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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百八十九話 他大陸訪問

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「帰ってこれたズラ……」
「ちっ。結局無駄足だったじゃないか。踏んだり蹴ったりだよ全く」
「お頭ぁ……」

 俺は今、ベリアルと共にレグナ大陸を訪れている。
 既にシフティス大陸は訪れ、各地へのお礼は済ませた。
 レグナ大陸は辺境の地と言われている。
 せりあがった高地にあるため、気温がかなり低い。
 氷の世界というわけではないが、暖かい気候に恵まれているトリノポートからすれ
ば、厳しい環境と言える。
 しかしながら文明は発達しており、機械類が多く見受けられる。
 ここには発電システムまでしっかりと搭載されており、電気を起こす謎の文明がここに
はあった。
 そしてこいつらはマシーナリーと言えるほど機械整備が得意なようだ。
 どちらかというと前世に近い環境かもしれない。

「約束通り、協力はしてもらうぞ。当然足枷はつけさせてもらったけどな」
「この術具、外れないズラ……」
「畜生、覚えてな!」
「レギオン金貨三十万枚だ。フン。持ってきな。どうせそれも奪われた奴に返すとか抜か
しやがるんだろう?」
「その通りだ。これは傭兵斡旋所、レンズを通して被害届があった者へ返却用資金として
使う。お前たちはこれから自警団としてルクス傭兵団と共に世界の治安維持にあたる集団
となってもらう」
「ハンニバル空賊団が義賊なんて聞いてあきれるズラ……」
「悪さしても構わないけどな……どうなるかは雷帝にでも聞けばいい」
「ぞぉっ……ベベ、ベッピンさんに黒焦げにされるのは勘弁ズラ……」

 俺たちはこいつらの処遇に迷った。
 何せ散々悪さをしてきた奴らだ。牢屋に詰め込んでおくだけでは生ぬるい。
 国家転覆罪にもなる奴らだが、死刑なんかにしたら、今度はレグナ大陸から襲われかねない。
 そのため呪いの術具を身につけさせて、改心させるべく手をまわしたというわけだ。
 当然、罰金は払わせ、色々協力をさせるつもりだ。

「おいあんたに聞きてえんだ」
「なんだ? ハンニバルのお頭さん」
「なぜ、キゾナ大陸を掌握しねえんだ。おめえさん、戦に勝ったんだろ?」
「俺は……あの大陸が嫌いなんだ。それにあの大陸はまだ危険な古代種が眠っているらしい。それ
こそ人や魔族が踏み込んでいい領域ではないのかもしれない」
「それを俺に伝えてもよかったってのか? 俺が悪用するかもしれんだろ?」
「やるならご自由に。上位神ですら手なずけられないような生命体が存在するんだ。たかが人間で
あるあんたに、何か出来るとは思えないね」
「あんたは神のことにも詳しいってのか。俺ぁ根っからの悪だったがよ。あんたにゃ逆らっちゃい
けねえようだ……もちっとあんたと腰を据えて話がしてみてええが、時間取れるか?」
「一通り回った後なら構わない。レグナ自警団代表としてなら歓迎しよう。その代わりしっかりと
部下を管理してくれ。悪さをしたら本当に死ぬと思った方が良い。甘いのは……俺だけだ」
「勘弁ズリ……あんなおっかない大陸二度と行きたくないズリ」
「本当だよ、まったく。誰だい? 弱小大陸なんて言ったのは。とんでもない軍勢だったじゃないか」
「ヒージョがよく言うズラ……」
「あれは三夜の町に住んでた闇の者たちの影響が大きかった。俺もあんな強いとは思って
もみなかったよ」

 闇の住人だから暗い場所にいられないと生きていけないんだけど。
 だからこそ三夜の町が襲われたときは危険だったと思う。
 彼らにとって住処を追われるなんて二度とご免なのだろう。
 今回一番の立役者は、三夜の町に住んでいた魔族や亜人、獣人たちだ。
 彼ら用に住処をリスペクトする計画は当然ある。
 この大陸を最大級の亜人獣人が住みやすい大国にして、世界中に知らせれば、虐げられ
た者たちも集まって来るだろう。
 それもあって、ここレグナ大陸に来たわけだが。

「そうだ、ハンニバル。この大陸にもレンズはあるのだろう? 場所を教えてくれないか?」
「地図を見せてやる。現在地はレグナ大陸東寄りのハンニバル空賊団アジトがここだ。
そこから北西に一つ、南西に一つ小国がある。ちょいとばかし変わった小国だが気にするな。
北西の小国にレンズがあるぜ」
「俺たちと取引してる場所ズラ。居心地いいズラ」
「おいカバネ。一緒についてって案内してやれ」
「嫌ズラ! この兄さん怖すぎるズラ! 殺されるズラ!」
「ついていかねえなら俺がおめえを殺してもいいんだぜ」
「酷いズラ! あんまりズラ! 殺生反対ズラ!」
「おいおい。これから義賊になるって奴が簡単に殺すとかいうなよ……案内は別にいいよ」
「そうもいかねえ。おいカバネ! ついでに仕事ってなら構わねえだろ。こいつをギンに届けてきな」
「ギン兄貴にズラ? これ……特注のアビー酒ズラ! 随分若そうだけど飲みたいズラ!」
「おめえなあ……ギンに殺されるぞ」
「……お前ら、本当に大丈夫なのか」

 先が思いやられるが、結局案内役としてカバネがついてくることになった。
 やたらとズラズラ言うから髪が気になってしょうがない。
 俺は決してズラじゃないぞ。

 外に出ると空を飛んでいたベリアルが降りて来る。
 周囲の状況を視察してもらっていたのだ。

「遅ぇぞルイン」
「いや悪い。思ったより手間食っちまった」
「たた、食べないで欲しいずら」
「食っちまったってのはそういう意味じゃないんだが」
「ああ? 何でこいつまでいやがるんだ?」
「案内してくれるらしい」
「俺は乗せねえぞ」
「じ、自分の乗り物があるからいいズラ……」

 そういうとカバネは外に止めてあった小型の乗り物をいじり出す。
 闘技大会で止めていた奴とはまた少し違う奴だ。
 気になってたから尋ねてみるか。

「なぁ。その乗り物ってどうやって動かしてるんだ?」
「これはアビーからとれる原料を燃やして飛ぶズラ。格好いいズラ。最新鋭欲しいズラ」
「アビー? さっきもアビー酒がどうのと言ってたな。何なんだ、それ」
「生き物ズラよ。そういえばトリノポートにはいないズラね」
「生物からとれる何かか……面白そうだな」
「変わってるズラねえ……それじゃ早速出発するズラ」
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