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第五章 親愛なるものたちのために
第七百二十三話 洞穴内のモンスター遭遇
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「これはもう、ダンジョンだ……」
「そんなに入り組んでるの?」
「ああ、ライラロさんも見てくれ。これが地図だ」
コウテイたちが持ってきた情報を参考にして、地図を描いてみた。
ありの巣とまではいかないが、いくつも部屋のようなものがあり、そこかしこに
危険そうなモンスターがいるようだ。
酒鬼魔族というのは皆、この中でくらしていたのか?
なぜ神兵との間に子供が……など、思うところは多々あるが、今は目的地の割り出しが先だ。
「ふうん。最奥までは見てこれなかったみたいね」
「ああ。東へ伸びる道は二通路ある。現在地が中央最西端……このテントのマーク。
そこから東に進むと直ぐ上下に分かれる。墓は北側にあるようだから、北のルートから東へ抜けれないか
探ってみよう。先頭はジュディ、ピールと俺。中央にアメーダとエンシュ。後方をライラロさんで進もう」
「分かれて探さないの? その方が早いでしょう?」
「ダメだ。モンスターが多いようだし、分断して合流できるかもわからない。
この人数ならまとまって行動した方がいいだろう」
「あんた、昔より随分と冷静になったわね」
「そうかもしれない。昔なら俺が先に調べて、安全を確保してから皆を呼ぶって言ってたかもしれない」
「そう。成長したわね。うちのバカ弟子もあんたくらい成長してくれてればいいけどねぇ……」
「メルザは……出来れば産まれてくる子供の傍にいて欲しいと思っているよ。女子供が戦いに
巻き込まれない方がいいに決まっている。だから……エンシュももう少し成長するまでは、稽古に
励んでもらいたいんだよ」
「俺はもう大人です! 立派に戦ってみせます。神風橋でだって、一人で戦えたんだ!
子供扱いしないでください、先生!」
「あらあら。若いっていいわねぇ……さて、それじゃ話もまとまったみたいだし、北に向けて出発ね!」
「いえ、まずは東ですって。壁に突撃するつもりですか?」
「わかってるわよ! それじゃ改めて、出発ー!」
「ですからライラロさんは後ろですって……術使いが先頭きって進んでどうするんだ!」
「えへへへ……ちょっとした間違いよ」
ちょっとした……ねぇ。こんな人だが、アメーダが術を行使できない以上、幻術使いは助かる。
パモも多少は幻術が使えるが、そこまでではない。
ミレーユ王女の魔術は詠唱を必要とするだろうし、詠唱無しで即発動できる幻術はかなり有難い。
「そのお嬢さんがまさか、ライラロさんとはねぇ……実は俺もデイスペルの大会に参加したことがある」
「ジュディが?」
「ああ。師に命令されてな。近接戦闘部門、決勝まで行ったんだが……大敗した」
「あら、それって何年位前かしら?」
「もう八年以上も前の事だ」
「八年以上? そうするとまだ、不動の離剣がいたころね」
「そうだ。俺が負けた相手がその不動の離剣だよ」
「フー・トウヤや、ジオじゃなくてか?」
「違うわ。あの二人はベルディスの代よ。もっと前だわ。
あんたが出場してた頃にはもう、出場しなくなってたけどね」
「不動の離剣、あいつは完全に受け身体制。その名の通り、開始位置から一歩も動かなかった。
そして……一歩も動かせず敗北した。師には相手が悪かったと言われたけどな……それが
余計悔しかったぜ……」
「不動の離剣か。一歩も動ないってことは、斬撃だけで倒されたか、或いは
剣自体を自在に動かせるとか?」
「どちらかというと後者だな。手元を離れた武器で攻撃してくる。
武器自体は知ってるかもしれないが、使用制限がある大会だ。つまり奴自身の能力ってことだ。俺も
似たような事が出来るのは知ってるだろうが、奴には持ち手がない」
話を聞く限り相当やばい奴だな。ドーグルのような超能力だろうか?
そして今、この話が出たってことは――――。
「さすがに察した顔してるな。その通り。奴の出身はシフティス大陸東側。
東に出たら相まみえる可能性もあるだろうな……おっと、一旦停止だ」
ジュディに手で制されると、目の前に最初の分かれ道。北側の道と南東気味に道が伸びている。
「こりゃあ確かに、北側の道は骨が折れそうだな。遠目に不死系三匹、ヴァンピール二匹、それからありゃあ……オーガの亜種だな」
「俺じゃまったく歯が立たないから北側へは一度も行ったことがないんです」
「そりゃ剣のみで不死系と戦ったら太刀打ちも何もあったもんじゃない。
不死の種類は? リッチーか? 俺だとここからじゃ全然見えないな」
「そこまではわからないが、高位の不死者の可能性もある。場所が場所だし、墓場もあるんだろう?」
「不死者なら問題ないわよ。私を誰だと思ってるわけ?」
「ええ? お姉さん不死者を倒せるんですか?」
「お姉さん……そうね。あなたいい子じゃない。もっとそう呼んでもいいのよ」
「そういえば昔、デイスペルに向かう船でとんでもない術を放ってたな、ライラロさん……」
「オーガ亜種は俺とルインで応対しよう。ヴァンピールをエンシュとアメーダがやってくれ」
「わかりました! 俺がやばそうだったら応援をお願いします、アメーダさん」
「気を付けて戦って欲しいのでございます。治癒を施せるものがいないのでございますから」
「わかった。行動開始だ!」
「そんなに入り組んでるの?」
「ああ、ライラロさんも見てくれ。これが地図だ」
コウテイたちが持ってきた情報を参考にして、地図を描いてみた。
ありの巣とまではいかないが、いくつも部屋のようなものがあり、そこかしこに
危険そうなモンスターがいるようだ。
酒鬼魔族というのは皆、この中でくらしていたのか?
