上 下
969 / 1,085
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百七十五話 最強の管理者、冥暗のタルタロス戦その二

しおりを挟む
 吹き飛ばされた俺は、再度形成を立て直すが……容赦ない追撃が差し迫っている。
 
「くっ! 妖楼! 流星!」
「悪くない判断だ」

 追撃された触角を妖楼で回避しつつ、更なる追撃を備え流星で一気に移動した。
 移動距離は調整出来ないものの、通常移動するより離れた位置まで一気に行ける。

「てぃーちゃんそろそろ帰りたいでごじゃろ……タルタロス怖いでごじゃろ……」
「お前……久々に喋ったと思ったらそれかよ」
「コラちゃんも怖がってるでごじゃろ。魂抜かれるでごじゃろ!」
「そーよそーよ! あちしだって戻りたい……もう消えてもいーい?」
「リーサルレデク!」
「いやーーー!」

 コラーダがギリギリと赤い閃光を発して手元から離れる。
 望み通り手元から消してやったぞ、コラーダよ。
 ……リーサルレデクは回避されたことがほぼ無い。
 しかし……回避ではなく触角で受け止め切られた! 信じられない、何て奴だ。
 
「剣戒….驚、懼、疑、.惑! やはり三本しか出ないか。リーサルレデク・ターナリー!」

 三本の産み出されたコラーダを指の間で挟むように持ち、リーサルレデクをぶっ
放す。
 それらはギリギリと手元を離れ、赤い閃光をかざして、まるで三角形を描くよう
にしてタルタロスへと解き放たれる。
 
「四門地獄」
「なっ!?」

 三本のリーサルレデクは、タルタロスが保有する玉へと飲み込まれていた。
 その光景に映し出されていたのは、無数の剣が突出する林のような場所。
 何だ? この能力は。

「お前はやはり運が無い。よりによってこの地獄か」
「一体何を言っている。勝負はまだこれから……」

 言いかけた途端、風景が先ほどあの玉に映し出されていたような景色へ変貌している! 
 バカな……ここはヒューメリーの領域だったのだろう? 
 領域を越えて違う空間でも持ってきたってのか。
 それか俺があの玉を覗き見たから幻覚を見せられた!? 

「剣戒……剣は戻るか。それなら幻覚じゃないな」
「ここは四門地獄、位置は剣葉林。動けば身を斬る林だ。さぁどうする?」

 周囲一帯が鋭い刀の集合体。確かに身動きが取れない。
 開いてるのは上空だが、上空はあの触角の餌食だろう。
 俺が絶魔で放てる幻術を駆使するか、或いは……ラモトでの奇襲か。
 奴は動いていない。
 まずはあの触角を防ぎつつ周囲の剣林をどうにかするのが先だろう。
 
「両星の殺戮群……来い!」

 赤と黒のヒトデ群をその場に招来し、剣の林を食うように指示する。
 奴らは直ぐに行動を開始し、美味しそうに剣を丸のみにしていく。
 だが……「その能力では食えんぞ」
「何?」

 ヒトデたちは剣を頬張り、その場で次々と消滅していった。
 剣を吸収出来ていない? これじゃ能力の無駄遣いだ。
 しかも奴はこちらの能力を探るような動きしかみせていない。
 この状況を見て、タナトスが茶々を入れ始めた。
 
「もー、しょうがないな。四門地獄まで出して。大人げないよタルタロス!」
「……試合は試合だ。お前は黙っていろ」
「これじゃどうあがいても太刀打ち出来ないでしょ。ヒントを上げるよ。彼の産み出した
この地獄に構わない方がいい。構ってる暇があったら本体を叩くんだ」
「それは、ヒントって言わないだろ。こんな林で戦闘したらバラバラに……」

 いや待てよ。そうか、それなら条件を変えてやればいいか。

「妖氷雪造形術……冬の嵐!」

 凍てつくような猛吹雪を放出させ、周囲一帯を凍らせる。
 ヒューメリーが寒そうに身を更にもふもふで包むのが一瞬見えた。
 
「なかなかの氷量だ。地獄でも使えそうだな」
「そんな場所で働くつもりはない! 行くぞ、タルタロス!」

 剣の林を丸ごと凍らせたそのときだった。
 封印にしまったベリアルが姿を現した。ようやくかよ。

「くそ、色々と危ねえとこだった! なんだあのげろ不味い飲み物はよ!」
「遅いぞおい。行くぞベリアル」
「思い切りぶん殴ってやるぜタルタロス!」

 再度現れたベリアルは現在鳥の状態。
 ここからが巻き返しの時間だ! 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...