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第三章 ベオルブイーターを倒せ!

第九百三十七話 二羽のベリアル

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「くそ、こっちにもいやがったか! ルイン、そいつから離れろ!」
「おいルイン、敵のおでましみてぇだ。あの鳥をさっさと倒せ!」
「えっ? ベリアルが二人? どうなってる?」
「俺が本物だ! 見りゃわかるだろうが!」
「ばかいってんじゃねえぞ。どうみてもそっちが偽物だろうが!」

 見た目は完全に同じ。声も全く同じだ。
 違いが何一つ見当たらない鳥が二匹、俺の肩へ乗る。
 だが、姿形をいくら似せても、俺とベリアルは魂の共鳴者だ。
 分からないわけがない。
 ずっと一緒だったんだ。
 ……でもどっちだろう。

「おいベリアル。俺の封印へ一度戻れ。そうすればわかる」
『それはできねえ』
「はい? なんでどっちも同じことを」
「理由はあとで話してやる。とにかく俺が本物だ」
「いいや俺が本物だ。この偽物野郎が!」

 ……おいおい。
 他には、えーと。
 あれだ。質問をしよう。

「それなら、ベリアルが竜となったときのその竜の名前はなんだ」
『ドラゴントウマだ』
「……ベリアルが好きな食べ物はなんだ」
『団子だ。知ってんだろ?』
「……おい。どっちも本物じゃないか?」
「バカいってんじゃねえ! 俺が本物だろうが!」
「ふざけんなよく見ろ! おめえそれでもルインか?」

 完全に混乱してきた。
 そもそも封印に戻れないってのはどういうことだ? 
 これ、敵の攻撃なのか? 分からん。
 これは、第三者の力……そうだ。女の勘ってやつを頼ろう。

「悪い、メルザ、カルネ、ベルベディシア。手伝ってくれ」
「俺様は、こっちだ! 最初に戻ってきたほーだ」
「あら。最初に戻ってきた方はいくらなんでも早すぎて怪しいですわ。わたくしは後から来た方ですわね」

 ……意見が割れた。
 待てよ、ベリアルが実は分身出来てふざけてるだけって可能性もあるか。

「ツイン。鳥、鳥ー」
「カルネは最初に戻った方、メルザと一緒か」
「ちあう。鳥、鳥ー」
「ん? どういうことだ」
「それ、ベリ、ちあう。鳥、鳥」
「……そういうことか。お前らどっちも偽物だな!」
「おいおいバカ言ってんじゃねえ。よく見ろ」
「そうだぜ。どう見ても俺の方がベリアルだ」
「よく見ろ、ね……アナライズ」

 ハルファス
 あらゆる鳥の姿で現れる。
 望んだ場所に塔を建てたり、それらを武装する力がある。
 己の生み出した羽から兵を作り、敵対するものへ送り込むことのできる能力をもつ

 マルファス
 あらゆる鳥の姿で現れる。
 望んだ場所に塔を建てたり、また、敵対者の考えを情報として伝える。
 相手をだますごとに自らの能力を膨れ上がらせ、また、それを仲間に分配する能力を持つ

 ……こいつら。
 
「敵だ!」

 急いで肩を振り払うと身構える。
 よりによって螺旋の道途中。戦い辛い! 
 急いでメルザの手を引くと、ベルベディシアへ合図を送る。
 直ぐに察したベルベディシアが対象に向けて雷撃を放とうとした。

「時間は十分に経過した。君らが騙された時間分、君らの攻撃は聞かないよ」
「ひゃっひゃっひゃ。簡単にだまされた。あいつとおんなじ。いいねいいねぇ、楽しめそうだよ」

 ハルファスの方は……兵を羽から作る、か。
 笑ってる方がマルファス。こいつがだます能力者か。こいつの能力かなり厄介だぞ。
 アナライズは相変わらずチート級の能力だ。
 これがなければもっとだまされてたかもしれない。

「笑ってない方の羽を……メルザ!」
燃紅蓮斗モルグレント!」

 メルザがカルネと手をつないだまま、正面に爆炎を巻き上げる。
 攻撃が効かないとはいっていたが、広範囲熱攻撃。
 避けざるを得ないだろう。

「だめだ。効いてねー!」
「いや、そのまま続けてくれ……姿を戻すはずだ」
「おやぁ。少しは理解しているようだね。やんややんや」
「ひゃっひゃっひゃ。後ろからくると面倒だ。さっさとやるぞ、ハルファス」
「おう。マルファス。建造力、異世界の塔!」
「なにっ?」

 突如俺たちの周りを壁が囲っていく。
 螺旋の道の中に建物を作りやがった。
 しかも、この中……領域! 
 急いで二人を抱えて離れようとしたが、不可能だった。
 周囲の風景が一変する……別世界にでもそのまま飛び込んだかのようだ。

「うっへぇー。下り道降りてたのに野原みてーなとこに出たぞ」
「これは……かんばしくない状況ですわね。なんという能力かしら。原初の能力?」
「ツイン。鳥、つおい」
「ああ。あいつらが話してたあの情報。恐らく、本当だ。あいつらはベリアルの知り合いらしい。ソロモンの塔守護者の二人だろう。一体ここで何を……とにかく脱出方法を探そう」

 困ったことにベリアルたちと分断された俺たち。
 幸いメルザとカルネ、それにベルベディシアがいるのは大きい。
 ベリアルたちにも恐らく、何かしらの刺客と遭遇しているに違いない。
 
 さて、問題は俺たちの状況だ。
 敵の術中だが……「あれ? この場所の空……」
「絵にあったような、黒い点のようなものが見えますわね」
「他は何もない野原だ。出口らしいものも見当たらない。壁もないな。少し歩いてみよう」
「なぁなぁ。道を踏み外しても落ちねーのかな?」
「ここは俺たちの領域のようなものだ。つまり……」

 地面を触っても土の感触がする。草も本物だ。
 凶悪な能力者、しかも連携のとれた二人。
 こいつは苦戦しそうだ。俺たちを襲ってきた理由はベオルブイーターを倒させないためか。
 あるいは他にあるのか。
 ……まずは思い切り跳躍してみるか。

「バネジャンプ! ……とと、出口らしい出口がないな」
「違和感があるとしたらやはり、空にある黒い点くらいですわね」
「へへっ。こんなときこそカルネの番だな」
「ツイン、鳥、鳥ー」
「鳥? 鳥なんてどこにもみえねーぞ」
「ツイン、お鼻、お鼻ー」
「ううん、分からん……カルネはこんなときも鼻が好きか……」

 どうにか脱出方法を探さねばならない。
 いや、あるいはこの中に潜む敵を倒す必要があるか。
 何れにしても、もう少し情報を探ろう。
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