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第四章 シフティス大陸横断
間話 修業を終えたものたち
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ここは絶対神スキアラの住まう領域。
そこに一匹のカメと一匹のうさぎがいた。
カメの甲羅の上で寝るうさぎは、ぴくりとも動かない。
カメは半ばあきらめたようにして、正面の出来事を見ていた。
「あめぇ! 風牙撃衝刃!」
「そっくりそのまま返すゼその言葉! ゴリアテ、ミットアラークラフト!」
牙の形をしたウェアウルフの顔が、筋骨隆々の男を襲う。
それを、その巨体に見合うだけの超長剣で打ち上げるように薙ぎ払うと、ウェアウルフの顔が消滅する。
ベルディス、そしてハーヴァル。
両者はずっと戦いに明け暮れていた。
「ちっ。腕力やろうが! 力でかき消す限界をしりやがれ!」
「おいおいお互い様だろうが。お前さんの顔ってだけで敵対するやつはびびってにげちまうぞ」
「けっ。そのまま尻尾巻いて逃げやがれ!」
「んなことしたら呪いで死ぬわ!」
「カッメ……」
「すー、すー……」
「さて、それよりもだ。そろそろ一度戻らねえか? ちょいと長居しすぎたんじゃねえかな」
「あん? んなことねえだろ。まだ三日くれえじゃねえか?」
「……お前さんの時間間隔は一体どうなってんだよ」
「戦ってる時間てのは短く感じるだろ。相手がばてるまで待とうとしてる間は妙に長く感じるがよ」
「そんなたとえをするのはお前さんだけだろ。しかし、随分と筋力があがったな。この地の影響か?」
「そうだろうな。ここは普通の重力じゃねえし、空気も薄い。存在してるだけでも鍛えられるだろ」
「こりゃ戻るのが楽しみだな。鼻っ面へし折られたもんな、お前さん」
「ああん? 誰が誰に鼻っ面をへし折られたって?」
「ルインにだよ。忘れたのか?」
「あーあー覚えてねえな。まぁ新しい形態すら手に入れた今の俺なら、ベルローゼにだって勝てる自信あるぜ」
「あー、そういやあいつはどうしてるんだろうな。地底に行ったまま戻ってこれてないんだろ?」
「問題ねえだろ。殺しても死ぬような奴とは思えねえからな。ある意味怖ええ。どんな修業して
やがるのか……」
「そりゃルインも同じだろ? あいつだって……」
「どうかな。あいつは優しすぎるし甘ちゃんだ。伸びしろがまだまだあるってのに力を制御できてねえ」
「また一から鍛えてやったらどうだ? 泣いて喜ぶぜきっと」
「んなことしねえよ。俺が教えられる事はもう教えた。弟子が泣き言なんてほざいてみろ。叩きのめしてやるぜ」
「ははは、それもそうか。それにルインがそんな事言うわけないな。あいつが言いそうな事は、新作の菓子を作ったんで食べてください、師匠! とかだろうな」
「菓子くれぇなら受けるがよ。ああ、腹減ってきたな……」
「またかよ。お前さんがここの甘味処を皆食い尽くしたから、神兵のやつぶちきれてただろ?」
「まぁ全員のしてやったけどな。ハッハッハッハ!」
「のしたって……お前あんな不意打ちはないだろう」
「ばかいえ。戦いにおいて油断する方が悪いに決まってる。あるものは皆使え。当然だろ?」
「はぁ……こんな師匠に教わったんだ。さぞかし手数が増える弟子ができあがったんだろうよ」
「間違ってねえな。あいつは手数が多い。無理に絞り込む事もねえと思ったが……そろそろだろうな」
「そろそろ?」
「てめぇの最上の戦闘スタイル、中間の戦闘スタイル、余裕を見せる戦闘スタイルの切り分け……つまり
選択して切り替える戦闘スタイルだ」
「ああ……多様な攻撃方法を持つ戦士が、覚醒して瞬時にスタイルを変えるあれか?」
「ああ。一握りの奴にしか出来ねえ芸当だ。脳がいかれちまう。それこそ切り分けられる人格でもないとな」
「そうか……それであいつが見込みアリと思ったのか」
「まぁそんなとこだ……おい、スキアラのじじい! いるんだろ! 俺たちゃそろそろ戻りてえ。
ルーンの町に戻せ」
ベルディスがそう叫ぶと、空間から絶対神スキアラが不機嫌そうに現れた。
「誰がじじいだ! いい加減絶対神スキアラ様と言わんか!
