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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百五十二話 対ベオルブイーター戦その二 回収、解析

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 予定通りガーディアンを数匹駆除することに成功した。
 いくつか落下するガーディアンも確認したので、想定通りだ。
 この作戦には、ガーディアンを詳しく調べるる担当を設けてある。
 それがズサカーン、ルルカーンの役目だ。
 彼はモンスター研究を愛してやまない妖魔。
 さぞ喜び、直ぐにでも研究してくれるだろう。
 研究が終わり、良い結果なら紫、悪い結果なら赤色の閃光が打ち上がる手はずとなっている。
 それまでは、ガーディアンの数を減らすことに専念している。

「ガァァァー! 畜生、やっぱりきりがねえ」
「グヌウウウ。まだまだ!」
「お二人とも。主様と離れすぎてはなりませぬぞ」

 俺がガーディアンをリンクさせて釣り、それをギオマとベリアルのブレスで沈める作業を繰り返すこと八回。
 そろそろ疲労が見え始めた。
 はるか遠方でも激しい戦闘が行われているようで、大きな歓声が時折聞こえてくる。
 こちらは手前のガーディアン四十を墜落、あるいは消滅させ終えたところだ。
 これが全体の極一部に過ぎないことは理解している。
 だが、サンプルは多いほどいいし、数をこなすほど攻撃が与えられるポイントが明確化してくる。
 最後に釣ったガーディアンは七体もいたのだが、まとめて撃ち落とすことに成功した。
 こいつらの反射させるポイントが、地表のある地点に向かう場合、反射できない場所で受け止めて攻撃当てることができる。
 最初の攻撃が狙っていないものだったのに対し、今は外すことなく攻撃を当てられている。
 これだけでもベリアルにとっては驚くべきことだったのだろう。
 
「俺一人じゃ攻略できねえわけだ。だが、連携すりゃ弱点の糸口が見つかるってか。情けねえ話だぜ。バラバラだったソロモンの連中じゃ、どうあがいたって攻略できねえ。それをあざ笑っていやがったのか」
「フヌゥ。よそ見してる暇はなさそうだぞ、ベリアルよ。本体が動くかもしれぬわ」
「ああ、そうみてえだな。ガーディアンをかいくぐり、近づいた奴のことを思い出すぜぇ……おいルイン! 一度引け!」
「分かった。流星!」

 ベリアルたちの指示通り釣りを一度止め、近づいたガーディアン一匹に反動をつけてからその場を離脱する。
 最後に釣ったのは二匹のみ。こいつらも撃ち落として……そう考えていたら、そのガーディアンは接近をぴたりと止めた。
 いや、止められたが正解だ。
 本体から黒い職種のようなものが無数に伸びている。
 それは全てのガーディアンに結びついているようだった。
 なんだあれは? ガーディアンたちが本体へ引き寄せられている? 

「もっと離れろ! やべぇぞ!」
「メナス、ギオマ、ベリアル、封印に戻れ! ……流星!」

 危なかった。全員を封印に戻し終え、大きくその場から離れた。
 俺たちがいた位置にガーディアンの防壁が出来ていたのだ。
 まるで、卵の殻で下半分をおおった形に見える。
 ルインズシップにも合図を送り、少し後退させた。
 
「あれが本体の攻撃……やはり生物なのか……?」

 落下しそうな俺を、サーシュが封印から出て拾ってくれる。
 ベリアルたちは一度休憩。
 想定外の攻撃だったが、ベリアルは把握していたようだ。
 そして、ベオルブイーター下半分をおおうガーディアンはぐるぐると回転して、振り子のような動きを見せ始めた。
 今の攻撃だけで、フェルドナーガの妖魔たちは何人死んだんだ。
 無防備に戦い過ぎだ。あちらの戦闘状況は読めないが、避けれた奴は少ないに決まっている。
 
「主殿。進言アリ」
「どうしたサーシュ」
「前面反射状態。隙間ナシ。されど本体一部へ、欠落アリ」
「打ち崩したところか? よく見えるな。ガーディアンを落とした部分か。そこを狙って攻撃したら、他のガーディアンが防ぐと思うか?」
「本体を守る盾ならば、体を張って守るのが従者の務め。その意思は我らにもアリ」
「遠距離は得意じゃないが……我が主に任せてみるか」
「雷帝殿の攻撃が最善と進言アリ」
「分かった。頼んでみよう」

 ――一度ルインズシップに戻ると、メルザが駆け寄ってきた。
 頭を撫でると少しホッとしたような表情をする。

「さっきの、危なかったな。すげー攻撃だったぞ。俺様心配だよ」
「大丈夫だ。ズサカーン頼みではあるが、こいつらの行動は分かってきた。守る優先順位があるのだろう」
「優先順位?」
「地表を守ることを優先するのか、本体を守ることを優先するのか、だ。先ほどの行動は地表を守るのに相応しくない。つまり最優先は本体を守ること。今地表を攻撃してもガーディアンは地表を守れない。だがこの状態で地表を攻撃したら、一斉にそいつへ向けて本体が攻撃を……」
「動き出しましたわ! 本体が……ああ、なんて破壊力かしら……」

 ベルベディシアの悲鳴じみた声を聴き、急いで外を確認すると、ルインズシップの平行線上に灰色の煙あとが立ち上っていた。
 一瞬のことだったので見えなかったが、間違いなくフェルドナーガ軍の方だ。

「何があったか見ていたか?」
「ええ。ガーディアンが尖った巨大角の形になり、本体がそれを押し出すようにして……切り飛ばされたガーディアンは大爆発して飛散。そして……再生しましたわ」
「再生? くそ、道理で周囲のガーディアンを攻撃しても本体がそうそう動かないわけだ。倒した個所は再生するか」

 これも想定はしていた。幾年も上空でうごめいているやつが、再生能力も持たずそのまま維持し続けていられるはずもない。
 なんなら少しずつガーディアンが消えて、今頃いなくなっていてもおかしくはないんだ。
 つまりやつは自動再生、修復機能が備わった怪物。
 そして本体の能力は未知数。ふざけた存在にもほどがある。
 
「サーシュの言っていた本体に通ずる穴の個所はまだあるか?」
「実はわたくしもその一点には気づきましたのよ。あれを、試してみるときかしら?」
「そう思ってルインズシップに戻ってきたんだ。やってみよう」
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