なぜ神兵との間に子供が……など、思うところは多々あるが、今は目的地の割り出しが先だ。
「ふうん。最奥までは見てこれなかったみたいね」
「ああ。東へ伸びる道は二通路ある。現在地が中央最西端……このテントのマーク。
そこから東に進むと直ぐ上下に分かれる。墓は北側にあるようだから、北のルートから東へ抜けれないか
探ってみよう。先頭はジュディ、ピールと俺。中央にアメーダとエンシュ。後方をライラロさんで進もう」
「分かれて探さないの? その方が早いでしょう?」
「ダメだ。モンスターが多いようだし、分断して合流できるかもわからない。
この人数ならまとまって行動した方がいいだろう」
「あんた、昔より随分と冷静になったわね」
「そうかもしれない。昔なら俺が先に調べて、安全を確保してから皆を呼ぶって言ってたかもしれない」
「そう。成長したわね。うちのバカ弟子もあんたくらい成長してくれてればいいけどねぇ……」
「メルザは……出来れば産まれてくる子供の傍にいて欲しいと思っているよ。女子供が戦いに
巻き込まれない方がいいに決まっている。だから……エンシュももう少し成長するまでは、稽古に
励んでもらいたいんだよ」
「俺はもう大人です! 立派に戦ってみせます。神風橋でだって、一人で戦えたんだ!
子供扱いしないでください、先生!」
「あらあら。若いっていいわねぇ……さて、それじゃ話もまとまったみたいだし、北に向けて出発ね!」
「いえ、まずは東ですって。壁に突撃するつもりですか?」
「わかってるわよ! それじゃ改めて、出発ー!」
「ですからライラロさんは後ろですって……術使いが先頭きって進んでどうするんだ!」
「えへへへ……ちょっとした間違いよ」
ちょっとした……ねぇ。こんな人だが、アメーダが術を行使できない以上、幻術使いは助かる。
パモも多少は幻術が使えるが、そこまでではない。
ミレーユ王女の魔術は詠唱を必要とするだろうし、詠唱無しで即発動できる幻術はかなり有難い。
「そのお嬢さんがまさか、ライラロさんとはねぇ……実は俺もデイスペルの大会に参加したことがある」
「ジュディが?」
「ああ。師に命令されてな。近接戦闘部門、決勝まで行ったんだが……大敗した」
「あら、それって何年位前かしら?」
「もう八年以上も前の事だ」
「八年以上? そうするとまだ、不動の離剣がいたころね」
「そうだ。俺が負けた相手がその不動の離剣だよ」
「フー・トウヤや、ジオじゃなくてか?」
「違うわ。あの二人はベルディスの代よ。もっと前だわ。
あんたが出場してた頃にはもう、出場しなくなってたけどね」
「不動の離剣、あいつは完全に受け身体制。その名の通り、開始位置から一歩も動かなかった。
そして……一歩も動かせず敗北した。師には相手が悪かったと言われたけどな……それが
余計悔しかったぜ……」
「不動の離剣か。一歩も動ないってことは、斬撃だけで倒されたか、或いは
剣自体を自在に動かせるとか?」
「どちらかというと後者だな。手元を離れた武器で攻撃してくる。
武器自体は知ってるかもしれないが、使用制限がある大会だ。つまり奴自身の能力ってことだ。俺も
似たような事が出来るのは知ってるだろうが、奴には持ち手がない」
話を聞く限り相当やばい奴だな。ドーグルのような超能力だろうか?
そして今、この話が出たってことは――――。
「さすがに察した顔してるな。その通り。奴の出身はシフティス大陸東側。
東に出たら相まみえる可能性もあるだろうな……おっと、一旦停止だ」
ジュディに手で制されると、目の前に最初の分かれ道。北側の道と南東気味に道が伸びている。
「こりゃあ確かに、北側の道は骨が折れそうだな。遠目に不死系三匹、ヴァンピール二匹、それからありゃあ……オーガの亜種だな」
「俺じゃまったく歯が立たないから北側へは一度も行ったことがないんです」
「そりゃ剣のみで不死系と戦ったら太刀打ちも何もあったもんじゃない。
不死の種類は? リッチーか? 俺だとここからじゃ全然見えないな」
「そこまではわからないが、高位の不死者の可能性もある。場所が場所だし、墓場もあるんだろう?」
「不死者なら問題ないわよ。私を誰だと思ってるわけ?」
「ええ? お姉さん不死者を倒せるんですか?」
「お姉さん……そうね。あなたいい子じゃない。もっとそう呼んでもいいのよ」
「そういえば昔、デイスペルに向かう船でとんでもない術を放ってたな、ライラロさん……」
「オーガ亜種は俺とルインで応対しよう。ヴァンピールをエンシュとアメーダがやってくれ」
「わかりました! 俺がやばそうだったら応援をお願いします、アメーダさん」
「気を付けて戦って欲しいのでございます。治癒を施せるものがいないのでございますから」
「わかった。行動開始だ!」
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