少し反省してカメにでもなっておれ!」
「おっとその手はくわねえぜ。ほいっと」
「カッメ!」
絶対神スキアラがベルディスをカメに変化させようと何かを放つと、回避したベルディスの奥にいた
カメにあたる。
すると……「わぁ! 戻ったぁ! いやったぁーー! やっと戻ったぁーー!」
「あれ、イビンじゃないか。お前何処ほっつき歩いてたんだ?」
「ずっといたでしょ!? 酷いなぁ……僕、ずっとカメだったんだけど。
これで本当に強くなったの!?」
「ほっほっほ。安心せい。お主は長らく洞察眼を磨いておった。間違いなく強くなったであろう」
「それって眼力が強くなっただけじゃないか?」
「……ああ。同情するぜ」
「えーーー!? 眼力だけ? そんなぁ……」
「おっと。忘れぬうちにそちらの言葉遣いが悪い娘も戻しておくか……よし。では戻すぞ。
そのうち神兵をルーンの町へ連れて行く。修業相手くらいにはなるだろうて。ではな」
「ちょ、待っ……」
ハーヴァルが喋り終わる前に、ベルディスたちはルーンの町へと戻される。
ベルディスは一直線に安息所へ向かい、イビンはとぼとぼと温泉へ。
そして残ったハーヴァルは……「どうすんだ、これ。セフィアのやつ絶対怒るぞ……」
セフィアはうさぎの姿から戻っていた。
だが耳だけうさぎの耳に変わったままだった。
横たわって眠ったままのセフィアを見てハーヴァルは再度大きくため息をつくのだった。
そこに一匹のカメと一匹のうさぎがいた。
カメの甲羅の上で寝るうさぎは、ぴくりとも動かない。
カメは半ばあきらめたようにして、正面の出来事を見ていた。
「あめぇ! 風牙撃衝刃!」
「そっくりそのまま返すゼその言葉! ゴリアテ、ミットアラークラフト!」
牙の形をしたウェアウルフの顔が、筋骨隆々の男を襲う。
それを、その巨体に見合うだけの超長剣で打ち上げるように薙ぎ払うと、ウェアウルフの顔が消滅する。
ベルディス、そしてハーヴァル。
両者はずっと戦いに明け暮れていた。
「ちっ。腕力やろうが! 力でかき消す限界をしりやがれ!」
「おいおいお互い様だろうが。お前さんの顔ってだけで敵対するやつはびびってにげちまうぞ」
「けっ。そのまま尻尾巻いて逃げやがれ!」
「んなことしたら呪いで死ぬわ!」
「カッメ……」
「すー、すー……」
「さて、それよりもだ。そろそろ一度戻らねえか? ちょいと長居しすぎたんじゃねえかな」
「あん? んなことねえだろ。まだ三日くれえじゃねえか?」
「……お前さんの時間間隔は一体どうなってんだよ」
「戦ってる時間てのは短く感じるだろ。相手がばてるまで待とうとしてる間は妙に長く感じるがよ」
「そんなたとえをするのはお前さんだけだろ。しかし、随分と筋力があがったな。この地の影響か?」
「そうだろうな。ここは普通の重力じゃねえし、空気も薄い。存在してるだけでも鍛えられるだろ」
「こりゃ戻るのが楽しみだな。鼻っ面へし折られたもんな、お前さん」
「ああん? 誰が誰に鼻っ面をへし折られたって?」
「ルインにだよ。忘れたのか?」
「あーあー覚えてねえな。まぁ新しい形態すら手に入れた今の俺なら、ベルローゼにだって勝てる自信あるぜ」
「あー、そういやあいつはどうしてるんだろうな。地底に行ったまま戻ってこれてないんだろ?」
「問題ねえだろ。殺しても死ぬような奴とは思えねえからな。ある意味怖ええ。どんな修業して
やがるのか……」
