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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百五十八話 ベオルブイーター戦その八 越えるべき己の力

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 事態が急変した戦場において、過度な戦闘継続は危険だ。
 だが……ここで食い下がるほどやわな戦闘を繰り返してきたわけではない。
 再びサーシュに乗ると、ハルファスとマルファスを二例を言うため二匹を封印から出した。

「ハルファス、マルファス。助かった」
「危うく死ぬところだった! ベオルブイーターの上のあれ、やっぱフェネクスのだ。攻撃を見て理解した」
「やんややんや。それじゃフェネクスは俺たちを裏切ったってのか? ベリアルが本当のこと言ってるってのか?」
「ベリアルは嘘つきだ! でもフェネクスは正直者だ。だから理解できない! どうなってるんだ!」
「……なぁハルファスにマルファス。お前らが言う、嘘や正直ってのは何を基準に話してるんだ?」

 二匹は顔を見合わせて考える素振りをする。
 ……って考えないと分からないのに正しいとか嘘とか判断してたのか。

「フェネクスはいつも分かりやすいように説明してくれた!」
「ベリアルは適当だ! 面倒くさそうにして話してばかりだ!」
「……おい。フェネクスってやつはお前らを利用するために説明していたんだろ。ベリアルは説明とかする性格じゃないからそうしてただけだろう? それならお前らを利用してたのはどっちだ」
「ベリアルは暴力的だ! フェネクスは優しいぞ」
「そーだそーだ! ベリアルは直ぐ暴力を振るう! フェネクスはそんなことしない!」
「あいつは口下手だ。俺と同じでな。行動で示してこなかったか? フェネクスという奴は口で説明するばかりで、行動で何かを示したか? 暴力的なのは良いことではない。だが、時にそうする必要があることも知っている」

 それが生物の根幹だからだ。
 縄張りに侵入しようとするものを追い払うためには、時として戦わねばならない。
 それが暴力だ。間違った行為と思うのは、対話が可能な相手のみに許される特別な状態にすぎない。

 そして、俺の話を聞き、迷っているこいつらを見て理解できることがある。
 こいつらは純粋過ぎる。そこを利用されたか……なんなら自分たちがベオルブ遺跡に閉じ込められたことすら利用された結果と思ぅてないかもしれない。
 だとすると、相当に狡猾な相手だろう。
 もう一人……確かシャックスという名前も耳にした。
 あの紫の城の中……そこにその二人がいると俺はにらんでいる。

「お前たち。俺はお前たちの主となった。俺の言葉や行動を見てどう思う? そのフェネクスというやつより信用ならないか?」
「信用はしてない。だがお前は嘘つきじゃない。今のところ一度も嘘はついていない」
「セーレが信用してるのは分かる。ベリアルにも信用されてる。なんでだ? なんで信用されてるんだ? あのベリアルに」
「それは話せば長くなる。だが……そうだな。お前らが俺の仲間になったなら、口先ではなく身をもって証明してやろう。地底での戦いが終わった後、お前らが安心して暮らせる場所を用意すると」
「本当か? いやお前は嘘をつかない。本当だ」
「やんややんや。それなら協力してやる。ただし、俺たちはベリアルを信用しない」
「単純に嫌いなんだろ。そのうち理解できるさ。まぁどうしてもいやならそれで構わないさ。あいつもしつこくするようなやつじゃあない。これからルインズシップに戻る。ベルベディシアに指示を出したら……ベオルブイーターを完全に破壊させる。その後、紫の城に突入する。いいな!」
「ぎぃぎぃ。いいだろう。シャックスとフェネクスの能力を事前に教えてやる」
「やんややんや。安息の地。楽しみだ」

 二匹を封印にしまうと、サーシュに頼んで速度を上げてもらう。
 すでにフェルドナーガが見えない位置まで来た。
 一時でも地底を支配した王。ならばまた、立ち上がるだろう。

 ――ルインズシップに到着すると、メルザが飛びついてくる。
 もう二度と離さないという力を感じた。
 
「なんでいっつも俺様を置いて無茶ばかりするんだ。ぜってールインはいつか死ぬ。俺様、俺様もう、もういやなのに。また俺様をあんな風にさせたいのか? 俺様、ずっと離さねーから。ずっと、ずっとだ」
「メルザ。俺だってお前の手を離したくはない。お前と離れたとき、辛かったのは俺も同じだ。でも、あの時と違うことがある」
「……え?」
「俺たちは夫婦になった。こんなに可愛い子供もいる。仲間も、みながが暮らす国も。お前はもう、一人ぼっちのメルザじゃない。これからも増え続けるお前を慕う者のために俺は……お前の矛となり戦う。それがお前に助けられた俺の生きる意味なんだ。全てを失い、全てを手に入れられた。俺にとってお前は全てだ。だからこそ……サーシュ! 我が主メルザを守れ。他の三幻を全て集め、必ず守り通してくれ。ジェネスト、クリムゾンと共に護衛を。ギオマはベルベディシアと共に。ベルベディシアよ、今一度あれを合図したら撃ってくれ。ベリアル。いざ戦場へ」
「さぁ女王陛下。王女様」
「いやだ。いやだよ。なんで俺様を連れてってくれねーんだよ……なぁ。なぁ、ルイン!」
「メルちゃ。ツイン、邪魔しちゃ、め」
「カルネまで何言うんだよ。このまま戦ったらさっきの光で……おめーの父ちゃん、死んじまうかもしれねーんだぞ……」
「平気。カルネ、信じてる」
「あ……」
「子供に先に言われたな。俺はメルザを信じていた。お前は俺の思う通り、俺を助けてくれた。それなら次は……俺の番だろ?」
「……ずるいよ。俺様、俺様……」

 悪いなメルザ。きっとお前に見せたくない姿となるだろう。
 あれを破壊するためならやってやる。

 絶魔の上があるかどうか、見てやろうじゃないか。
 フェルドナーガ……それに、タナトスよ! 
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