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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百五十五話 対ベオルブイーター戦その五 降臨せし理

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「さぁ、抗ってみよ。ベオルブイーター! 我が意のままに放て、バルフート・シドニア。テロス・トゥ・コスム世界の終わり!」

 大きくベオルブイーターから離れたフェルドナーガが合図をすると、バルフート・シドニアは全身を震わせる。
 数万の翼が開いていき、その一つずつから白紫の閃光が次々とベオルブイータ本体を攻撃していく。
 世界の終わりとは……よく言ったものだ。
 既に戦線を離脱したこの状況下で大爆発が連鎖的に起こっている。
 あんなもの、地上の大陸すら消し飛ぶぞ……なんて恐ろしいことを。
 しかし……胸騒ぎは的中していた。
 ベオルブイーターに大きな変化があったのだ。
 ベオルブガーディアンは本体を守らず地上部分を守っていた。
 これは地上へ向けて攻撃しているフェルドナーガ部隊の影響だろう。
 そのようにフェルドナーガが指示を出していたに違いない。
 問題はベオルブイーター本体だ。
 俺たちが攻撃していたのはベオルブイーターの下部分。
 ここ地底は、果てが無いほど空が続いているが、ベオルブイーターの上部は全く見えない。
 高度がありすぎて、頭部分は確認出来ていなかった。いや、出来なかった。
 その上部から……紫色の城が降りてきた。
 そして、その城からバルフートを越える大きさの鎌のようなものが振り下ろされたのだ! 
 バルフートはそのまま地上へと薙ぎ斬られてしまう。
 そして……フェルドナーガもその攻撃をもろに受けて、どこかへ吹き飛ばされてしまった。

「なんだ、あれは!? 城? 紫色の城?」
「強大な気配アリ。一度、ルインズシップまで退避いたします」
「……くそ。かなり押してたのに。ズサカーンからの合図はまだなのか」
「主様。ガーディアンの対策より、あれの対策を講じねばなりません。その役目、サーシュめにお任せ下さいますか」
「ダメだ。お前もあの攻撃を見てただろう。フェルドナーガすら巻き込まれて吹き飛ばされたんだ。あんな一撃喰らったら、消滅してしまう」
「このサーシュ。避けるのは得意と進言アリ。お心遣いは痛み入ります。ですがこのサーシュ。いつまでも主様に救われた大恩を返せず、苦しいのです」

 サーシュはウガヤに操られていて襲ってきたんだったな。
 別に気にする必要などないのに。
 四幻はその存在こそが幻獣に近い。召喚獣のようなものと考えている。
 これから先カルネをしっかり守ってくれれば、それで十分だ。

「お前にはカルネを守ってもらいたいと思っている。あれを調べるのは……」
「俺の出番だな? な?」
「ああ。レウスさんはなんつっても不死身だから、な?」

 サムズアップをしてみせるレウスさんに、俺もサムズアップして応えてやった。
 散々置いていったので、レウスさんはずっといじけていたようだ。

「バシレウス殿。しかし!」
「大丈夫。釣りで彼の右に出る者はいない。頼りにしてるぞ。レウスさん」
「おお、おお。なんせ俺の友達だからな! な?」
「あ、ああ。あのスケールまで友達か。やっぱりレウスさんはレウスさんなんだな……」

 俺から離脱すると、レウスさんは空をぐんぐん上がっていく。
 レウスさんに常識など一切通じない。
 彼はバシレウス・オストー。骨の王の中の王だ。
 
 ――ルインズシップまで戻ると、メルザが仏頂面をしていた。
 当然だ。直ぐ戻るはずがベオルブイーターの本体最前線で殴り合ってきたわけだ。
 自分にも戦わせろと駄々をこねるに決まっている。

「思ったよりガーディアンが手ぬるかったからつい、な?」
「ついじゃなーい! 俺様の出番がなくなるだろ。な? カルネ」
「出番、いらない。メルちゃ。いっぱい食べてた」
「ば、ばか。そりゃ言わねーって約束したろ!」
「呆れた食欲ですわね。本当に」
「なんだよ、ベロベロだっていっぱい飲んでたじゃねーか。血が美味しいですわぁーって」
「あ、あら。なんのことかしら。オホホホ……」
「空瓶がこんなに転がってる……はぁ。ジェネスト。輸血してくれ」
「私の血をですか? 死にますよ?」

 仕方なく栄養補給をして再び小瓶に血を入れておいた。
 俺は戦場で血を流していない。ここで血を流している。

「それにしても、あの城のようなもの……異質さを感じますわね」
「ベルベディシアもそう思うか。ベオルブイーターの上空から降りてきたように思える。少しこの遺跡船に似てる気がしないか?」
「わたくしも同じように思いますわ。だとするなら、ベリアルさんの方がお詳しいんじゃないかしらね」

 そういえば前にハルファスとマルファスに、この船を作ったやつの話をしていたな。
 そいつの仕業? だが、だとしたらベオルブイーターの上からそれが降りてくるのはなぜだ。
 何者かに利用されているのか? 

「どうやらさらに面白いことになりそうですわよ。あれ、見覚えありますわよね」
「あれは……ロキ、か? まさかバル・シドニアから出てきたのか!」

 上空にはボロボロの姿をしたミレーユ王女の姿をしたロキがいた。
 両手をだらんと下げ、上空をにらんでいる。
 そして、紫の城から人……いや、神だ。
 そいつはまるで七色に光を発しているかに見える。
 長い黒髪に紫色の闘衣。
 顔は良く見えない。そもそも顔があるのかも分からない。
 とにかく眩しい存在だ。

 ロキはそいつに向けて突っ込んでいき……消えてしまった。

「あれはもしかして……絶対神ネウスーフォなのか」
「きっとそうですわね。つまりあの城に住んでいるのが絶対神ネウスーフォなんですわ」
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