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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百二十七話 メイショウ対ルイン・ラインバウト。お前が全てを守るのか?

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 試合開始と同時にラモトを展開する。
 まずは様子見といきたいところだが、あちらが先手を打たないのはわかっていた。
 光に包まれたあの状態。完全に受け身の姿勢。
 そして、何らかの効果を待っている。

「ラモト・シャルシャレット」

 シュルシュルと青白い文字がメイショウへ近づき、鎖が巻き付くように蠢いていく。
 それを意に介さないかのように、こちらを真剣な目で見据えるメイショウ。

「伝書の力で戦うのに慣れていないようですね。見ていなさい。こう使うんですよ。
あなたはその力に頼った方がいい……」

 何をするつもりだ? ラーンの捕縛網程じゃないにしろ、束縛力はあるはずだ。
 くそ、まだ解放させるには早い。

「ラキシュ・パラドメラヒム雹王!」
「何ッ! こいつも伝書の力を!」

 奴は縛られた体で俺の正面に五人の……文字で象った何者かを呼び出す。
 そいつらは天高く手を翳して俺へ向け……ヒョウの塊を降らした! 

「ぐっ……あ、つっ……真化!」
「それはよくない手だ。光調の吸引」
「なっ……真化出来ない!? 粒の一つ一つが何て破壊力だ……」
 
 このままだとまずい! モアユニークの装備じゃ耐えられない!

 装備ががりがりと破壊されていくのが分かる。
 頭部を抑えている腕にめり込んだ雹から出血。
 まずい、このままじゃ試合を止められる。まだ何もしてない! 

「解放!」
「光調の吸引」
「なっ……発動しない!? ……ぐっ……神魔解放!」

 囲まれていたうちの一人を吹き飛ばしてその場から離脱。
 すると雹は収まり、残りの四体も消滅した。
 ……いや、正しくは消した……だ。

「ふぅ……ふぅ……」
「おやおや。良くない出血量だね」
「あーーーっと! メイショウ選手強い! どうしちゃったのルイ……ツイン! まだ試
合始まって間もない出来事に、観客一同茫然です!」
「ちょっと! それでもベルディスの弟子なの! ちゃんと戦いなさい!」
「はぁ……はぁ……言ってくれる、確かに俺は師匠の弟子……まてよ……そうか」
「来ないのかな。それならば今一度」
「シッ……」

 一気に距離を詰めて肉弾戦に打って出る。
 伝書の欠点はその発動までの時間だ。
 互いに余裕ある状況でなら出しやすいが、接近戦になると機能し辛くなる。
 文字が腕を覆ってる間は問題ないはずだ。

「それも、愚策じゃないのかな」
「こんだけ近いと避けられないだろ! 氷塊のツララ!」
「……光調の吸引」
「またかよ! 何なんだその光は」

 一度少し距離を取って仕切り直すが、出血量がやばい。
 これが覚者か。アーティファクト無しでこんな化け物倒せってのか。
 冗談きつい。おまけに神魔解放だけじゃ、こいつのけん制に対応する
ので精いっぱいだ。
 コウテイやアデリーを出してみるか? ……いや、その隙に伝書の力でやられる。
 一体どうすれば……。

「君に一つ教えておこう。私がここへ来た目的は、ベルベディシアの監視。それから君た
ちの監視。シフティス大陸の均衡を乱すわけにはいかない。これ以上絶魔王を増やしては
ならない」
「何言ってんだお前。俺は魔王にすら成ってない」
「いいや君は一度魔王に近しい存在となっている。君自身の力でモンスターを強化しただ
ろう」
「……あれは俺の力じゃ無いと思ってる。ベリアルの……」
「いいや君の力だ。君は自分の危うさをもっと認識すべきだ。この大陸ごと消滅させる程
の力を保有することになる」
「……それじゃ何かい? あんたの忠告を聞けば、全てはあんたが一人で守ってく
れるとでも? この先多くの増えるであろう国民を、命を、土地を。全部あんたが守って
くれるのか?」
「答えはいいえだ。すまない。私一人の力では到底成し得ぬことだ。だがこれ以上……」
「結局、あんたにとって都合のいいことしか言ってない。俺は力を求めてるんじゃない。
襲って来る奴らがいなくなるようにしたいだけだ。だがこの世界はどうだ? 俺を、メル
ザを、仲間を狙う奴らで溢れている。あんたの言うように大人しくしてれば死ぬだけだ。
ふざけるなよ。俺が弱いままだったら、全員見殺しにするだけだろ」

 ……らしくない。こいつに怒りをぶつけてもしょうがないことはわかってる。
 引っかかっていたことは幾つかある。
 大会が始まってからも、その前も。
 応じないベリアル。せっかくメルザが戻って来たのにずっとすっきりしなかった。
 俺だけの力でここまで戦ってこれたわけじゃない。
 ブレディーのことだってそうだ。
 あいつがいたから俺は戦ってこれた。
 今だってきっと、本来ならあいつが戦っていただろう。
 俺に代われと。俺のことを認めながらもあいつは……。

「何で、何で何で黙ってるんだ、ベリアルーーーーーーー!」
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