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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百六十一話 器と共鳴せし剣

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 アクソニスが去った後も、俺は地底をずっと探索し続けていた。
 そして、ルインズシップは無事だった。
 フェルス皇国まで引き下がってくれていたのだ。
 直ぐに向かいたいが、ベルローゼ先生の方が気になlったので調べると……まだ何者かと戦っている。
 酷い傷を負っている。あの先生が押されていたのか。
 黒星を撃ちこんではいるが、相手はかなり強い。
 俺の姿の戻し方が分からないので危険だが……アトアクルークへと向かうことに決めた。
 
 封印内にいるものは誰一人として目覚めない。
 一人でいることが心細く感じた。
 この世界に来て、一人きりになったのはいつだったか。
 そう……レウスさんと会うまでのわずかな時間くらいだ。
 それまで俺は、モンスターを含めて誰かと常に一緒だった。
 前世では、何年も何年も一人だった。
 父も、母も死んだ。そして自分も、死んだ。
 周りとは関わろうとしなかった。迷惑がかかるからと。
 一人でも生きていける自信はあった。
 寂しさは感じなかった。なのに……なのに。

「なんでこんなに、寂しいんだ……」

 もし誰かに近づいて、みなを苦しめてしまうのならば……俺は誰にも近づきたくない。
 封印したこいつらが誰も目覚めなかったら、それは……俺が体内に冷凍保存しているようなものだ。
 その力を無理やり引き出し続けたらどうなる? こいつらは死んでしまうのか? 
 怖さで身震いが止まらない。
 だが、先生を放ってはおけないんだ。

 ――紫色の城から飛び出し、背中に生えた薄気味悪い翼を広げて……ぐんぐんと地面へ向けて降りていく。
 飛来する悪魔のように見えるだろう。
 先生には敵の増援と思われるかもしれない。
 それも……怖い。

「アクソニスめ。一体何をしている。こいつは手強すぎる」
「……ふう。よく言う。地底で俺に勝てるかもしれん奴がまだいたとは」

 そんな話が数百メートルは離れているのに聞こえてきた。
 これもカイオスの力か。
 
「封剣……これが、ティソーナだとでもいうのか?」

 俺がティソーナを呼び出すために封剣と唱えると、奇妙な触手が生えていた。
 刀身は青いが先端だけ血色に染まる剣が現れる。
 
「おい。ティソーナ。いつもみたいに喋ってくれよ」

 だが、ティソーナから返事は無かった。
 陽気なごじゃろ言葉で話すあいつは、もういないのか。

「剣戒……コラーダ。なぁ……」

 コラーダも同じく異形をとっており、こちらも触手のようなものが生えている。
 持ち手の器により大きく姿が変わるのか。
 つまりあいつらの人格は俺の体内にある人格が影響していたのか。
 地面に着地した俺は、コラーダを水平に構え、先生と戦っている男が先生と距離を取るのを待った。
 
「いまだ……リーサルレデク……?」

 そう呟き、コラーダを見ると……グラグラと揺れ動き、触手のようなものが地を這いだす。
 そして……次の瞬間先生と相対していた奴を触手が多い、何度も何度も突き刺していた! 
 こんな技じゃない。俺の知っているリーサルレデクは、相手に苦しみを与えるような技じゃないんだ。
 止めろ。止まれ! 戻れ! 「戻れぇーーーー!」
 どうにかコラーダを鎮めて戻したころには、相手は倒れていた。
 そして……「ああ、そんな……先生!」
 隙を伺っていたやつがいた他のやつがいたのだろう。
 先生は別の何かに攻撃され、それをもろに全身で受けていた。
 なぜ……あっちの男の状況に目を奪われていた間に、一体何が起こった! 

「ぐっ……お前は? ……なぜ、戦いの邪魔、を」
「先生。俺です。ルイン・ラインバウトです。ああ、だが近づけない。どうして、誰が……」

 そう考え、見えすぎるふさがれた目で周囲を探る。
 ……いた。フェルドラーヴァ。こいつが使ったのは間違いない。赤星だ。
 俺から奪った能力は、こいつに委ねられたのか。
 なんてことだ。俺の力が奪われたばかりに。先生に授かった力が、先生を貫いたっていうのか。

「ルイ、ン。待っていた」
「先生。俺だと信じてくれるんですか」
「……俺に、弟子は、お前しか……ゲホッ」

 ……明らかに致命傷だ。
 俺のせいで。先生が死ぬのか? 
 近づいたらラーンの捕縛網が。
 どうしたら、どうすればいい? 
 先生の治療。誰か、頼む。

「っ! はっ!」

 ようやく力が分かってきた。定めた対象がいれば、そいつの声まで拾うらしい。 
 見えすぎる目のお陰で、フェルドラーヴァの遠隔攻撃が手に取るように分かった。
 随分と遠くから攻撃してくる。
 倒れている先生を狙った、赤星の一撃。
 俺よりよほど使いこなしている。
 だが、今の俺にとってすれば攻撃を打ち消すことなど容易い。
 そのまま降り注ぐ赤星の攻撃を全て弾いていく。
 ラーヴァに攻撃を……だが、先生が。

「そのまま、聞け。ルイン。我が、弟子よ」
「先生! どうにか治療しますから。俺がなんとかしますから。だから喋らないでください!」

 俺は先生をかばいながら、やつの攻撃を全て弾くことしか出来ないのか? 

「……俺は、この地を見れただけで、満足だ。ベオルブイーターが、邪魔で、ここまで深く、入れなかった。お前が、落としてくれた、んだな。感謝、する。アトア、クルークの泉に、ある秘宝が眠る、という。お前にこそ、相応しい。だから……」
「いやだ。止めてくれ。先生、やっと会えたんだ。俺、強くなりました。信じられないほど。でも、その代償が大きすぎた。だから力のコントロール、また教えて下さいよ。頼みますよ。俺を、置いていかないで。いやだ、先生……先生」

 俺は先生に近づき過ぎた。
 そしてラーンの捕縛網は、先生を包み……先生は俺に封印されてしまった。
 俺の意識は怒りと憎しみであふれ出した。

「フェルドラーヴァ……殺してやる」
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