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第五章 親愛なるものたちのために

第七百二十四話 変妖から変幻の試みは

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 北側の進路をとった俺たちは、まもなくモンスター集団と戦闘を開始する。

 モンスターに近づいてわかったのが、不死はリッチーなどではなく武装した不死者。
 不死者と一言で表すにも種類がある。
 スケルトン、ゾンビ、グール、完全に原型をとどめた人型の不死者、ドラゴンゾンビなど。
 亜種の不死者も多く存在する。
 ここにいるやつは恐らく、魔族の不死者だ。
 それとヴァンピールだが、ここのヴァンピールはブリザホールにいたやつよりでかい。
 真っ赤なコウモリのような形をしたそれが、天井からぶら下がっている。
 そしてオーガの亜種。
 巨大な盾と剣を持ち、巨剣を構えて佇んでいる。

「合図は私の攻撃からね。不死者三体くらい楽勝よ」
「相手はスケルトンとかじゃないが、本当に大丈夫か?」
「当然よ。いくわよ……不浄なる浄化の嵐 聖なる審判!」

 あれは船上で見せたライラロさんの術。
 彼女はただの幻術とは思えない術を行使している。
 ユニカ族というのがそういった力を持っているのかもしれない。
 天井から湧き上がる様に光を発すると、不死者は……消えなかった。
 
「グオ?」
「キイーーーー!」
「グルウウウウウ……」
「あ、あれ? ……おかしいわね。もう一度!」
「全然効いてねえ! ルイン、構えろ。一気にくるぞ」
「もう支度してる。慣れっこだよ」
「ひぃーんごめんなさあーーい!」

 ライラロさんの術で一斉に敵が動き出す。
 全く効果が無いわけではなかったようだ。
 動き出したのは不死者一匹にヴァンピール二匹。
 こちらへ目掛けて突撃してくる。

「不死者を呼び込む。ヴァンピールをどうにかできるか?」
「俺がやります!」

 俺はティソーナ、コラーダを出すと、不死者に向けて斬撃を飛ばす。
 だが俺の方には反応を示さない。

「けん制でこちらを向かない。ライラロさんを狙ってるのか?」
「燃臥斗! ここだと狭くて燃刃斗が使えないわね……」

 ライラロさんの方へ突撃する不死者を、幻術中級術、燃臥斗で燃え上がらせるライラロさん。
 あの一匹は問題なさそうだな。
 ヴァンピールは……アメーダが招来した奴が相手をしている。
 その脇からエンシュが攻撃。こちらも想定通りだ。

 後方を心配して確認していると、ジュディは既に残りの不死者へ攻撃を仕掛けていた。
 遅れをとったが……いや、準備に時間がかかるところだ。
 ちょうどいい。あのオーガ亜種は頂くとしよう。

【真化】【神魔解放】……あれ? 何だこの妙な感覚は……。

「やっぱりプリマにも戦わせろ!」

 突如として俺の体の状態が変わっていく。
 蒼黒い髪色がどんどんと伸び、紅色へと変化する。
 レピュトの手甲を出すと、その手が黒い鎌を握り、一人でにオーガ亜種のいる
方向へ飛んでいった。

「ボーっとしてないで早く攻撃しにいくぞ、ルイン!」
「プリマ、また勝手な事を……これはもしかして幻魔の力ってやつか?」

 俺は指の先に意思を込め、昔一人で出来なかった事を試す。

「燃斗!」

 小さな火球が飛び出て、オーガ亜種の足元へヒットした。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「あ、悪い。当てるつもりはなかった……っていっても襲ってくるよな!」

 オーガ亜種はいきり立ち、所持している剣を大きく振り下ろすと、それは斬撃となりこちらを
襲ってきた。

「妖赤星の吸盾」

 斬撃を簡単に防いでみせると、オーガ亜種は更に興奮した様子を見せ、こちらを敵として
認識する。
 レピュトの手甲の鎌攻撃を、巨大な盾で防ぎつつ、こちらの様子を見ている。

 体長は二メートル半程でそこまで大きくない。肌の色は黒く、角が二本。
 剛腕かつ俊敏な動きが予測できる程鍛え抜かれた筋力。
 そして何より……「妖楼! 斬撃の数が多い!」

 一振りで数十の斬撃を放ってくる。
 赤星の吸盾でカバーしきれないように攻撃を適切に放ってくる。
 つまり知識も相当高い証拠だ。

「おい。もっとうまく戦え。プリマの力はそんなものじゃないぞ」
「んなこといったってわかるか! 幻魔の事なんて全然知らないんだぞ。
術だって把握してないし」
「じゃあ幻獣剣、使ってみろよ」
「幻獣剣……?」
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