上 下
897 / 1,085
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百三話 ジャンカ港とおかしな奴ら

しおりを挟む
 ――パモを連れて、闘技大会会場の北側に出た。
 はっきりいってこの周辺は、ジャンカの町となるまで一度も訪れた事が無い。
 海を一望出来る場所だ。
 東側は植え替えた森林が広がり、西側は海を見渡す休憩スペースを設けてある。
 この早朝でも誰かいる程、人気の場所となっている。
 潮風が心地いい……とてもいい場所だ。
 そして……その先に港を建設した。莫大な費用をかけて。
 現在停泊している船が既に三隻もある。
 ここから出発して向かえる先は、ミッドランド島、デイスペル国と、ドラディニア大陸。
 キゾナ大陸へも本来向かえるのだが、現在は渡航禁止。
 ドラディニア大陸へも危険が伴うので、ミッドランド島を迂回して、少し上部から回り込む
形で航行可能。
 更にレグナ大陸やシーブルー大陸、ディマ大陸と、まだ俺が訪れていない大陸にも
向かいたい所なのだが……今はそれら以外の大陸へは危険と考え、調査をお願いしている最中だ。

 北に位置するシフティス大陸へは、海に凶悪なモンスターが出たり、強風が
起こる。それだけではなく海嘯も多く存在する。
 航路としてはとても危険だった……のだが。

 雷帝ベルベディシアの協力により、この航路を得られるかもしれない
話を進めている。

 俺たちはルーン国を通れば問題なく行き来可能だが、一般民をルーン国誰で
通すわけにはいかない。
 そのため、物流は出来る限り航路や陸路を通す必要がある。
 ただし、問題となるのが……北東にかなり進むと見えてくる
七壁神の塔。

 闘技大会が終わったら、俺たちはこの塔の調査へ向かう予定だ。
 危険な塔である場合、海路が使えないままとなってしまう。
 
「相変わらず、やる事一杯だな、パモ」
「ぱーみゅ!」
「それは俺だって? まぁ、そうなんだけど。あの塔の調査が終わったらいよいよ地底だ。
パモ」
「ぱーみゅ!」

 この位置から塔は目視出来ない。だが、ある事は確実なんだ。
 何せ一度、目にはしてるからだ。
 モンスターにも襲われた経験もある。
 だからこそ、準備は万全にしていかないと。

 ――港まで足を運ぶと、乗り物でやって来た奴らがちょうど居た。
 闘技大会ギリギリにルーンの町へ来ても、もう宿は空いてないだろうに。
 ちゃんと予約してあるのか? 
 それにその乗り物。どう見ても海に停泊させるタイプじゃない。

「おいあんたら。その乗り物、空用のじゃないのか?」
「そ、そうズラ。ちょっと落っこちて……危なかったズラ」
「全くあんたは! まともに運転も出来やしないのかい?」
「仕方ないズラ。モンスターに襲われたズラ」
「おいおい、大丈夫か? 修理出すんなら伝えておくけど。
ここは船以外停泊禁止。動かせそうか」
「無理ズラ。お願いズラ。ここに止めて欲しいズラ!」
「あれ、ルインさんじゃないですか。お久しぶりです!」
「おや、君は……モラコ族の」
「モータです。以前はその……すみませんでした!」
「以前? はて……」
「その。失礼な発言を」
「そうだったか? もしそうなら、その非礼を詫びる気持ちを持った
だけで、モータは大きく成長したんだろう。それだけで十分だよ」
「……本当に大きい器ですね。それで、この人たちがちょっと困った
事になってて。今相談を向かわせようとしてたんです」
「こっちは引き受けるよ。あんたら、これ動かせないのか?」
「見りゃわかるだろ。ぴくりとも動かないよ」
「ふうん。まぁいいや。そのまま乗ってな。邪魔だから俺が動かすわ」
『えっ?』

【真化、神魔解放、獣化】
「よいしょっと……重てーな!」

 まぁ小型の飛行用乗り物なんて、持てないわけじゃない。
 跳ぶか。

「おいあんたら。そのまま降りるなよ。跳ぶから。バネジャンプ!」
『えぇーーー!?』

 大きく飛び跳ねて町の外に出ると、そのまま何度か跳んでようやく乗り物を収容
する場所まで来る。
 そんな驚く事か? 俺の仲間なんて空をブンブン飛んでるぞ。
 未だに空を飛ぶルインとはいかない。
 こちとらフリーフォールまっしぐらだよ。
 別に悲しくはない。
 俺はパワーで攻める! 
 確かにこの形態、力はあるが、いきなりそんな力が着くわけは無い。
 当然利用しているのはアーティファクトの力だ。
 そのパワーもギオマたちに遥かに負けてるけど。

