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第五章 親愛なるものたちのために

第七百四十七話 スライムコレクションズ

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 確かにスライムは見えた……というより見る限りスライムだった。
 レールのようなものもあるが、これはスライムは食べないのだろうか? 

「どうです? 多いでしょう?」
「多いなんてものじゃない。スライムで道塞がってるじゃないか!」
「だから我々も困っているといっただろう! あれをどうにかしないと採掘もままならないんだ!」
「そりゃそうか。ギオマの兄貴、頼みます」
「うむゥ。ルインよ。我の力を使うのは構わんがァ。この洞事破壊してよいのかァ」
「ダメです」
「うむゥ。そうだろうなァ。ではどうするかァ」
「加減して撃っちゃってください。ギオマの兄貴」
「うむゥ。加減してちょうど、この洞が吹き飛ぶくらいの威力だなァ」
「……はい? あんたどんだけ強い力のブレス持ってんだよ! 肉弾戦、肉弾戦で頼みます……ほら、プリマの鎌で」
「うむゥ。試してみるかァ……」

 ギオマは先頭に立つと……二つの鎌を両手に具現化する。
 突然現れた武器にレオとグレンは驚くが、幸いひらひらした格好をしているので、隠していても
違和感はないだろう。

「鎌使いだったんですね、戦士さんは」
「しかもニ本の鎌使いとは珍しい。あの大男、相当な武人か……?」

 そして、凄まじい速さで前進すると、毛躓いて大きく転び、鎌はスライムへと放り投げられた。
 勢い余って天井に突き刺さる鎌へ、スライムたちが押し寄せていく。

「……転んだな」
「おい、転んだぞ」
「転びましたね……」
「あの男。どうみても鎌は素人だぞ?」
「そうみたいですね……速さだけは凄かったようにみえましたが」
「……ギオマの兄貴! さすがです。スライム相手に余裕をわざと見せ、敵をおびき寄せる
ために天井へ鎌を! 少数ひきつけてくれるなら俺でも倒せそうです。いきますぜ、兄貴!」

 俺はつるはしをその辺に転がすと、腰に刺していた二振りの短剣を手に、鎌を目指して
いるスライムへ突撃する。
 こいつがアシッドスライムか。黄土色みたいな色をしたスライムだな。
 三号を思い出す。スライムには核が存在し、そこが唯一の弱点。他への物理攻撃は一切無効だ。
 つまり核をとらえなければ倒すのが難しい、面倒な相手だ。
 その核もアシッドなら酸でガードされてる。
 つまりやるとしたら……「シッ! ……よし、命中」

 投擲しかない。投げ放った短剣は深々とアシッドの核へ突き刺さり消滅させた。
 ……どうにか見えない場所で数匹封印できないかなー……。

 そうだ。ギオマに誘導してもらって、俺たちを囲むようにしてもらえれば……「おのれ矮小なる魔物の分際でェ。この我をこけにしおったなァ!」
「あんたのそれ、自爆だろ!」

 怒り心頭なギオマはスライムへ突撃する。
 あっという間に囲まれたギオマは、素手でスライムたちをちぎり始めた。

 ……よかった。囲まれたおかげでレオとグレンには見えない。心配そうに叫ぶ声だけは聞こえる。
 スライムの数のせいか、手甲が心配して喋りかけてきた。

「なんじゃあ囲まれておるの。わしも戦ってよいか?」
「しーっ。小声でお願いします。俺の短剣じゃ精々倒しても二匹ずつ。数は多分百はいます。
少し多いので減らすの手伝ってください」
「うむう。酒鬼魔族ならではの力、みせてやろうかの」

 手甲から酒鬼魔族の姿へ戻ると、口にめい一杯酒を飲み……霧状の何かを吐き出した。
 するとスライムたちの動きが途端におかしくなる。

「後はお主が片付けい」
「一体何を」
「酩酊状態にしてやったんじゃあ。ギャハハハ。ラルダの特別性爆酒を少しおすそ分けしてやったんじゃあ」
「はは……スライムって酔っぱらうんだな……」

 ふらふらふよふよするだけのアシッドとブラッドスライム、そしてグラングランしているラージスライムの
封印に成功する。
 やったぞ! 俺のスライムコレクションはこれから始まるんだ! 
 といいたいところだが、この世界にそんなに多くのスライムがいるかどうかは知らない。
 
「ふう……矮小なる魔物よォ。思い知ったかァ!」
「うわ……道が詰まる程いたスライム、全部ちぎっちゃったよ……」
「おおい、大丈夫か! 幾らなんでも無茶……」
「グレン。やっぱり相当な強者のようで。あんなにいたスライムを短時間で全部倒しきるとは……」
「いやーさっすが兄貴。突っ込んでった時はヒヤヒヤしましたが、スライムの対策は万全だったんですね! 
俺はちっとも出番なく、五匹しか倒せませんでしたよハハハ……」

 よし、うまくごまかせたに違いない。
 つるはしを再度担いで先へ進む準備をする。
 ギオマも褒められたからか、とても調子に乗っているようだ。

「ふん。我にかかればあの程度のものォ。本来は尻尾を巻いて逃げるわァ! スライムには尻尾など
ないがなァ……」
「この辺りでも少し取れるけれど、中継点に採掘に適した物があるの。それとトロッコもあるわ。食べられてなければだけどね」
「そういえばレールみたいなのがあるけど、あれはなんでアシッドに食べられないんだ?」
「モンスターが苦手とする金属もあるんですよ。これはその金属をふんだんに含んでるんです」
「それって防具とかには使えないのか?」
「厳しいですね。人間が長時間身に着けてると害なものですから」
「そうか……そんな良いものがあったら皆身に着けてるよな、きっと」
「それに硬度も高いわけじゃない。防具としては不適切な上、微量含んだだけでは効果がない」
「貴様らァ! 早くこんかァ! おいていくぞォ!」

 ギオマは更に調子づき、どんどんと一人で奥へ進もうとする。
 俺たちは慌てて後を続いた。
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