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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百四十八話 新しい力、スペリオルタイム、ベオルブイーター攻略のフォースミッション

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 俺の行動に対して、きちんとスワイプロードは技を発動させてくれた。
 どうやら発動ワードはなんでもいいようだ。
 どうやらこの技……スペリオルタイムと名付けたが、自身にかけるバフのようなものに感じる。
 驚くことに、黒衣に封印されたスワイプロードを中心に紫色の線が走り……封印された箇所に紫の線が走っていく。
 封印内にはギオマという巨大すぎる力の持ち主がいる。
 
「発動方法は異なっていたが発動してしまったようだな。それではそのまま流星を使うのだ!」
「嫌な予感がするが……流星!」

 流星が発動すると、今度は壁を突き破り、外の岩壁に深くめり込んだ。
 しかし、まったく痛くもかゆくもない。
 そのまま軽く走ったり飛んだりしてみた。
 スペリオルタイム中は、どの技を使用していないのにバネジャンプや流星を常時発動しているような跳躍力と機動力がある。
 素手で岩壁を殴ると、まるでジオのように岩壁まで破壊できた。
 これは間違いなく、人間やただの妖魔の領域をはるかに超えている。
 そして効果が切れたことも直ぐに実感できる。
 効果時間は約十秒ってところか。

「家の壁、破壊してしまったな……」

 部屋へ戻ると腕を組みながら満足そうにうなずくズサカーンがいた。

「どうだったかな。技の名前が少し残念な結果だが、概ね満足いく結果だろう?」
「そうだな。そもそも技名、言う必要無い気がするんだが……これなら新たな可能性が広がりそうだよ」

 これまで、ゴブリンのような弱いモンスターであれば肉弾戦も十分行えて来た。
 近頃出会うモンスターの格が高すぎて、肉弾戦を避け気味だった。
 これなら……今一度、一刀一拳、あるいは二刀一拳で戦えるかもしれない。
 それにラモトを合わせれば……星の力を取り戻すまで、十分戦えるだろう。

「壁の分はいいとして、お主たち、本気でベオルブイーターと戦うのだな」
「ああ。それがあの鳥の悲願だからな」
「あの鳥はなんなのだ?」
「魔人ベリアル。そういえばヤトがあいつの人型肉体を構築するって言ってたな。そろそろ戻ってくる頃か?」
「ほう。それはきっと母上……ルルカーンの出番だろう。我が母上はホムンクルス体の研究者でな」
「一家そろって研究三昧か。血は争えないってことだろう」
「そういうことだ。妖魔に流れる血というのは、神が作りし神秘である。絶対神イネービュにより寵愛を受けた種族であり、それが……」

 海底神スキアラ、海冥神ネウスーフォ、海炎神ウナスァー



「絶対神イネービュが? あいつが創造神なのか」
「うん? ああそうだとも。地底を創造した海冥神、ネウスーフォ。地底より臨む海炎神ウナスァー。万物に寵愛を与えし海星神、イネービュ。海底を創造せし神、スキアラ。それらは全て空想上の神とされるが、実在する四柱の神。地底に他の神はなく、地上には多くの神々が存在する」
「あんた、都合の良い耳をしたモンスター好きの変な妖魔だと思っていたが……博学のようだ」
「はっはっは。なぁに義息殿の博学さに比べればまだまだよ」

 この人はルーン国に招き入れたいな。
 うちにはモンスター牧場もある。いい研究をしてもらえそうだ。
 ……だが、そんなことを口にすれば間違いなく結婚の段取りとか言われるので今は止めておこう。
 そう考えていると、ヤトカーンとルルカーン、それにルジリトとサーシュが部屋へと入ってきた。
 敬礼をすると、ハルピュイアの形から、普段の猫っぽい姿へと戻るルジリト。
 そうか、ルジリトは空を飛べるようになったんだ。

「主殿。遺跡の件、ご苦労様でした。女王も無事なようで何よりです。早速ですが本題に入りましょう」
「ああ頼む。こちらは少し戦力補強できた」
「ねぇ妖魔君。ベリアル君、借りてもいい?」
「ああ。人型になれるならベリアルとしても願ったりだろ」
「あれ、寝てるね……いいやそのまま連れて行こう。お祖母ちゃん、はい」
「あらあら。あらあらあら。可愛らしいねえ。このままでもいいんじゃないかい?」

 ベリアルもメルザたちと食事を取り、疲れていたのか眠っていたようだ。
 俺はルジリトと話し合い、情報をまとめることにした。
 ルジリトの話によると、フェルドナーガの軍勢は現在ベレッタに集結しつつある。
 率いるのはもちろん本人、フェルドナーガだ。
 ノースフェルド皇国は第一王子、切れ者のフェルドラーヴァが守っており、フェルドジーヴァは先の事故で行方不明のようだ。
 
「そして……狙いは間違いなく、あとアクルークですな」
「そこって地下から侵入する道は無いんだよな?」
「ありませぬ。付近に活火山がありますゆえ、あの付近の地下はマグマ層です」
「地上から向かう方法は?」
「全くないわけではないのですが、アトアクルークのいくつかの場所には侵入できませんな。主様の話とすり合わせますと、アクソニスとやらの狙いはそこでしょう。湖に浮かぶ神殿……絶対不可侵領域となる神殿です。ここの真上がベオルブイーター本体の位置と一致します」
「フェルドナーガにしろアクソニスにしろ狙いは一緒か。協力関係にあると思うか?」
「それは無いでしょうな。ですが、互いに潰し合うとも考え難い。しかし両者必ず手をうっているはずです。我々は多少の戦力になればいい。その程度に考えられているかもしれませぬ」
「フェルドナーガを見た感じでは、こちらを見下してはおらず、力を削いでおけばいつか屈服するだろうという意思が感じられた。アクソニスは逆に見下している感じだな。こちらの能力を把握しきっていない感じだった」
「主殿そもそもの力を見抜けなかったのは、このルジリトとて同じことです。妖魔と聞けばその能力はおおよそ把握できるものですが、主殿は底がしれませぬゆえ」

 俺自身も自分の能力に自信があったわけじゃない。
 周りに強いやつが多かった。特にメルザという無尽蔵の術使いと言えるほど強い者がいれば尚更か。
 ――その後しばらくルジリトと話しをすり合わせ……ミッションという形で今回のベオルブイーター戦へのぞむことにした。

「ファーストミッション、便乗。戦闘を開始したフェルドナーガ軍の損耗を見つつ別方向から参戦。セカンドミッション、破壊。ベオルブイーター・ガーディアンの駆逐。本体に攻撃可能となるまで破壊を繰り返す。このフェーズで二つのパターンが発生。破壊困難な場合と破壊可能な場合の二フェーズ。一時撤退かそのまま進行。あくまで破壊可能な場合として進める。サードミッション。ベオルブイーター本体への攻撃。これも二フェーズに分かれる。本体へのダメージソースが十分か。不十分か。これはシミュレートを要する案件だ……と、この言い方で分かるのはルジリトだけだろうが、どうだ?」
「はい。把握しております。最終フェーズであるフォースミッション。こちらはベオルブイーターの破壊が確認できた後、四フェーズ用意しておきます。これらを上手く理解できる者は限られます。此度のミッション、恐らく前回の防衛戦より至難でしょうな」
「ああ。なにせ敵の挟み撃ちに合う可能性がある。上手くいけばあいつらの目的物はこちらが占有できる可能性は高い。それに恐らく……」

 現地にはベルローゼ先生が潜んでいるに違いない。
 俺はあの人を信じている。
 そして、必ずこちらを手助けしてくれると思っているのだから。
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