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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会
第八百四十六話 そして……地中ではなかった
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「ガボガボガボボボ……ブハッ、はぁ……はぁ。何で海の中なんだよ!」
「ボボボボ……ブハッ。ちょ、助けて、泳げない、ブクブクブク……」
「浮かぶー。ターにぃ、大丈夫ー?」
「しょうがねえな! 自分で設定しておいて沈むなよ。しかも死の管理者なのに金づちと
か……本気か? 闘技大会のときあんな動きしてたってのに」
「げほっ……げほっ……仕方ないだろ。苦手なものくらい誰にだってある。それに地上
じゃただの魔族とかとあんまり変わらないんだから」
「へぇ……思ったよりまともな一面もあるじゃないか……それで、ヒューメリーは海上で
何で浮いてるんだ?」
「さぁ……」
「だえー。ここでも眠れるー。でも海水冷たいー」
「はぁ……此処はどの辺りだ。全然見覚え無いっていうか辺り一面海だけど」
「うーん……さぁ?」
「お前、わざとやっただろ……」
「違うよ! だから時間をかけて設定し直す必要があったんだよ」
「どのくらいかかりそうだったんだ? 今から戻ってやり直すほうがいい」
「そうだなぁ。二年くらいかな」
「こいつらの時間間隔……! はぁ。アメーダ、プリマ! 出てきてくれ! というか
ずっとみてたんだろ?」
「承知したのでございます。うふふふ」
「あれ、プリマは?」
「海が嫌だそうでございます。それで、どうするのでございますか?」
「海の上に氷を張れるか? そしたらバネジャンプで高く跳んでみる」
「承知したのでございます。氷臥斗!」
正しい氷臥斗の使い方だ。俺が使った氷臥斗の使い方は間違っていた。
海面にそれなりの厚みを帯びた氷が形成されていく。
さすがはアメーダだ。
我が国のメンバーはアネさんにしろアメーダにしろ、上手く氷を扱えるものが少しいる。
アネさんの場合は妖術の氷なので少々異なるわけだが。
俺のター君が使う術も妖術の部類だ。
つまり純粋な幻氷術であるならアメーダが一番かもしれない。
メルザも氷術は使えたが、それほど得意な方ではなかった。
火が一番得意だったんだろうな。
「よし。それじゃ……バネジャンプ!」
出来上がった氷の塊で高く飛翔してみると……どうみてもトリノポート大陸が見当たらない。
代わりに見えたもの、それは……七壁神の塔と言われるあの建物だけだった。
「……おい。俺たちは非常にまずい場所であることが分かったぞ」
「何処だったんだい?」
「七壁神の塔ってところの近くだ。つまりここからトリノポートは信じられないくらい遠
い」
「そう。困ったね」
「だからタナトスの領域へ戻ろう」
「ご免、それは無理」
「……おいおいタナトスさんや。今、何て言ったんだい?」
「ご免、それは無理」
こいつ! 一体何を言ってるんだ? 今さっき出て来たところへ戻れないとはどうい
うことだ。
俺はやはりタナトスが苦手らしい。
喋り方こそリルに近く親しみやすい雰囲気もあるのだが、まるで違う。
こいつはリルより遥かに冷たい感じだ。
「……何故無理なのか、まず聞こうか」
「ええと、ここが陸じゃないというのがまず一つ」
「ほうほう。氷の上ならいいよな?」
「氷の上でも駄目だね。そして二つ目。急いで場所を変えたから、何処が領域の場所か分
からなくなった」
「それはお前が探せるよな?」
「それも難しいかな。海の中だし、さっきもいったけど泳げないから」
「ふ、ふーん。そうするとあれか? 俺が潜って探せばいけるか?」
