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第二章 地底騒乱

間話 ノースフェルド皇国に残った者

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 ルインたちが列車へと侵入した後の話。
 エッジマール・ウル・キゾナ。別名ジオは深くため息を吐いた。
 
「無事に送り出したのはいいんだけどねぇ。後始末、大変だったねぇ……」
「ジオさん。本当に一緒についていかなくても良かったんですか?」
「きっと彼なら平気だねぇ。何せ死にかけても全く死なない男だよ。僕は女の子の方が好きだけどねぇ。彼には惹かれる何かがあるんだよねぇ」
「うっ……エッジマールさんて男も好きだったんですか。ちょっと距離置こうかな……」
「酷いねぇ!? 僕は純粋に女性を愛する男だからねぇ!?」
「けれど、あのルインって妖魔、噂じゃ男色だって……」
「君ねぇ。そんなの仮の姿で本当はどえらいべいっぴんの妻をわんさか抱えるとんだすけこましだよ」
「そうだったんですか!? そっちの噂、流しておこうかな……」
「ところで君……誰だっけ?」
「覚えてないんですか!? あんなに協力したのに酷い! 自分はベレッタ出身でベルギルガさんの親衛隊、ランズです!」
「男の名前はいちいち覚えてないんだよねぇ。そのベルギルガってのも誰だったか……さて。そろそろ作業場に戻らないとばれてしまうねえ」

 妖魔導列車を送り出した後、速やかに何事もなかったかのように持ち場へと戻ることに成功したジオ。
 彼は引き続きノースフェルド皇国へ探りを入れていた。
 現在この国において、最も厄介な存在はフェルドナーガではない。
 フェルドラーヴァであることを理解していた。
 鉱物を採取しながらも味方となったものたちを巧みに使い、更なる情報取集を重ねると、実力的に言えば既に父であるフェルドナーガを越えているという。
 しかしながら、フェルドナーガは、支配力が増えてフェルドナーガを恐れ敬う者が増えれば更に力が増すということ。
 そして……それが実はフェルドラーヴァにとっても好ましいことではないらしい。

「自分の父親に対して恐怖を抱く。父の背中を見て、父を越えたいと願う。そしていつからか力に魅入られた父を……まるで自分と重なるようだねぇ。これを利用しない手はない、か」
「おい貴様! ちゃんと手を動かしているか!」
「いやー。この現場、一人脱走した騒ぎがあったからねぇ。もう一人誰か欲しいんだよねえ」
「む、通達のあった脱走者はここが持ち場か。お前、何か知ってるんじゃないのか?」
「知らないねぇ。名前は知ってるけど。もう一人逃げたベレッタ出身の奴と仲が良さそうだったよ」
「ベルギルガの奴め。よもや脱走して無事でいられるとは思うまい……まぁいい。この場所へ新たな奴の配置は伝えておく! さぼるなよ!」
「分かってますって」

 監視が来るときはゆっくりと作業をするフリをして、監視がいない間にさっさと作業をしてさぼっているジオ。
 実に巧みに切り替えをして思考する時間を増やしている。
 
「はぁ。ニンファちゃんの顔を見に行きたいねぇ。でもあの穴は使えないし……いっそ下に大きな穴を開けてそこから侵入を……ぶん殴られるだけじゃすまないかねぇ」

 彼の思考パターンは至って明確。
 常にピンク一色である。
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