッハ! 私の方が断然素早いニャ!」
「速さ以外全然育ってないわねこの子。あれ? 何この技。
猫まっしぐらってどんな効果なのよ?」
「だめです。こいつは使えないので解雇しましょう。その辺のスライムの方がいい」
「ニャ!? ニャトルは素早いニャ! それにこの新必殺技、猫まっしぐらがあれば……」
「あれば……?」
「どうやって使うニャ?」
「……もしかして自動発動型なんじゃないか?」
「ふぅむ……きっとそうニャ。細かい事はいいってことニャ」
「どのみち契約解除できないしねぇ。私は水浴びだけしてさっさと寝るわ。それじゃね」
「サルサ、明日もお願いね!」
「はぁ。まだやることあるんだけどな。しょうがない、付き合ってあげるわ。ちゃんと
ギルドで仕事受けるのよ。宝箱外れだったら大赤字だし」

 この日は枝運びで疲れたからさっさと寝たのでした。
 翌朝ギルドに顔を出して、依頼表を見るご主人。変なの受けないでよー。

「これかなぁ。ゴブリン二匹の討伐……どうにかなるよねゴブリンなら」
「え? ゴブリンて刃物を振り回して襲ってくる奇怪な生物ですよね。なんとかなるんですか?」
「当然ニャ。このニャトル様がいるニャ。新必殺技、猫まっしぐらで一発に違いないニャ」
「お前それ、絶対バッドステータス系のパッシブだぞ。いいのか本当に」

 名前から想像するに、餌に飛びつくダメな技に違いない。俺には見える。ニャトルの未来が。

「ふふん。新しい技を得ていないやつが偉そうに。頭に乗るな小僧!」
「クッ。こいつ普通の喋り方に慣れてきやがった……」
「あら、ちゃんと依頼受けてるのね。ゴブリンかー。これくらい倒せないと冒険なんて無理ね」
「おはよーサルサ。そうだよね! 二人ならきっと出来るよね! これにします」
「不安だなぁ。こいつを囮に頑張って召喚して戦うぞ!」

 こうして俺たちはサルサさんを連れて、四人で昨日トレントと戦った場所にむかいつつ、ゴブリンを
探索するのだった。
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