「それも無理。私にしか探せないから。石ころとかじゃないんだよ」
「あら。あなた様、珍しく顔が引きつっているのでございます。これは貴重なお顔でござ
いますね」
「怒ってるの! そういう大事なことは早く言え! どーすんだ俺たち。このままじゃ飢
え死にだぞ!」
「はっはっは。死の管理者は飢え死になんてしないよ―。死ぬのは君だけだからいだだだ
だだだっ。ほっぺを引っ張らないでよ。こんなに痛いんだね、知らなかった」
「もういい。七壁神の塔とやらに行くぞ」
「まぁ、それしかないよね。そうそう、はいこれ」
「なんだ? 小さい鉄格子の模型? これは……おい! あの女が入ってるのか!」
「いけないのでございます! あなた様、それはアメーダに!」
一瞬にして渡された小さな鉄格子をアメーダが奪う。
にしてもどうなってるんだ。小さくなっていたけど。
「ヒューの力で小さくしたんだ。あのまま持ち運べないからね。それも連れて行こう」
「いや、何で置いてこなかったんだ……危険だろ、そいつ」
「多分案内役になると思うからさ」
「案内役って何のだよ」
「だから、七壁神の塔だよ。これから向かうんでしょ?」
「そのつもりだが……さてはお前、最初からそうさせるつもりだったのか?」
「まさか。そんなわけないよ。だってほら、金づちだし」
「……まぁいいか。泳いで結構あ……」
決意して七壁塔へ向かうことを考えたそのときだった。
クジラ程の巨大な何かが海から突如現れた!
「いきなり水上バトルかよ! くそ、足場が足りない! アメーダ、もっと増やせるか!?」
「あなた様。辺り一面粉砕されるだけでございます! それより違う方法を!}
「やばい。これは考えて無かった事態だ。助けて」
「タナトス! お前少しはどうにかしろ! それでも死の管理者なのか!」
「わかったよ! 爆輪!」
手首にはめた輪をでかいクジラもどきに叩き込むタナトス。
しかし……「ギュラアアアアアアアアアアアア!」
「おい! 怒らせたぞ!」
「あれ。あまり効いてないね」
「冷静に言ってる場合か! しょうがない……」
【絶魔】
「ボボボボ……ブハッ。ちょ、助けて、泳げない、ブクブクブク……」
「浮かぶー。ターにぃ、大丈夫ー?」
「しょうがねえな! 自分で設定しておいて沈むなよ。しかも死の管理者なのに金づちと
か……本気か? 闘技大会のときあんな動きしてたってのに」
「げほっ……げほっ……仕方ないだろ。苦手なものくらい誰にだってある。それに地上
じゃただの魔族とかとあんまり変わらないんだから」
「へぇ……思ったよりまともな一面もあるじゃないか……それで、ヒューメリーは海上で
何で浮いてるんだ?」
「さぁ……」
「だえー。ここでも眠れるー。でも海水冷たいー」
「はぁ……此処はどの辺りだ。全然見覚え無いっていうか辺り一面海だけど」
「うーん……さぁ?」
「お前、わざとやっただろ……」
「違うよ! だから時間をかけて設定し直す必要があったんだよ」
「どのくらいかかりそうだったんだ? 今から戻ってやり直すほうがいい」
「そうだなぁ。二年くらいかな」
「こいつらの時間間隔……! はぁ。アメーダ、プリマ! 出てきてくれ! というか
ずっとみてたんだろ?」
「承知したのでございます。うふふふ」
「あれ、プリマは?」
「海が嫌だそうでございます。それで、どうするのでございますか?」
「海の上に氷を張れるか? そしたらバネジャンプで高く跳んでみる」
「承知したのでございます。氷臥斗!」
正しい氷臥斗の使い方だ。俺が使った氷臥斗の使い方は間違っていた。
海面にそれなりの厚みを帯びた氷が形成されていく。
さすがはアメーダだ。
我が国のメンバーはアネさんにしろアメーダにしろ、上手く氷を扱えるものが少しいる。
アネさんの場合は妖術の氷なので少々異なるわけだが。
俺のター君が使う術も妖術の部類だ。
つまり純粋な幻氷術であるならアメーダが一番かもしれない。
メルザも氷術は使えたが、それほど得意な方ではなかった。
火が一番得意だったんだろうな。
「よし。それじゃ……バネジャンプ!」
出来上がった氷の塊で高く飛翔してみると……どうみてもトリノポート大陸が見当たらない。
代わりに見えたもの、それは……七壁神の塔と言われるあの建物だけだった。
「……おい。俺たちは非常にまずい場所であることが分かったぞ」
「何処だったんだい?」
「七壁神の塔ってところの近くだ。つまりここからトリノポートは信じられないくらい遠
い」
「そう。困ったね」
「だからタナトスの領域へ戻ろう」
「ご免、それは無理」
「……おいおいタナトスさんや。今、何て言ったんだい?」
「ご免、それは無理」
こいつ! 一体何を言ってるんだ? 今さっき出て来たところへ戻れないとはどうい
うことだ。
俺はやはりタナトスが苦手らしい。
喋り方こそリルに近く親しみやすい雰囲気もあるのだが、まるで違う。
こいつはリルより遥かに冷たい感じだ。
「……何故無理なのか、まず聞こうか」
「ええと、ここが陸じゃないというのがまず一つ」
「ほうほう。氷の上ならいいよな?」
「氷の上でも駄目だね。そして二つ目。急いで場所を変えたから、何処が領域の場所か分
からなくなった」
「それはお前が探せるよな?」
「それも難しいかな。海の中だし、さっきもいったけど泳げないから」
「ふ、ふーん。そうするとあれか? 俺が潜って探せばいけるか?」
「それも無理。私にしか探せないから。石ころとかじゃないんだよ」
「あら。あなた様、珍しく顔が引きつっているのでございます。これは貴重なお顔でござ
いますね」
「怒ってるの! そういう大事なことは早く言え! どーすんだ俺たち。このままじゃ飢
え死にだぞ!」
「はっはっは。死の管理者は飢え死になんてしないよ―。死ぬのは君だけだからいだだだ
だだだっ。ほっぺを引っ張らないでよ。こんなに痛いんだね、知らなかった」
「もういい。七壁神の塔とやらに行くぞ」
「まぁ、それしかないよね。そうそう、はいこれ」
「なんだ? 小さい鉄格子の模型? これは……おい! あの女が入ってるのか!」
「いけないのでございます! あなた様、それはアメーダに!」
一瞬にして渡された小さな鉄格子をアメーダが奪う。
にしてもどうなってるんだ。小さくなっていたけど。
「ヒューの力で小さくしたんだ。あのまま持ち運べないからね。それも連れて行こう」
「いや、何で置いてこなかったんだ……危険だろ、そいつ」
「多分案内役になると思うからさ」
「案内役って何のだよ」
「だから、七壁神の塔だよ。これから向かうんでしょ?」
「そのつもりだが……さてはお前、最初からそうさせるつもりだったのか?」
「まさか。そんなわけないよ。だってほら、金づちだし」
「……まぁいいか。泳いで結構あ……」
決意して七壁塔へ向かうことを考えたそのときだった。
クジラ程の巨大な何かが海から突如現れた!
「いきなり水上バトルかよ! くそ、足場が足りない! アメーダ、もっと増やせるか!?」
「あなた様。辺り一面粉砕されるだけでございます! それより違う方法を!}
「やばい。これは考えて無かった事態だ。助けて」
「タナトス! お前少しはどうにかしろ! それでも死の管理者なのか!」
「わかったよ! 爆輪!」
手首にはめた輪をでかいクジラもどきに叩き込むタナトス。
しかし……「ギュラアアアアアアアアアアアア!」
「おい! 怒らせたぞ!」
「あれ。あまり効いてないね」
「冷静に言ってる場合か! しょうがない……」
【絶魔】
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