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第二章 地底騒乱

第九百七話 能力を取り戻すための算段を

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 瞬剣のジオと話をしてから今日で三日目だ。
 あいつと会話出来るのは、鉱山で採掘をしている僅かな時間のみ。
 その間にこちらの状況や地理の把握、敵の情報などを仕入れられた。
 問題となるのは俺やベリアルについてる枷。
 こいつの外し方が分からないと、何一つ能力が使えない。

「そうだねえ……僕はそんな枷無くても暴れられるけど、君は能力に頼るところが
大きい種族だからねえ」
「どうにかする方法、あるか?」
「見たところこれも、ノード黒霊鉱で出来てるよねえ。つまり……」
「このノード黒霊鉱について調べれば解き方も分かるってことか?」
「そうだねえ。ただ、僕ら二人だけの力じゃ解決は出来ない。つまり……」
「ああ、他に仲間を募る必要がある。それも一人や二人じゃない。もっと大勢だ」
「そうだねえ。君ならそれが出来るかもしれないねえ。君には何処か不思議な魅力がある
からねえ。それが女性を振り向かせるから少しむかつくねえ」
「よしてくれ。俺はそんなつもりはない。俺よりもリルやベルドたちの方が余程魅力的だ
ろう?」
「全然自覚してないんだねえ。僕は君だからこそ力を貸すつもりになったんだけどねえ」
「俺にそんな力は無いよ。ベルローゼ先生のような甘いマスクを持ってるわけでもない
し、シーザー師匠のように戦いのスペシャリストってわけでもない。メルザのように凄い
術を使いこなせるわけでもないし、自分から産み出した術があるわけでもない。誰かに教
わったり、与えられたものだ」
「君が持つ魅力というのはそんなものじゃないねえ。君はいつも誰かのために動いている。
僕にはそう感じられるねえ。今だってどうにかしたいと考えるのは、自分のためじゃな
く、誰かのためになんだろうねえ」
「……この世界に来て、生きているだけでも不思議なんだ。憧れていた異世界の生活。その
始まりは絶望でしかなかった。そんな絶望を変えた少女のために生きている。だから俺
は……メルザが願うことを叶えてやりたくて生きているんだよ」
「だが、君を心配する人はその人だけでは無いんだよねえ。君自身の命を大切にしなけれ
ば、多くの者が悲しむことになることを、もっと知るべきだねえ」

 ジオの言わんとするところは分からなくもない。
 今は子供だっている。国を長く離れていてはいけないのも事実。
 だが……地底をこのまま無かったことにするなんて俺には出来ない。
 リルやカノン、フェルドナージュ様のこともそうだが……やることは沢山あるんだ。
 そしてアトアクルークとベオルブイーター。
 この二つがどうしても引っ掛かって仕方が無かった。
 
「全ての答えは、アトアクルークにあるかもしれない」
「ん? アトアクルークかい?」
「何か知っているか?」
「少しだけだけどねえ。ちなみにフェルドナーガもアトアクルークへ向かおうとしているねえ」
「何だって? あいつは地上と地底双方を支配に治めたいだけじゃないのか?」
「そのために必要なんだろうねえ。そして、アトアクルークを支配するならばベオルブイーター
と戦わねばならないねえ。ほんの少しだけ見たが……倒せるような相手とは思えないねえ」
「そんな化け物なのか」
「あれは化け物なんて生易しい存在じゃないねえ。あれと対峙しようなんて考えるだけ無駄だねえ」

 ベリアルを見る。鳥になったベリアルは喋らず、本当にただの鳥であるかのように行動をしている。
 だが、方時も俺から離れようとはしない。
 魂の共有者……その存在に答えを聞けないのがもどかしい。

「俺の故郷があるのも恐らく、アトアクルークなんだ」
「それは確かに興味深いねえ。どれ、一つそちらも探りを入れてみようかねえ」
「そうだな……今日の採掘も終わった。さて、どの辺りから目星をつけて話をするか」
「それは勿論、女性側の方だねえ」
「……お前な」
「誤解しないで欲しいねぇ!? 情報を入手するのに女性程巧みな者はいないねえ。唯一
許される夜の数時間、元フェルス皇国の宮女の一人に連絡を入れてみよう」
「お前……ニンファ一筋じゃ無かったのか。それならベルベディシアがどうなったか知りた
いんだ」
「誰かねえ? まさか新しい妻候補かねえ!?」
「シフティス大陸に根城を持つ魔王の一人、雷帝、ベルベディシアだ」
「魔王? そんな恐ろしいものをお供に連れて来たのかねえ?」
「連れて来たっていうか勝手に着いて来ちゃったんだよ。それで巻き込まれたんだ」
「それはまずいねえ……どちらも調べておこう。君の方は?」
「食堂で隣の奴に少しずつ聞き込みをしてみる。俺の顔はフェルス皇国で知られてるからな」
「レッドマリンのルインだねぇ。実にからかい甲斐のある呼び名だから覚えてるねぇ」
「恥ずかしいから止めてくれ。それに……星の力も奪われてしまったんだ」
「果たしてそうかねえ……一度身に宿った力なんてそうは失われないと思うけどねぇ」
「そうだといいけどな。それじゃ、作戦開始といこう」

 ジオと話を突き詰め、今後の行動について話し終えた。
 まずは味方を増やし……枷を外す。
 そして装備を取り戻し……騒ぎを起こしてこの国から離脱する。
 当然ベルベディシアやニンファ、フェルドナージュ様も助けたい。
 ルーニーがいればアルカーンさんに連絡を取ることも出来る。

 必要なのは、更なる情報収集だ。

 ――そして翌朝。
 いつも通り食事に向かい、小声で隣の奴に話を振る。

「なぁ。この枷って外す方法とかあると思うか?」
「俺にはよく分からないが、ベルギルガ様が外す方法を調べ回っているらしいぞ」
「ベル……ギルガ!?」
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