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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百六十一話 知の魔、謎深き部屋の中で、答え 辿り着きし七階層
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隣の部屋に移った俺たち。
そこでタナトスは、意気揚々と喋り出した。
「タナトス。お前が一番楽しんでいるようにみえるんだが……」
「そんなことはないよ。でも本当に分かったんだ。これはきっと一と二だね」
「一と二がなんだって?」
「ほら、さっきの数値を入力するところに入れる数字だよ」
「……ベルド。どう思う?」
「……一と二というのは何処から用いたんだい?」
「イチエイって奴とレンジって奴の会話だよ。だからイチとジで一と連なる二」
「その数字を利用するのは分かるが、それってどの辺に知を使ってるんだ?」
……いや、聞くだけ無駄なのは分かっているんだが。
恐らくこれは会話文の中にヒントが隠されているということだろう。
俺とベルドの話を聴かず、タナトスは入力を開始していた。
しかし何も起こらないようだ。
「なぁ。此処へは僕と君だけで来た方が良くなかったか?」
「そうだな。俺も後悔しているよ……」
更にいじろうとするタナトスを、ベルドに踏み潰してもらい、二人で考え始める。
「まず僕の考えを聞いてもらえるかい?」
「ああ。俺が解いてる間に数値のことを考えていたんだろう?」
コクリと頷くベルド。
ベルドの素晴らしいところは、冷静な判断力と洞察力だ。
俺が謎を解いている間にずっと考えていたのだろう。
「まず数値は四つ入力しなくてはならない。入力出来る数値はゼロから九だ。これまでの
工程で恐らく全ての数値に関する情報があったはずだよ」
「それは同感だ」
「え? 一と二しか無かったよね?」
「お前は少し黙ってろ。ややこしくなるから」
「冷たいなぁ……」
お前が言うかと突っ込みたかったが、話がこじれるので放っておく。
「まず三番目は七だろうね」
「ああ。それは同意見だな。三番手は七回打ち合い、地にひれ伏す。分かり易いヒントだ」
「次に四番目だけど、紙に書いてあった悪霊四度目の死だから、四番目は四かな」
「三番目と四番目はそれで入力してみよう。問題は一番と二番だ」
悪霊にとり憑かれていたタナトスはきょとんとしている。
まぁ、こいつは分からないだろうけど。何せ裏をみていない。
「次が問題だ。一と二ってタナトスが言ってたけど、本当にそうだと思う?」
「いいや、安直だろう。会話内容からしてそれはない一番目と二番目の入力箇所と推測
するのが正しいだろう」
「ええー? だって他に数値らしいものって無いよね」
「それはそうなんだが……」
「これは一つの戦いにおける物語なんじゃないかな。剣、斧、弓、杖による戦い。杖は
勝利したが悪霊にとり憑かれ、戒律を乱した。しかしそれに恥じることなく戦ったこと
に誇りを持ち……」
「待てよ、戒律を乱しても恥じることなく……何か引っかかるな……」
……くそ、ヒントはあるはずなんだが。
「結局死んだんじゃないのかい? それって」
「だが、恥じることはなかったのだろう? 残酷だとしてもそれならば本会は遂げたん
じゃないのか」
「無惨だ」
「えっ?」
「それを人は無惨、或いは無残と呼ぶ。つまり……」
「答えは六と三で無残。恐らくはそれだ」
「それぞれが一と連なる二に来るって意味か。鋭いね」
「……物語の結末としては、気に入らないな」
「どうしてだい? ……ああ。そういうことか」
「何だい。私だけのけものにしないで教えてよ」
「ム、ザン、ナ、死。無惨な死ってことさ。結局タナトスが言っていたような、それぞれ
の武器が最終的に掟に負けたっていう状況なのかもしれないね」
「その状況を見て、無惨な死と考える神がいたのか、或いは人か。何れにしてもそれが無
惨であるかなど、指摘しても無駄なことだろう」
