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第五章 親愛なるものたちのために

第七百三十八話 リア・ファルの効果

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 声を取り戻したミレーユは、少し草臥れたので宿に行くという。
 その前に肝心な物を受け取らないと。

「リア・ファル……本当にもらっていいのか?」
「構わないわ。ちゃんと伝えていた通り、声は戻ったし。
そもそも好きじゃない人から貰った送り物だし、未練も何もないわ。その代わり
それで暫く必要なものとかは、あなたが全部払ってよね」
「それは構わないが……」
「既に所有権は委託されているのでございます。使ってみてはいかがでございますか?」
「使う? その石って何かに使えるの? ただの飾り石だと思ったけど」
「ええ。神話級アーティファクトは世界を揺り動かす力を持っているとされているのでございます。
その性能は千差万別でございますが……アメーダもリア・ファルを見るのは初めてでございますから」
「どうやって使う……うおーーーーーーーー!」

 俺は石を手に持ち、ごしごしと触ってみた。途端に石が巨大化し、石に乗せられる形
となり、上空へ飛び出していった。
 瞬時にアメーダが飛び上がり、俺の動きを抑制しなければ、結界から突き破っていたかもしれない。

「あ、危なかった。なんだこの石は」
「どうやら望む場所へ飛んでいくような効果のある石……でございますね」
「そんな便利なものだったの? もしかしてそれがあればコーネリウスの場所まで
逃げられたんじゃないの、私……」
「それはどうでございましょう。建物などにぶつかることを考慮されているとは
思えないのでございます。頭ゴチンするのでございます」
「確かに……結界無視して突破しようとしてたしな。まるでミサイルのような
アーティファクトだ……」

 これなら代価として用いるアーティファクトとしてはちょうどいいかもしれない。
 あんな目立つ石でぶっ飛んでいたらどこのモンスターに襲われるかもわかったものじゃない。
 やっぱり神話級アーティファクトといっても色々あるんだな。
 使い方によっては使えるのかもしれない。例えばルーンの町での移動とか。

「それじゃ私は宿に戻って休ませてもらうわね。少し気分もすっきりしたし、お酒でももらおうかな。
アメーダ、一緒に来てくれるわよね」
「そうでございますね……ミレーユ王女様はなかなか強引そうな方でございます。
お一人で向かわせるのは少々姉様にご迷惑かもしれないので、一緒に行くのでございます」
「失礼ね。でもいいわ。あなたとは長い付き合いになりそうだし。それと、私はもう
王女じゃない。ただの箱入り娘でもないの。ミレーユと呼んで」
「承知したのでございます。ミレーユ様」
「俺は魂吸竜の所へ行ってくるか。くれぐれもライラロさんがいることを
忘れないように。喧嘩するなよ……頼むから」
「しないわよ。術士同士だし、色々聞く事もあるから」
「あれ? ちょっと待ってくれ。アメーダ、ベリアルからの伝言があったんだ。
泉をつなげてさっさとルーンの町へ他の死霊族を向かわせろ……だったか。
やっぱり可能なのか?」
「そちらもお見通しでございますか……この町事、ルーンの町へ移送する予定で
ございました」
「……俺の町、ゴーストタウンになりかけてるよな……ただの魔族とか増やしたいんだけどなぁ……」
「それならアースガルズから引っ張って来ればいいだけじゃないの」
「それはメイズオルガ卿が困るだろう?」
「別にお兄様なんて困らせておけばいいのよ。私にこんな旅をさせてるんだから」
「まぁ、そっちの件は他で考えてみるよ。子供が産まれれば暫くは町から離れ
られないだろうし」
「そうなの? どうして?」
「そりゃ産まれたばかりの子供は数時間しか寝ないし、大変だからだろ?」
「あなた様……どうやら人としての考えが抜け切れていないようでございますね……魔族
の赤子はそんなことございませんよ。さて、それではミレーユをお送りした後は
ライラロ様にミレーユを託し、姉とともに泉の接続を開始するのでございます。
花はその時あなた様から託して頂きたいのでございます」
「俺が託すってことは何か意味があるってことだよな」
「はい。あなた様でないと何も起こらないのでございます」
「そうなのか。まずは魂吸竜に事情を説明しないと……遠い昔の約束事を
守って動けないらしいから」

 しかしあんなばかでかい竜を本当に封印出来るのだろうか。
 ベリアルならそれも可能なのだろうが……ベオルブイーター。
 あんな存在を本気で倒すつもりなら、これくらいの竜の力は必要なのだろう。
 

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