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第五章 親愛なるものたちのために
第七百七十三話 バーニィ家の人々
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――捕らえられた場所から外へ出ると、治安が悪そうな場所の中では
まともな建物であることがわかった。
そして……何かが爆発するようなマークを確認した。
……レンブランド・スミスに同じマークがあったのは、記憶に新しい。
何かしらの権力者の場所へ連れて行かれると考えていたので、てっきり赤いローブの
鎌のようなマークが描かれているのかと思った。
あの五つのマークの中では一番悪さをしそう……というのは固定された概念だろうか?
――ランスロットさんに案内されて、ナチュカ式乗り物に乗ると、直ぐに
出発する。この辺りではこの乗り物で移動するのが常識なのだろうか。
「ピキュアー」と可愛い声を発しながら、ナチュカはゆっくりと進みだした。
「ここは、町の西側ですよね」
「その通りだよ。訪れた事があったのかね?」
「いえ。図書館より西側の治安が悪そうだなと感じていただけで、行った
事があるわけではないんです」
「はて。それではどうしてここがその場所だと?」
「運ばれていく道中、ナチュカの通れる道を思い出したんです」
「眠り薬を使用したと聞いたが、運ばれている最中から起きていたのかね?
強い耐性を持っているのかな」
「そんなところですよ。それより……モジョコは平気でしょうか?」
「泣いていたよ。君が帰って来ないから寂しかったんだろう。
孫がとても可愛がっていたようでね。これまで仕事にばかり夢中だった
グレンにも、いい刺激となっているようだ。これならひ孫の顔も
見れるかもしれんね」
「そうですか……一つ尋ねても?」
「何だね?」
「グレンさんの両親……はご健在ですか?」
「……いや。あれが幼い頃に、事故でね」
「そうですか……失礼しました」
「もう大分昔の話だ。君はあの小さな子の親なのだろう?」
「あの子の事は伺ってないんですね。あの子は、紅葉洞で
捨てられていた子です。でも、俺が親かと尋ねられたら、そうだとはっきり言います」
そう答えると、ランスロットさんは目を細め、こちらを鋭い目つきで確認する。
「紅葉洞を管理するものとして、大変申し訳無いと思う。
だが、そうか……グレンは自分の影をあの子に重ねているのかも
しれんな。実はね。あの子は我が家に迎え入れた養子だ。実の孫娘ではないのだよ」
「そうだったんですか。それなら、モジョコと同じですね」
「はっはっは。そうだね。孫娘が気に入るはずだ。
君のひとところについては、もう確かめるまでも無さそうだね」
それはこちらも同じだ。
ランスロットさんは、どことなく暖かい雰囲気で、とても優しそうな
人物に見える。
威厳があるようにも見えるけど、本当に優しい人は話せばわかる。
形だけ取り繕って優しく見える人との違いなんて、接すれば直ぐわかるものだ。
それは、言葉の重み、責任感が違うからだ。
その言葉を引き出していくには、自分自身の事もはっきりさせておかなければ
ならないけど。
「あなたを信用して告げますが、俺は魔族です。
でも自分に恥ずべき行為をする魔族じゃない。仲間と共に
平穏に暮らしたい。それを願う、魔族です」
「ああ、わかっているよ。そもそも人間が強烈な睡眠薬に耐えられる
はずがないからね。特別な術などを行使してもだ。それほど
強い薬だよ、あれは」
「そうだったんですか……でも、あれは俺も不思議だったんですよ。
一度は眠ってしまったんです。でも直ぐに起きて……」
「そうだったのか。伝書の力でもないのだろう? それは興味深いね。
