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第二章 地底騒乱

第九百十七話 フェルドジーヴァの秘密

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 第六車両……こちらは恐らくベレッタへの搬入物だ。
 布類や貴金属が目立つように積まれている。
 後方車両へは何かの開拓に使うためか、鉱物が殆どだった。
 都合の良いことに男女用の衣類があったので、ここで着替えることにした。

 しかし、こいつらは恐らく……地底を巨大国家にでもしようとしているのだろうな。
 そのための強制労働を様々な場所で行わせているに違いない。
 フェルス皇国側に向かった仲間も心配だ。
 なるべく急いで向かわないとならない。
 あれから一体何日経過してしまったのだろうか……。
 
「しっかし随分兵士が少ねえな。ほぼ一車両に乗ってやがんのか」
「この列車自体、レイスが動かしているのでしたわね。このまま暴れ続ければ
また行きと同じく列車を制御出来ずに自爆ですわよ」
「そのためにレイビーがいるんだ。今度は大丈夫だろう?」
「んーとね。多分大丈夫ー。わぁ、これ可愛い……」
 
 白い塊レイビーが俺から離れ……ふわふわと飛んでいった先。
 そこには……どうみても怖い呪い人形があった……。

「……可愛いっていうのかしらね。それ」
「こいつにはきっとそう見えるんだろ。生霊ってのは目がねえわけだしな。感覚だろ」
「先行きが不安だ……しかしこのままじゃまずい。もうじき後方車両を調べる奴が来るだろ。
このままだと大騒ぎだ」
「フェルドジーヴァの野郎を倒せば問題ねえだろ。さっさとのしてこの列車を支配するぞ」
「そうは言ってもな。星の力も無く、扱い易い強力なモンスターの力も無いんだぞ」
「わたくしも先ほどの男が着用していた鎧を着られると、かなり戦い辛いですわね」
「ルーニーも本来は車両で使うような形態じゃないんだよ」
「くそ。俺がトウマで暴れられりゃあこんな場所問題ねえんだがな」
「やっぱり小さい竜になって戦うのは難しいか?」
「失敗すりゃ列車ごと吹き飛ぶが、構わねえってならやるぜ」
「いや、勘弁してくれ。ここで投げ出されたら……っと速度が落ちて来た。中間地点へ着くぞ」

 急に速度が落ち始めた。
 ってことは確認のために兵士が来るはずだ。
 六車両目は比較的積み荷でごっちゃりしていて見辛い。
 隠れて様子を伺うか……あれ? 
 直ぐ近くにいるベルベディシアも驚いているようだ。

「……どう見てもフェルドジーヴァという殿方じゃありませんこと?」
「ああ。あいつは一車両目で踏ん反り返ってると思ったんだが……」

 どういうことだ? 敵の総大将が後方車両に? 
 まさか切り離し作業に来たのがこいつなのか? 
 
「よし、ここまで来ればいいだろう。誰も来るなって言ったからな……」

 何かブツブツ呟いているフェルドジーヴァ。
 こいつ何してるんだ? 

「全く蒸れてかなわん。しかしこれが無ければ……」

 スッと頭に手を伸ばすフェルドジーヴァ。
 そう。奴はズラだった。
 別にズラが悪いわけじゃない。
 外見ってのは相手に与える影響がまるで違う。
 必要な配慮である上、強そうな威厳を保つのにも大事だ。
 ましてや奴はあのフェルドナーガの子供で皇子だ。
 ……あっ。ベルベディシアが許容限界値を大きく越えた。

「ボフッ……」
「……何だ、今の何かが破裂したような音は!?」

 慌てて口を抑えたが、その眼は上を向き口は開き、息も絶え絶えで苦しそうだ。
 しかし俺は、ベルベディシアの口を抑え、もう一匹の奴の口を抑えてはいなかった。

「ゲハハハハハハハハ! あんだけ威厳たっぷりだったくそ野郎がズラじゃねえか! 
クックックこいつはいい。見ろルイン、傑作だぜえーーー!」
「……バカ野郎。やり過ごすチャンスが!」

 奴は顔面蒼白になったかと思いきや茹でだこのように真っ赤な顔になり、蒸気が頭から
吹き出す。
 あれも何かの能力か? そしてその蒸気のお陰で髪がふわっとなり、更なるベルベディ
シアの許容を越えた。
 ……人の身体的特徴を笑うのは良く無いぞ、お前ら! 

「き、き、貴様らぁーーー! 絶対、絶対にだ! 絶対に生きて返さん! いいや、ただ
で死ねるとは思うな! 絶望と苦しみをその身に刻み込んで、ぺちゃんこにしてくれる
わぁーー!」
「やってみろ。残り少ねぇてめえの毛を全部毟り取ってやるぜ」
「このクソ鳥風情がぁーーー! 使い魔の癖に舐め腐りおって! 死ねぇ! 妖火炎造形
術、炎の鎖!」
「ほう。造形術もちか。珍しいな」

 フェルドジーヴァは炎の形を巧みに変え、鎖状の炎を放出した。
 それらは無数に伸びていき、俺、ベルベディシア、ベリアルを捕らえようとする。
 全員バラバラに動くと三対一の形となり、奴に対峙した。

「多勢に無勢だが……悠長なこと言ってられない状況なんでね。総大将さん」
「あなたには少々痛い目を見てもらわないとなりませんわね。汚らわしい手でこのわ
たくしに触れたのですから」
「クックック。父親と違って随分と拍子抜けな野郎だ。さぞ劣等感を抱いてやがるん
だろうよ」
「黙れ黙れ黙れ! まずは貴様からだ、クソ鳥がぁーーー!」

 熱くなりすぎだろう。本当にこいつ、フェルドナーガの子供なのか?
 妖魔は皆美男子ばかりだが……いや、髪型を除けば十分良い顔立ちはしてるか。 
 その割に随分とお粗末な攻撃だ。
 まさかまだ、何か隠し武器が……それよりも怒りで状況把握が出来ていないって感じだ。
 直ぐにでも仲間を呼べば……「いや、呼べないか……すまん」
「貴様! 貴様も今私をバカにしおったな!」
「いや、そんなつもりは……まぁこっちとしては他にも強い邪念衆がいたら困る。
悪いが一気にいくぜ!」

【絶魔!】
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