死んだものは哀れんで欲しかったわけじゃない。
目的のために戦った。ただ、それだけのはずだから。
――数値を入力すると、部屋が全て解体されて変な奴が現れた。
大きな布袋に入ったコウモリのような姿のソレは、キーキーと悔しそうな声を挙げてい
る。
「キーキー。楽しい結末にならなくて残念だよー」
「何度か失敗して戦いになったけどな。全部こいつのせいだ」
「私は戦闘なんて起こらないって聞いてたんだけどね」
「キーキー。何が起こるかは挑戦者次第。それよりほら、ご褒美だよ」
そいつは布から四つの品物を投げてよこした。
それは……杖と剣と斧と弓。
先ほどの話で出ていたものか。
「俺は全部必要ない。ベルドが持っていって構わないよ」
「いいのか? どれも貴重そうなものにみえるけど」
「俺がこれ以上武具を手にしてもな。持ってってくれよ」
「とはいっても全部は持っていけないし、僕も槍使いだから」
「それならパモ君に預けておけばいいんじゃない?」
「そうするか……」
「キーキー。何だ収納出来るものがないのか。仕方ないな。四つだけ入れておける
この袋を上げるよ」
そう言うと、片手程度の大きさしかない袋を投げて寄越した。
何だこれ? こんなものに入りきらないだろうに。
「それにしまっておけるよ。試してみな。それじゃあばよ。もうお前らには会いたくない
ネ!」
捨て台詞だけ残して消えていくそいつは、名前すら名乗らなかった。
「本当だ。四つ全て入った。もし適任者がいたら君の仲間にそれぞれ渡しておこう。
それでいいかい?」
「ああ。それで問題無い。それじゃベルド……名残惜しいがまた会おう」
「ああ。君といた時間、楽しかったよ。また会おう」
一階の破壊した扉から外へ出ると……二階層より上はいつの間にか元に戻っていた。
ベルドは海に向かうと……姿を変え、あっという間に見えなくなってしまう。
以前は人魚の姿になれないと聞いた気もするが、成長したのだろうか。
「さぁ今度はいよいよ七階層。覚悟はいい?」
「さっさと行くぞ。時間が惜しい」
待機していたヒューメリーを連れ、急いで七階層まで登っていく。
最上階、かなりの高さだ。
よくこんなところまでぶち抜ける技を放ったな……その力、恐ろしくすらある。
そこでタナトスは、意気揚々と喋り出した。
「タナトス。お前が一番楽しんでいるようにみえるんだが……」
「そんなことはないよ。でも本当に分かったんだ。これはきっと一と二だね」
「一と二がなんだって?」
「ほら、さっきの数値を入力するところに入れる数字だよ」
「……ベルド。どう思う?」
「……一と二というのは何処から用いたんだい?」
「イチエイって奴とレンジって奴の会話だよ。だからイチとジで一と連なる二」
「その数字を利用するのは分かるが、それってどの辺に知を使ってるんだ?」
……いや、聞くだけ無駄なのは分かっているんだが。
恐らくこれは会話文の中にヒントが隠されているということだろう。
俺とベルドの話を聴かず、タナトスは入力を開始していた。
しかし何も起こらないようだ。
「なぁ。此処へは僕と君だけで来た方が良くなかったか?」
「そうだな。俺も後悔しているよ……」
更にいじろうとするタナトスを、ベルドに踏み潰してもらい、二人で考え始める。
「まず僕の考えを聞いてもらえるかい?」
「ああ。俺が解いてる間に数値のことを考えていたんだろう?」
コクリと頷くベルド。
ベルドの素晴らしいところは、冷静な判断力と洞察力だ。
俺が謎を解いている間にずっと考えていたのだろう。
「まず数値は四つ入力しなくてはならない。入力出来る数値はゼロから九だ。これまでの
工程で恐らく全ての数値に関する情報があったはずだよ」
「それは同感だ」
「え? 一と二しか無かったよね?」
「お前は少し黙ってろ。ややこしくなるから」
「冷たいなぁ……」
お前が言うかと突っ込みたかったが、話がこじれるので放っておく。
「まず三番目は七だろうね」
「ああ。それは同意見だな。三番手は七回打ち合い、地にひれ伏す。分かり易いヒントだ」
「次に四番目だけど、紙に書いてあった悪霊四度目の死だから、四番目は四かな」