ちなみに君が所有しているアーティファクトの中には、恐らく人間が
行使できないアーティファクトも含まれる。違うかな?」
「アーティファクトの件もご存知だったんですか」
「こちらはレンブランドから聞き出したのだよ。すまないね。
君をレンブランドが助けたい理由を求めるのに、人助けという
名目だけでは弱かったのでね」
「そうだったんですか……彼女がアーティファクトにこだわる理由って
何なんでしょうか?」
「よりよい技術を身に着けるためだ。それが、しいてはこのジパルノグの
ためにもなる」
「それはつまり、町の治安のためですか?」
「そうだ。外敵から身を守るためには、レンブランド・スミスの力が必要
不可欠だが……どうやら話していたら到着してしまったようだ。
すまないね、疲れているのにすっかり話し込んでしまって。君との会話はとても
有意義なものばかりだ」
「いえ……もうそんな時間が経っていたんですね」
ランスロットさんと話し込んでいたら、かなり時間が経っていたようだ。
ナチュカの乗り物から降りると……風景は一変している。
大きな建物だ。
歴史を感じる重厚な建物。周囲にはとても綺麗に整備されている庭園。
入り口にも五人程人が立っているのが見える。
風格を感じる伝統的のような場所だ。
そして……グレンさんとレオさんもそこにいる。
グレンさんと手を繋いだまま、モジョコも立っていた。
もう寝かせつけてやらないといけない時間なのに。
あの子にとって暗い夜がどれほど怖いのか、俺にはよくわかる。
「おじい様! よかった……無事で」
「驚きました。わっしも心配しましたよルインさん」
「また直ぐに会えるとは思ってましたけど、ランスロットさんの
方からあなたを救い出しに行くことになるとは思ってませんでした」
この人は……鉱道にいた人だ。
本当に直ぐ会う事になったけど、呼び出される予定だったってことか。
「ようこそバーニィ家へ。歓迎するよ。ルイン君」
「ありがとうございます。まずは……」
グレンさんに挨拶をし、モジョコの前まで行くと、両手で掲げてやった。
「モジョコ、心配かけたな。大丈夫だ。俺はここにいる」
「ルインお兄ちゃん……もう戻ってこないかと思った。
でもね。貰ったお人形さんをね。ぎゅっと握って、信じて待ってたの」
そう言うと、モジョコは俺にナチュカのぬいぐるみを見せる。
買っておいてよかった……モジョコに届けてくれたミットにも感謝しないと。
「大事にしてくれてるなら、俺も嬉しいよ。今夜はグレンさんの家に
泊めてもらおう。明日は俺の家に帰らないと」
「うん。グレンお姉ちゃんも一緒に行くんでしょ?」
「うん? それは難しいんじゃないか? グレンさんはここが家だろうし」
「ルイン殿。実は……」
まともな建物であることがわかった。
そして……何かが爆発するようなマークを確認した。
……レンブランド・スミスに同じマークがあったのは、記憶に新しい。
何かしらの権力者の場所へ連れて行かれると考えていたので、てっきり赤いローブの
鎌のようなマークが描かれているのかと思った。
あの五つのマークの中では一番悪さをしそう……というのは固定された概念だろうか?
――ランスロットさんに案内されて、ナチュカ式乗り物に乗ると、直ぐに
出発する。この辺りではこの乗り物で移動するのが常識なのだろうか。
「ピキュアー」と可愛い声を発しながら、ナチュカはゆっくりと進みだした。
「ここは、町の西側ですよね」
「その通りだよ。訪れた事があったのかね?」
「いえ。図書館より西側の治安が悪そうだなと感じていただけで、行った
事があるわけではないんです」
「はて。それではどうしてここがその場所だと?」
「運ばれていく道中、ナチュカの通れる道を思い出したんです」
「眠り薬を使用したと聞いたが、運ばれている最中から起きていたのかね?
