上 下
799 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第七百十六話 神風橋 終編 神風橋から九弦の洞穴へ

しおりを挟む
 神の空間で休憩をさせている間に、いい情報を仕入れられた。
 コウテイやアデリー、ゴマキチ、レドッピー、ブラッピーたちを総動員し、橋の先まで
偵察をさせてきた。
 どうやら儀式とやらの影響でなのか誰もいないので、一気に橋を抜けられそうだ。

 戦い辛いこの場所で戦闘になるよりは、橋を抜けて行動しやすくした方がいいに決まっている。

 急ぎ神の空間内に戻ると、極度の緊張感と神風に神経をとがらせていたからか、ジュディは昏睡していた。
 アメーダも疲労の表情が見受けられる。
 プリマはぐっすり眠ったままだ。エンシュもまだ目を覚ましていない。

 ……起こすのは少々忍びないが、この機会を逃すわけにはいかない。
 そう思っていたら、真っ先に目を見開いたのはエンシュだった。

「……ここは」
「橋の中継点だ。お前はここで置いていくつもりだ。見張りなんだろ」
「先に進んだら死ぬだけだと言ったはずだ。幾らあんたが強くても、この先は……」
「偵察に向かったんだが橋には誰もいないようだった。抜けるなら今だ」
「なんだって? 橋にはいつも二人……ログラとドーメがいるはずなのに」
「そいつらは純粋な神兵か」
「そうだよ。どっちも俺なんかよりずっと強い。修行がてら橋へ追いやったのも二人だ。
その二人がいない?」
「ああ。誰もいなかったことを確認した」
「おかしいな、あの二人が呼び出されたのか? ……なぁあんた。もし、もしも俺があんたらを案内するといったらどうする? 信じるか?」
「そうだな、こちらには死霊族がいる。もしお前が嘘をつけばすぐにわかるはずだ」
「死霊族にそんな能力があるっていうのか!?」
「お前は他者の外面しか見ていない。本質を見抜く力を学べ。お前はまだ若い」
「……さっきの話の続きだ……もし案内をして、目的を果たせたら……弟子にしてくれないか?」

 弟子? 弟子……って俺の弟子になるってことか? 神兵が? 
 なんかイビン以来久しぶりに聞いたな。
 イビン、元気にしてるかな……今頃神兵とともに……ってあれ? これはもしかして。

「弟子はとってないけど、俺が教えられる事があるのなら教えてもいい。
同じような回答をしたやつがもう一人いる。そいつはスキアラの神兵とともに……」
「い、今なんて……」
「ん? だからスキアラの神兵と修業してる、俺の弟子……ではないな、仲間がいる」
「そうか……そんな凄い仲間が。絶対神の神兵と修業している仲間がいるとは」
「あ、こいつらには内緒な。死霊族は絶対神、嫌ってるから」
「細かい事は気にしないし、言うつもりはない。俺は……もっと強くなりたいんだ」
「それも同じ台詞だな。いいだろう。だがもう一つだけ言う事がある」
「何だ? 何でも言ってくれ」
「プリマにちゃんと、謝っておけ。こいつは弱くないし俺より強いかもしれん。プライドも高い。
きっと色々なものを抱えて生きている……いや死んでるのか? たまに
こんがらがるんだよな、死霊族って言う存在にさ」
「? よくわからないけど、俺の考えが間違ってたのは確かだ。神兵の間では、死霊族は雑魚だって
言われてたから。現に俺が見た事がある死霊族だって大したことはなかったんだ」
「世界は広い。それを言うなら人間だって圧倒的強者もいればそうでないものもいるだろう。
種族、肌の色や髪の色、瞳の色なんかで差別するのは間違ってる。いいな」
「ああ……いや、わかりました。ルイン先生」

 急に背中がこそばゆくなった。ルイン先生……いや、ちょっとだけいい響きだけど
俺にそんなこと言われる資格はない。
 ベルローゼ先生に聞かれたら、フッ……っと笑われるに違いない。
 シーザー師匠はガハハと笑うだろうな。

「さて……話の続きは後だ。橋を抜けられたら神兵と遭遇せず休める場所はあるか?」
「あります。九弦の洞穴という、少し大きめの穴があるのでそちらへ。
俺の……隠れた修業場所で誰も来ない場所です」
「よし、まずそこへ向かおう。ジュディ、アメーダ、プリマ……悪いが起きてくれ。
急いでこの橋を抜けるぞ」
「んあ……」
「がっ!? 悪い、爆睡しちまった」
「……アメーダとしたことが……ここは安らげる空間でございますね……」

 全員を揺り起こすと、俺は急ぎ妖術で、コウテイ、アデリー、フンボルト、マカロニを
呼ぶ。そして……全速力で移動を指示した。

「ジュディを先頭に直列隊列。位置は常に中央固定、神風の合図で散開、そしてまた中央に固定だ。
いいな!」
『ウェーイ!』
 
 例え敵がいなくても、神風自体は気が抜けない。
 綺麗に縦列に並ぶペンギンは圧巻だ。
 アデリーだけはいつものように余裕を見せている。

 急いだ甲斐あってか、この長い神風橋を、俺たちは一気に抜ける事ができた。
 ……だが、帰りを考えるとそうもいかないだろう。なにせここが大陸横断の要の場所。
 待ち構える変な奴とかいてもおかしくはない場所だ。
 橋を抜け切ると、地面の色の違いに驚く。
 この地面は黒い……真っ黒なペンキでも塗ったかのような大地だ。

「橋を抜けたら左へ曲がってください。ここからは神風の影響はありません」
「見た所、岩で阻まれてるように見えるぞ?」
「岩に突進を」
「突進……?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

処理中です...