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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百五十三話 対ベオルブイーター戦その三 主砲発射!

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 ベルベディシアは金色の舵に電撃をほとばしらせると、すぅーっと髪の色が色あせて黒色へと変化していく。
 これからベルベディシアが行おうとしていることは、まだ一度も試していないことだ。

「電撃装填完了……この一発でもらった小瓶一つ分ですわ」
「冗談だろ!?」
「いただきますわね……ふう。はい、おかわりですわ」
「なぁなぁ。これ、本当にうめーのか? 一本もらうぜ」
「ちょ、だめですわよ! 返しなさい。こらっ!」

 メルザがベルベディシアに渡した俺の血の小瓶を取ると、静止を聞かずにぐいっと一飲みする。
 そして吐き出した。

「ぺっぺっ。全然美味くねーじゃねーか!」
「当たり前だろ。ただの血液だぞ。トマトジュースでもあるまいし」
「メルちゃ。あほ、あい」
「サンキューカルネ。なぁルイン。美味い飲み物くれよぉ」
「……パモ。水を出してやってくれ。まったく、今それどころじゃないんだからな」
「ぱーみゅぱーみゅ……」

 俺とパモはお手上げといった素振りを見せ、パモに水と新しい小瓶を出してもらった。
 指を軽く切って血を入れると、ベルベディシアにそれを渡す。
 俺の血液は無尽蔵じゃない。
 魔族の臓器がどうなってるか知らないが、いつか悲鳴を上げるだろう。
 
「さぁ気を取り直して……いいですわね?」
「せっかくだ。俺がカウントするから、ゼロで発射してくれ、五、四、三、二、一……発射! ……あ、すまん」
「……ゼロじゃありませんですわよーーー!」

 金色の舵が再び電撃でほとばしると、ルインズシップの先端より、青白い閃光を発しながら太く収束された一筋の電撃がベオルブイーターへ向けて突き進む。

 そして……その電撃を防ごうと動いたガーディアンへ、ルインズシップからずっと放出されていた閃光が角度を変えて、そのガーディアンの動きを止めた! 
 激しい電撃音とともに、確実にベオルブイーター本体へダメージが通ったことが分かる。

「ベルベディシア! 急ぎ後退しろ!」
「分かりましたわ!」
「ベリアル、ギオマ。少し休めたか。外へ出るぞ!」
「ようやく一発当てやがったか。スカッとしたぜぇ」
「この船は役立つようだな。これも我のお陰であろう。グッハッハッハッハァ!」

 予想通りというか、こちらの攻撃を食らったベオルブイーターは、ガーディアンをこちら側へ向けて防御する体制となった。
 そしてそのまま先ほどベルベディシアから聞いた通り、ガーディアンが鋭い矢のように集まっている。
 ルインズシップは動きが早い。
 だが、あれを避けられるかどうかも分からない。

 急ぎ外へ出た俺、ベリアル、ギオマは状況を分析する。

「おいルイン。ありゃやべえ。狙いは間違いなくルインズシップだぜ」
「攻撃は反射される。ならばどうするのだ、ルインよ」
「俺にはもう一つ、とっておきの神話級アーティファクトがあってね。パモに入れておいてよかったよ。こいつまでフェルドナーガに取られたらと思うとぞっとした」
「一体何しやがるってんだ? 神話級アーティファクトでどうにかなる攻撃じゃねえだろう!」
「いいから黙って近づけベリアル。お前、俺を信じないのか?」
「……くっ。はっはっはっはっは! まさかお前が俺にそんなこと言うようになるとはな。いいぜえ。元々俺とてめえは一心同体だ。おいギオマ。びびってるならてめえは逃げ帰ってもいいんだぜえ?」
「誰に言っているか分かっておるのか、この死竜めが! 我は魂吸竜ギオマ。周囲には魂が満ち始めておる。我の全力も近い。あの攻撃、防げた後が好機なのであろう? ルインよ」
「その通り。そして俺自身その好機に乗る。さぁ来い、ベオルブイーター!」


 ベリアルに乗り、傍らにいるギオマと共にルインズシップの正面に立つ。
 距離は相当ある。しかしこちらから見ても分かるように、攻撃予測範囲が広すぎる。
 撃ち落とされれば下にいるこっちのことまでやられかねない。
 一歩も引けない状態で、一つのアーティファクトを手に取り身構え……「来る! ラーンの捕縛網、モード、パモ! 全部吸い込め!」
『ぱーみゅーーー!』

 無数に放出された捕縛網が無数の小型パモへと変わり、一斉に吸い込みを開始する。
 打ち放たれたガーディアンは次々と捕縛網、パモに収納されていく。
 そして……全て飲み切ったところで捕縛網を戻した。

「いけ、ベリアル! ギオマ!」
「……最っ高じゃねえか。飲み切りやがったぜぇーーー! くたばれ、エゴイストテュポーン!」
「がら空きだ。魂吸、最大ブレス!」

 一気に本体間近へと近づき、ガーディアンの再生が始まる前に二匹の竜からブレスがほとばしる。
 他のガーディアンが襲ってくる気配はない。
 この位置から西の遠方に、巨大蛇が見えた。
 その上に乗るフェルドナーガは、驚愕と称賛の眼差しを向けているのが見て取れる。
 俺はわざと手招きをしてみせた。
 挑発か、あるいは見返してやった気分かは分からない。
 だが、自然とそうしていた。お前もこい、そうとらえられるだろう。
 ここで一気に押さなければ! 
 
「ガーディアンが動いたら引き付けろ! ベルベディシアたちへの指示は任せたぞ! ズサカーンの合図があるまで、本体を攻撃してくる! ……スペリオルタイム」

 新たに手に入れた力を用い、ベリアルから離脱すると、俺は本体へと突撃した。
 そして、それに呼応するかのように大型の蛇に乗ったフェルドナーガが俺の眼前までやってくる。

「一時、我の力となれ!」
「バカ言うな、今が俺の全力を出せる一時だ!」
「ならば邪魔をするな。参るぞ!」
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