強い耐性を持っているのかな」
「そんなところですよ。それより……モジョコは平気でしょうか?」
「泣いていたよ。君が帰って来ないから寂しかったんだろう。
孫がとても可愛がっていたようでね。これまで仕事にばかり夢中だった
グレンにも、いい刺激となっているようだ。これならひ孫の顔も
見れるかもしれんね」
「そうですか……一つ尋ねても?」
「何だね?」
「グレンさんの両親……はご健在ですか?」
「……いや。あれが幼い頃に、事故でね」
「そうですか……失礼しました」
「もう大分昔の話だ。君はあの小さな子の親なのだろう?」
「あの子の事は伺ってないんですね。あの子は、紅葉洞で
捨てられていた子です。でも、俺が親かと尋ねられたら、そうだとはっきり言います」
そう答えると、ランスロットさんは目を細め、こちらを鋭い目つきで確認する。
「紅葉洞を管理するものとして、大変申し訳無いと思う。
だが、そうか……グレンは自分の影をあの子に重ねているのかも
しれんな。実はね。あの子は我が家に迎え入れた養子だ。実の孫娘ではないのだよ」
「そうだったんですか。それなら、モジョコと同じですね」
「はっはっは。そうだね。孫娘が気に入るはずだ。
君のひとところについては、もう確かめるまでも無さそうだね」
それはこちらも同じだ。
ランスロットさんは、どことなく暖かい雰囲気で、とても優しそうな
人物に見える。
威厳があるようにも見えるけど、本当に優しい人は話せばわかる。
形だけ取り繕って優しく見える人との違いなんて、接すれば直ぐわかるものだ。
それは、言葉の重み、責任感が違うからだ。
その言葉を引き出していくには、自分自身の事もはっきりさせておかなければ
ならないけど。
「あなたを信用して告げますが、俺は魔族です。
でも自分に恥ずべき行為をする魔族じゃない。仲間と共に
平穏に暮らしたい。それを願う、魔族です」
「ああ、わかっているよ。そもそも人間が強烈な睡眠薬に耐えられる
はずがないからね。特別な術などを行使してもだ。それほど
強い薬だよ、あれは」
「そうだったんですか……でも、あれは俺も不思議だったんですよ。
一度は眠ってしまったんです。でも直ぐに起きて……」
「そうだったのか。伝書の力でもないのだろう? それは興味深いね。
ちなみに君が所有しているアーティファクトの中には、恐らく人間が
行使できないアーティファクトも含まれる。違うかな?」
「アーティファクトの件もご存知だったんですか」
「こちらはレンブランドから聞き出したのだよ。すまないね。
君をレンブランドが助けたい理由を求めるのに、人助けという
名目だけでは弱かったのでね」
「そうだったんですか……彼女がアーティファクトにこだわる理由って
何なんでしょうか?」
「よりよい技術を身に着けるためだ。それが、しいてはこのジパルノグの
ためにもなる」
「それはつまり、町の治安のためですか?」
「そうだ。外敵から身を守るためには、レンブランド・スミスの力が必要
不可欠だが……どうやら話していたら到着してしまったようだ。
すまないね、疲れているのにすっかり話し込んでしまって。君との会話はとても
有意義なものばかりだ」
「いえ……もうそんな時間が経っていたんですね」
ランスロットさんと話し込んでいたら、かなり時間が経っていたようだ。
ナチュカの乗り物から降りると……風景は一変している。
大きな建物だ。
歴史を感じる重厚な建物。周囲にはとても綺麗に整備されている庭園。
入り口にも五人程人が立っているのが見える。
風格を感じる伝統的のような場所だ。
そして……グレンさんとレオさんもそこにいる。
グレンさんと手を繋いだまま、モジョコも立っていた。
もう寝かせつけてやらないといけない時間なのに。
あの子にとって暗い夜がどれほど怖いのか、俺にはよくわかる。
「おじい様! よかった……無事で」
「驚きました。わっしも心配しましたよルインさん」
「また直ぐに会えるとは思ってましたけど、ランスロットさんの
方からあなたを救い出しに行くことになるとは思ってませんでした」
この人は……鉱道にいた人だ。
本当に直ぐ会う事になったけど、呼び出される予定だったってことか。
「ようこそバーニィ家へ。歓迎するよ。ルイン君」
「ありがとうございます。まずは……」
グレンさんに挨拶をし、モジョコの前まで行くと、両手で掲げてやった。
「モジョコ、心配かけたな。大丈夫だ。俺はここにいる」
「ルインお兄ちゃん……もう戻ってこないかと思った。
でもね。貰ったお人形さんをね。ぎゅっと握って、信じて待ってたの」
そう言うと、モジョコは俺にナチュカのぬいぐるみを見せる。
買っておいてよかった……モジョコに届けてくれたミットにも感謝しないと。
「大事にしてくれてるなら、俺も嬉しいよ。今夜はグレンさんの家に
泊めてもらおう。明日は俺の家に帰らないと」
「うん。グレンお姉ちゃんも一緒に行くんでしょ?」
「うん? それは難しいんじゃないか? グレンさんはここが家だろうし」
「ルイン殿。実は……」
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