「三番目と四番目はそれで入力してみよう。問題は一番と二番だ」
悪霊にとり憑かれていたタナトスはきょとんとしている。
まぁ、こいつは分からないだろうけど。何せ裏をみていない。
「次が問題だ。一と二ってタナトスが言ってたけど、本当にそうだと思う?」
「いいや、安直だろう。会話内容からしてそれはない一番目と二番目の入力箇所と推測
するのが正しいだろう」
「ええー? だって他に数値らしいものって無いよね」
「それはそうなんだが……」
「これは一つの戦いにおける物語なんじゃないかな。剣、斧、弓、杖による戦い。杖は
勝利したが悪霊にとり憑かれ、戒律を乱した。しかしそれに恥じることなく戦ったこと
に誇りを持ち……」
「待てよ、戒律を乱しても恥じることなく……何か引っかかるな……」
……くそ、ヒントはあるはずなんだが。
「結局死んだんじゃないのかい? それって」
「だが、恥じることはなかったのだろう? 残酷だとしてもそれならば本会は遂げたん
じゃないのか」
「無惨だ」
「えっ?」
「それを人は無惨、或いは無残と呼ぶ。つまり……」
「答えは六と三で無残。恐らくはそれだ」
「それぞれが一と連なる二に来るって意味か。鋭いね」
「……物語の結末としては、気に入らないな」
「どうしてだい? ……ああ。そういうことか」
「何だい。私だけのけものにしないで教えてよ」
「ム、ザン、ナ、死。無惨な死ってことさ。結局タナトスが言っていたような、それぞれ
の武器が最終的に掟に負けたっていう状況なのかもしれないね」
「その状況を見て、無惨な死と考える神がいたのか、或いは人か。何れにしてもそれが無
惨であるかなど、指摘しても無駄なことだろう」
死んだものは哀れんで欲しかったわけじゃない。
目的のために戦った。ただ、それだけのはずだから。
――数値を入力すると、部屋が全て解体されて変な奴が現れた。
大きな布袋に入ったコウモリのような姿のソレは、キーキーと悔しそうな声を挙げてい
る。
「キーキー。楽しい結末にならなくて残念だよー」
「何度か失敗して戦いになったけどな。全部こいつのせいだ」
「私は戦闘なんて起こらないって聞いてたんだけどね」
「キーキー。何が起こるかは挑戦者次第。それよりほら、ご褒美だよ」
そいつは布から四つの品物を投げてよこした。
それは……杖と剣と斧と弓。
先ほどの話で出ていたものか。
「俺は全部必要ない。ベルドが持っていって構わないよ」
「いいのか? どれも貴重そうなものにみえるけど」
「俺がこれ以上武具を手にしてもな。持ってってくれよ」
「とはいっても全部は持っていけないし、僕も槍使いだから」
「それならパモ君に預けておけばいいんじゃない?」
「そうするか……」
「キーキー。何だ収納出来るものがないのか。仕方ないな。四つだけ入れておける
この袋を上げるよ」
そう言うと、片手程度の大きさしかない袋を投げて寄越した。
何だこれ? こんなものに入りきらないだろうに。
「それにしまっておけるよ。試してみな。それじゃあばよ。もうお前らには会いたくない
ネ!」
捨て台詞だけ残して消えていくそいつは、名前すら名乗らなかった。
「本当だ。四つ全て入った。もし適任者がいたら君の仲間にそれぞれ渡しておこう。
それでいいかい?」
「ああ。それで問題無い。それじゃベルド……名残惜しいがまた会おう」
「ああ。君といた時間、楽しかったよ。また会おう」
一階の破壊した扉から外へ出ると……二階層より上はいつの間にか元に戻っていた。
ベルドは海に向かうと……姿を変え、あっという間に見えなくなってしまう。
以前は人魚の姿になれないと聞いた気もするが、成長したのだろうか。
「さぁ今度はいよいよ七階層。覚悟はいい?」
「さっさと行くぞ。時間が惜しい」
待機していたヒューメリーを連れ、急いで七階層まで登っていく。
最上階、かなりの高さだ。
よくこんなところまでぶち抜ける技を放ったな……その力、恐ろしくすらある。
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