「そりゃルインも同じだろ? あいつだって……」
「どうかな。あいつは優しすぎるし甘ちゃんだ。伸びしろがまだまだあるってのに力を制御できてねえ」
「また一から鍛えてやったらどうだ? 泣いて喜ぶぜきっと」
「んなことしねえよ。俺が教えられる事はもう教えた。弟子が泣き言なんてほざいてみろ。叩きのめしてやるぜ」
「ははは、それもそうか。それにルインがそんな事言うわけないな。あいつが言いそうな事は、新作の菓子を作ったんで食べてください、師匠! とかだろうな」
「菓子くれぇなら受けるがよ。ああ、腹減ってきたな……」
「またかよ。お前さんがここの甘味処を皆食い尽くしたから、神兵のやつぶちきれてただろ?」
「まぁ全員のしてやったけどな。ハッハッハッハ!」
「のしたって……お前あんな不意打ちはないだろう」
「ばかいえ。戦いにおいて油断する方が悪いに決まってる。あるものは皆使え。当然だろ?」
「はぁ……こんな師匠に教わったんだ。さぞかし手数が増える弟子ができあがったんだろうよ」
「間違ってねえな。あいつは手数が多い。無理に絞り込む事もねえと思ったが……そろそろだろうな」
「そろそろ?」
「てめぇの最上の戦闘スタイル、中間の戦闘スタイル、余裕を見せる戦闘スタイルの切り分け……つまり
選択して切り替える戦闘スタイルだ」
「ああ……多様な攻撃方法を持つ戦士が、覚醒して瞬時にスタイルを変えるあれか?」
「ああ。一握りの奴にしか出来ねえ芸当だ。脳がいかれちまう。それこそ切り分けられる人格でもないとな」
「そうか……それであいつが見込みアリと思ったのか」
「まぁそんなとこだ……おい、スキアラのじじい! いるんだろ! 俺たちゃそろそろ戻りてえ。
ルーンの町に戻せ」
ベルディスがそう叫ぶと、空間から絶対神スキアラが不機嫌そうに現れた。
「誰がじじいだ! いい加減絶対神スキアラ様と言わんか!
少し反省してカメにでもなっておれ!」
「おっとその手はくわねえぜ。ほいっと」
「カッメ!」
絶対神スキアラがベルディスをカメに変化させようと何かを放つと、回避したベルディスの奥にいた
カメにあたる。
すると……「わぁ! 戻ったぁ! いやったぁーー! やっと戻ったぁーー!」
「あれ、イビンじゃないか。お前何処ほっつき歩いてたんだ?」
「ずっといたでしょ!? 酷いなぁ……僕、ずっとカメだったんだけど。
これで本当に強くなったの!?」
「ほっほっほ。安心せい。お主は長らく洞察眼を磨いておった。間違いなく強くなったであろう」
「それって眼力が強くなっただけじゃないか?」
「……ああ。同情するぜ」
「えーーー!? 眼力だけ? そんなぁ……」
「おっと。忘れぬうちにそちらの言葉遣いが悪い娘も戻しておくか……よし。では戻すぞ。
そのうち神兵をルーンの町へ連れて行く。修業相手くらいにはなるだろうて。ではな」
「ちょ、待っ……」
ハーヴァルが喋り終わる前に、ベルディスたちはルーンの町へと戻される。
ベルディスは一直線に安息所へ向かい、イビンはとぼとぼと温泉へ。
そして残ったハーヴァルは……「どうすんだ、これ。セフィアのやつ絶対怒るぞ……」
セフィアはうさぎの姿から戻っていた。
だが耳だけうさぎの耳に変わったままだった。
横たわって眠ったままのセフィアを見てハーヴァルは再度大きくため息をつくのだった。
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