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第五章 親愛なるものたちのために

間話 閉ざされた大陸からの参加者

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 ――ここは辺境の大陸として知られるレグナ大陸。
 きりたった高地にあるその場所へは、海路が通じておらず、立ち入ろうとするものは
極めて僅か。
 ドラディニア大陸程では無いが、住まう竜種もおり、文化も独特なものが
ある地域。
 そのある場所には、ある組織があった。
 その一角に集まる者たちはこう話していた。


「お頭。聞いたか? 異国から来たおっさんがよ。トリノポートででっけぇ闘技
大会があるって触れ回ってるらしいズラ」
「俺たちは空賊。奪うのが仕事だぞ、カバネ」
「んでもよ。めんこい女王が国作って、その大会での優勝賞金は金貨
一万枚らしいズラ。しかもそこは、ロブロード発祥の地って言われてるズラよ」
「……めんこい女王か。なら、さらうか」
「頭!? でもよ、警備甘くねんじゃねぇズラ?」
「関係無い。俺たちゃ空賊。空から攫えば着いて来れまい。金貨一万枚も出せる
なら、もっとたんまり出せるだろ。優勝賞金なんぞ狙わなくてもな」
「……あら。じゃあ私は参加しようかな。その後の内情も偵察出来るでしょう?」
「勝手にしな。おいカバネ」
「何ズラ?」
「お前はヒージョと行け。他にいいお宝が眠ってないか探って来い。いい宝が
あれば、そいつも返却条件に付ける」
「わかったズラ」
「カバネ………あんた戦えるのかい?」
「舐めてもらっちゃ困るズラ。こう見えても十分戦えるズラ」
「それで……闘技大会はいつからなのよ」
「さぁ。知らないズラ」
「……はぁ。仕方ない。先に現地へ向かうか。一番目立たない小型の乗り物、出
して」
「毘沙門ズラ? あれ、整備中ズラ」
「いいから早く。恵比寿でもいいから」
「無茶言わないで欲しいズラ。副頭に殺されるズラ」
「ギンドもキンドも出かけたまま戻ってこないじゃない。どうせ荒稼ぎして遊んでるんでしょ。
ほら、さっさと行く!」
「人使いが荒いズラー!」

 ヒージョはカバネの尻を蹴りあげると、カバネは急いで走って行く。
 レグナ大陸の一角を牛耳る空賊集団。
 彼らは独自の技術で作られた乗り物に乗り、空を荒らして回る集団。
 時折かち合うルクス傭兵団とは敵対しており、争いに発展することもあった。
 ドラディニア大陸よりルクス傭兵団が消えてからは、縄張りを拡大し、地上の
空における支配を進めていた。

 そんな彼らの乗り物は、超小型な物から大型な物まで多数存在。
 幾つかの大陸で、空を航行する際には、注意が必要な集団である。
 襲われて金品を奪われた貴族もおり、正式に指名手配を受けている
者もいる。

「やれやれ困ったズラ。毘沙門天、墜落しても知らないズラ」
「ほら。準備出来たの? あんたもさっさと乗りなさい」
「いや、自分は毘沙門天には乗らないズラ。韋駄天か摩利支天に……」
「バカ言ってんな。お前が摩利支天に乗れるか! さっさと乗れ!」
「酷いズラ! 蹴り飛ばさなくてもいいズラ!」
「いつ開催するかわからないんだろう? 急いでいかなきゃいけないのは
当たり前だ」
「そうだったズラ。急いで行くズラ。おお、どうにか動きそうズラ」
「トリノポートに着いたら毘沙門天は隠しておきな。宝をこいつにごっそり詰めて
帰るんだよ」
「いいズラ? お頭にばれたら怒られるズラ」
「そんなもの、途中で売り払えば問題ないだろう? お頭に従ってちゃ、あたいらには
給金しか入らないんだ。そんなんじゃいい酒も食い物も手に入らない。お前も美味い物
が食いたきゃ言う通りにしな」
「確かにそうズラ。酒なんて全然飲んでないズラ。実りが悪いズラ」
「さぁ早く走らせな。道中騒ぎは起こすんじゃないよ」
「わかってるズラ。それで、トリノポートはどこズラ?」
「はぁ……どきな。あたいが運転する。全くあんたは本当に使えないね」
「酷いズラ! トリノポートじゃなければわかるヅラ!」

 こうして小型の乗り物に乗った二人組は、トリノポート大陸を目指して旅立って
いった。
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