785 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断
第七百二話 パーフェクト・ティー・タイム
しおりを挟む
俺がその男に真剣と向き合う事を決めたその時、アメーダはいつの間にか黒と赤混合色のエプロン姿へと
早変わりしていた。
どこからもってきたんだ? と思ったが、ルーンの町には既に多くの商品が販売されている。
アメーダであれば物々交換などで簡単に物を仕入れる事は出来るだろう。
このデザインは間違いなくフォモルさんの娘、フォニーさんだ。
俺がベルローゼ先生の名前の美しさを語った事があった。
ベル……つまり鈴とローズ……薔薇をかけ、漆黒の鈴薔薇と表現し、少し絵を描いて見せた
事があった。
感動のあまりブツブツと念仏のような物を唱えていたのをわずかに覚えている。
そして……そのエプロンには漆黒の鈴と美しい薔薇をあしらったワンポイントが刻まれ
ベルローズとちゃっかり刻印まで入っている。
「そもそもベルローズって薔薇は実際にあって、ピンク色なんだよな……」
「何か? こちらのお召し物、いかがでございますか?」
「似合っていると思うぞ。アメーダは奉仕活動をよくするから、エプロンが気に入ったのか?」
「こちらはルーンの町を少々拝見したときに、おすすめされたものでございます。アメーダの役割や
好みを伝えると、熱心に進めてきたのでございますよ。汚れてもすぐ洗えるという一品でございますね」
「あーははは……似合ってるからいいんじゃないかな。それで、なぜそんな恰好を……」
「お忘れでございますか。そちらの方と親身になり、本当のお名前を聞くのでございましょう?
でしたらパーフェクト・ティー・タイムが必要ではございませんか?」
「パーフェクト・ティー・タイム? 何でそんな言葉知ってるんだ」
「あなた様は読みやすいのでございますよ」
「人の考えを勝手に覗くな! そんなんで好感度が上がるのはゲームの話だぞ!」
「さっきから二人で何ブツブツ言ってるんだ。それで、お前の話ってのは」
「いや、少し待ってくれないか。飲み物を提供したいらしいんだ」
「……飲み物? 今日あったばかりのやつから飲み物なんてもらえないね。まぁ無機人の俺には毒なんか
効きゃしないがな。物理攻撃もほぼ効かん」
「スライムみたいなもんだって言ってたしな。斬撃も打撃もほぼ無効か。炎には弱いのか?」
「液体に炎が効くのはその火力次第だろう。並み大抵の炎も効かん。言っておくが東にいけば
そんな奴ゴロゴロいるぞ。わかってるのか?」
「いや……魔王種が多くはいるんだろうな。俺の老師も魔王種だし」
「……多少はわかってるようだな」
「だめでございますよ。この紅茶が入るまではゆっくりお話ししておいてほしいのでございます」
アメーダはどこから取り出したのか、容器と茶入れ、それにお湯まで用意してある。
お湯は別の入れ物にいれてあり、温度を調べているのか湯の入っている方の容器とにらめっこしている。
「あんた……それ一体どこにしまってたんだ」
「アメーダの肩のこの子の中です」
「ぱーみゅ!」
「あれ? パモ! いつの間に外にでてたんだ?」
「ぱみゅ?」
「最初からでございますよ。アメーダのここにいれておりましたので」
アメーダの服はフード状になっており、そのフードの中にいれていたようだ。
それを見たプリマが狼から手を放してパモにとびかかる。
「うひゃー、こいつもふかふかだ。なぁ、プリマのフードにも入ってみるか?」
「ぱーみゅ!」
あれ、そういえばプリマは一度もフードを取ってなかったな。
素顔を見るのは初めてだが……。
「あ……れ。何で獣人なんだ……」
「プリマは原初の幻魔と獣人とのハーフだぞ」
これは驚いた。こいつは純白の猫のような白耳がついてる。
どちらかというと猫というより……兎の耳か? いや、もっと長いな。
「ラングっていう絶滅した種族の耳でございますよ。あなた様が想像する兎というものに
とても近しい、愛らしい種族でございました」
「えっへへー。どうだ、よく聞こえる耳なんだぞ」
「驚いた。てっきりメルザと同じだと思っていたよ」
「おいおい。それはいいけどよ。なんでうちのピールがあいつにそんな懐いているんだ?」
「獣人だからじゃないか?」
「そんなわけねーだろ……こいつは狼族とだって仲良くはしねー。あのピールが腹見せてるとこ
なんて、俺の前以外では初めてだよ……考えるの、馬鹿らしくなってきたわ。茶、もらうよ」
「ふふふ。ルーンの町で見つけた素晴らしい紅茶というものをお出しするのでございます。
適温は七十度で六十秒でございますか。万事お任せを」
手際よく茶を淹れていくアメーダ。
こんな立派な執事、借りてよかったのか? シカリーに返したらそれはそれで凄く残念な気持ちに
なりそうだ。