「はい。ちゃんとここに止めてね。お金かかるけど」
「……わかったズラ」
「驚いた……一体何者なの……」
「大会は二日後だ。もう宿屋空いてないと思うぞ?」
「ここで寝泊まりズラ。町にはこれから向かうズラ」
「修理を依頼するにしてもまだ鍛冶が行える者が来ていないだろう。
少しそこで休んでから町に行くといい。それじゃな」
「有難うズラー! 行ったズラ……どうするズラ。作戦失敗ズラ」
「参ったね。なんだいあの化け物。あんなのが大会に出場してるってのかい? 
誰だい、トリノポートなんてへなちょこしかいないって言ってたのは」
「親分ズラ。困ったズラ。作戦考え直しズラ……げっ。金貨二枚ズラ……」
「あんたが払いなよ」
「酷いズラー! これじゃ食事も食べられないズラー!」
「しょうがないねえ。半分だけ出してやるよ。今騒ぎを起こすわけにはいかないから
ねえ……」
「よかったズラ……いや、全然よくないズラ! 何で止めておくだけでこんなに
取られるズラ?」
「知らないよ。防犯のためか……随分と念入りな事だね。それにしてもこの町、どう
なってるんだい? 女の勘だが、嫌な予感するね……」
「ヒージョは女とは思えないズラ」
「何言ってんだい! 蹴とばすよ!」
「蹴とばしながら言わないで欲しいズラ!」

 これが、ルインと彼らの初めての出会いだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【R18完結】愛された執事

石塚環
BL
伝統に縛られていた青年執事が、初めて愛され自分の道を歩き出す短編小説。 西川朔哉(にしかわさくや)は、執事の家に生まれた。西川家には、当主に抱かれるという伝統があった。しかし儀式当日に、朔哉は当主の緒方暁宏(おがたあきひろ)に拒まれる。 この館で、普通の執事として一生を過ごす。 そう思っていたある日。館に暁宏の友人である佐伯秀一郎(さえきしゅういちろう)が訪れた。秀一郎は朔哉に、夜中に部屋に来るよう伝える。 秀一郎は知っていた。 西川家のもうひとつの仕事……夜、館に宿泊する男たちに躯でもてなしていることを。朔哉は亡き父、雪弥の言葉を守り、秀一郎に抱かれることを決意する。 「わたくしの躯には、主の癖が刻み込まれておりません。通じ合うことを教えるように抱いても、ひと夜の相手だと乱暴に抱いても、どちらでも良いのです。わたくしは、男がどれだけ優しいかも荒々しいかも知りません。思うままに、わたくしの躯を扱いください」 『愛されることを恐れないで』がテーマの小説です。 ※作品説明のセリフは、掲載のセリフを省略、若干変更しています。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

【R18】超女尊男卑社会〜性欲逆転した未来で俺だけ前世の記憶を取り戻す〜

広東封建
ファンタジー
男子高校生の比留川 游助(ひるかわ ゆうすけ)は、ある日の学校帰りに交通事故に遭って童貞のまま死亡してしまう。 そして21XX年、游助は再び人間として生まれ変わるが、未来の男達は数が極端に減り性欲も失っていた。対する女達は性欲が異常に高まり、女達が支配する超・女尊男卑社会となっていた。 性欲の減退した男達はもれなく女の性奴隷として扱われ、幼い頃から性の調教を受けさせられる。 そんな社会に生まれ落ちた游助は、精通の日を境に前世の記憶を取り戻す。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます!

遥 かずら
ファンタジー
 ガチャスキルを持つアック・イスティは、倉庫番として生活をしていた。  しかし突如クビにされたうえ、町に訪れていたSランクパーティーたちによって、無理やり荷物持ちにされダンジョンへと連れて行かれてしまう。  勇者たちはガチャに必要な魔石を手に入れるため、ダンジョン最奥のワイバーンを倒し、ドロップした魔石でアックにガチャを引かせる。  しかしゴミアイテムばかりを出してしまったアックは、役立たずと罵倒され、勇者たちによって状態異常魔法をかけられた。  さらにはワイバーンを蘇生させ、アックを置き去りにしてしまう。  窮地に追い込まれたアックだったが、覚醒し、新たなガチャスキル【レア確定】を手に入れる。  ガチャで約束されたレアアイテム、武器、仲間を手に入れ、アックは富と力を得たことで好き勝手に生きて行くのだった。 【本編完結】【後日譚公開中】 ※ドリコムメディア大賞中間通過作品※

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

処理中です...