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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百二十五話 試合が始まるのでお戻りを

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 俺が所有するモンスター軍団を見て、ハンニバルは尻もちを着いた。

「て、てめぇ一体何なんだ。何処から出しやがった……くそ、ツチミツチ共! 
作業は中断して全部出てこい! こいつらを殺せ!」
「か、頭……あああ、あれは何ズリ!」
「うそ……何、あの、竜……」
「ガアアアアアアアアア! 近いではないかァ! こんなところに呼び出しおってェ!」
「いや、悪い……リュシアンをさすがに往復させるの悪いなーって思って」

 魂吸竜ギオマは、いつもよりちょっぴり大きいサイズでこちらへ現れた。
 こいつらには途方もなく大きく見える竜なのかもしれないが、ギオマのサイズは
こんなものではない。練習の賜物だ。

「むゥ。地面にいるモンスター共ォ。我の着地箇所を開けよォ!」

 地面から飛び出て来た複数のツチミツチを踏み潰して蹂躙するギオマ。
 足が埋まったように見えるのは気のせいだろうか。
 俺は腰を抜かしているハンニバルにラーンの捕縛網を向ける。

「ラーンの捕縛網、モードジェネスト」
「切り刻んで差し上げましょう」
「ぐっ……こんなやべえ奴、みたことねえ……」

 ジェネストの捕縛網は六指の剣で対象を封じる。
 動けば切り刻まれていくのは言うまでもない。

「こ、降参だ。おめえらの国にはいかねえ。何もまだしてねえだろ!?」
「いや? カバネとヒージョっていうお前らの部下が既にやらかしてる。
命令したのはお前だろう。王女誘拐未遂と看板泥棒だけど」
「か、看板なんざ盗めとは言ってねぇ。王女をさらえば大会賞金よりも金を取れると
思っただけだ」
「俺が昔いた国じゃさ。金を払えばどんな悪党でも釈放されるような仕組みがあったんだよ。
それがアホみたいに金を稼いでるやつが、金を稼ぐ仕組みで悪事を働いても許されたわけだ。
意味がわからないと思わないか?」
「ど、どういうことだ。金払えば見逃すってことか?」
「お前には金というものが何なのか学ばせる必要があるな」
「こ、こいつ狂ってやがる。空賊は奪い取るのが仕事だぜ。そんな……」
「んな仕事ねーよバカが。略奪を仕事なんて言うな。金で解決することが間違ってるんだよ。
金で済んだら反省するんじゃなく、もっとばれないように悪事を働くだけだろうが」
「ならどうしろってんだ。他の国でも攻めて献上しろってのか?」
「お前らには法を設けて俺の下で働いてもらう。全員に枷を装着してな」
「奴隷にするつもりか!?」
「奴隷? 奴隷ってのは違うな。そりゃ人身売買のことだろう? お前たちを
売るつもりも買うつもりもない。おかした罪を国……いや、大陸の発展として用いらせてもら
う。ギオマ! こいつら全員連れて行きたいんだが、乗せられるか?」
「無論だァ。我を誰だと思っているゥ。この変な乗り物はいいのかァ?」
「それはそのうち必要になるだろ。後でライラロさんにでも回収してもらうからいいよ」
「それより貴様ァ。早く戻らぬと試合が始まるぞォ」
「やべっ。そうだった! プリマ、急いで戻るぞ!」
「えー。プリマはギオマに乗っていくの嫌だぞ」
「ガッハッハッハァ。何をいうかァ。また耳を撫でて欲しいのだろうがァ」
「痛いから嫌だ!」
「私が乗せて行こうか? キメラでも戻れるでしょ?」
「おいおい。時間かかり過ぎるって。文句言わずいくぞ、プリマ」
「ちぇ。わかったよ」
「私はもう敗退してるし、キメラで乗り方を練習してから戻るわ。この辺りも
見ていきたいし」
「ミレーユ。西側はダメだ。そうだな……ついでにジャンカの町南東を見て来てくれないか? 
あちら側の開拓は、山脈が多くて進んでないんだよ」
「わかったわ。それなら町方面だし、エンシュも誘ってみようかな。そろそろ立ち直ってるわ
よね」
「そうだな。それじゃギオマ、頼むよ。おっと、全員封印に戻れ」

 モンスター集団を戻すと、ギオマに飛び乗る。
 こいつらの出番はもっと後だろう。
 何せこいつらの出来事なんてただの茶番みたいなものだ。
 気がかりなのは大会に出場していた覚者、頭飾りの女、輪っか使いの男、そして
ルッツというウェアウルフだ。
 
「直ぐに到着するぞォ。しっかりつかまっていろォ!」

 ギオマは空高く飛翔すると――轟音を立てて直ぐに三夜の町があった付近へと
到着する。
 早すぎる! 俺は何てやつを仲間にしてしまったんだ……。
 ――町に到着すると、ひとまず捕らえた者はルジリトたちに託し、直ぐに闘技場へ向か
う。
 選手は皆集まっており、開会を今か今かと待っているところだった。

「危ね……どうにか間に合った」
「あなた様。少し引き延ばしていたのでございますよ。既に一回戦の対戦相手が発表され
ているのでございます」
「トーナメント表は……あれか。初戦が俺? えーと対戦相手は……」
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