「ふふふ、これぞパーフェクト・ティー・タイムに相応しい紅茶……でございます」
早変わりしていた。
どこからもってきたんだ? と思ったが、ルーンの町には既に多くの商品が販売されている。
アメーダであれば物々交換などで簡単に物を仕入れる事は出来るだろう。
このデザインは間違いなくフォモルさんの娘、フォニーさんだ。
俺がベルローゼ先生の名前の美しさを語った事があった。
ベル……つまり鈴とローズ……薔薇をかけ、漆黒の鈴薔薇と表現し、少し絵を描いて見せた
事があった。
感動のあまりブツブツと念仏のような物を唱えていたのをわずかに覚えている。
そして……そのエプロンには漆黒の鈴と美しい薔薇をあしらったワンポイントが刻まれ
ベルローズとちゃっかり刻印まで入っている。
「そもそもベルローズって薔薇は実際にあって、ピンク色なんだよな……」
「何か? こちらのお召し物、いかがでございますか?」
「似合っていると思うぞ。アメーダは奉仕活動をよくするから、エプロンが気に入ったのか?」
「こちらはルーンの町を少々拝見したときに、おすすめされたものでございます。アメーダの役割や
好みを伝えると、熱心に進めてきたのでございますよ。汚れてもすぐ洗えるという一品でございますね」
「あーははは……似合ってるからいいんじゃないかな。それで、なぜそんな恰好を……」
「お忘れでございますか。そちらの方と親身になり、本当のお名前を聞くのでございましょう?
でしたらパーフェクト・ティー・タイムが必要ではございませんか?」
「パーフェクト・ティー・タイム? 何でそんな言葉知ってるんだ」
「あなた様は読みやすいのでございますよ」
「人の考えを勝手に覗くな! そんなんで好感度が上がるのはゲームの話だぞ!」
「さっきから二人で何ブツブツ言ってるんだ。それで、お前の話ってのは」
「いや、少し待ってくれないか。飲み物を提供したいらしいんだ」
「……飲み物? 今日あったばかりのやつから飲み物なんてもらえないね。まぁ無機人の俺には毒なんか
効きゃしないがな。物理攻撃もほぼ効かん」
「スライムみたいなもんだって言ってたしな。斬撃も打撃もほぼ無効か。炎には弱いのか?」
「液体に炎が効くのはその火力次第だろう。並み大抵の炎も効かん。言っておくが東にいけば
そんな奴ゴロゴロいるぞ。わかってるのか?」
「いや……魔王種が多くはいるんだろうな。俺の老師も魔王種だし」
「……多少はわかってるようだな」
「だめでございますよ。この紅茶が入るまではゆっくりお話ししておいてほしいのでございます」
アメーダはどこから取り出したのか、容器と茶入れ、それにお湯まで用意してある。
お湯は別の入れ物にいれてあり、温度を調べているのか湯の入っている方の容器とにらめっこしている。
「あんた……それ一体どこにしまってたんだ」
「アメーダの肩のこの子の中です」
「ぱーみゅ!」
「あれ? パモ! いつの間に外にでてたんだ?」
「ぱみゅ?」
「最初からでございますよ。アメーダのここにいれておりましたので」
アメーダの服はフード状になっており、そのフードの中にいれていたようだ。
それを見たプリマが狼から手を放してパモにとびかかる。
「うひゃー、こいつもふかふかだ。なぁ、プリマのフードにも入ってみるか?」
「ぱーみゅ!」
あれ、そういえばプリマは一度もフードを取ってなかったな。
素顔を見るのは初めてだが……。
「あ……れ。何で獣人なんだ……」
「プリマは原初の幻魔と獣人とのハーフだぞ」
これは驚いた。こいつは純白の猫のような白耳がついてる。
どちらかというと猫というより……兎の耳か? いや、もっと長いな。
「ラングっていう絶滅した種族の耳でございますよ。あなた様が想像する兎というものに
とても近しい、愛らしい種族でございました」
「えっへへー。どうだ、よく聞こえる耳なんだぞ」
「驚いた。てっきりメルザと同じだと思っていたよ」
「おいおい。それはいいけどよ。なんでうちのピールがあいつにそんな懐いているんだ?」
「獣人だからじゃないか?」
「そんなわけねーだろ……こいつは狼族とだって仲良くはしねー。あのピールが腹見せてるとこ
なんて、俺の前以外では初めてだよ……考えるの、馬鹿らしくなってきたわ。茶、もらうよ」
「ふふふ。ルーンの町で見つけた素晴らしい紅茶というものをお出しするのでございます。
適温は七十度で六十秒でございますか。万事お任せを」
手際よく茶を淹れていくアメーダ。
こんな立派な執事、借りてよかったのか? シカリーに返したらそれはそれで凄く残念な気持ちに
なりそうだ。
「ふふふ、これぞパーフェクト・ティー・タイムに相応しい紅茶……でございます」
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる