768 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断
第六百八十八話 質問権と願い
しおりを挟む
ロブロードに勝利した俺は、ピースを奪う事を拒否した後、二つの質問を最初に行った。
質問内容は俺の仲間であるミズガルドが無事かどうか。
それとここで一体何をしているのか……だ。
ヨーゼフの安否という形で聞いてもよかったのだが、そちらは本名を知らない。
正確に俺の探しているヨーゼフと一致するかもわからないからだ。
「まず一つ目の質問。君の仲間は無事……というか無傷だ。
ただ領域に閉じ込めてある。君が叫べば声は聞こえただろう。音を定期的に取り込むように
してあるからね。ここで何をしているかは簡単だ。ある男を君の仲間事領域へ取り込んだ。
探し人の一人だと確信していたんでね」
「それはヨーゼフという男で間違いないか?」
「質問権は二つまで。もっと色々深い事を聞くのかと思ったよ」
「俺にとってはビーが無事化どうかが大事だったんでね。それじゃ次は願い事を」
「ああ。あくまで出来る範囲でだ。それが契約というもの」
「しかし今、あなた様はシカリー様の使命の真っ最中でございま……」
「だまれ。シカリーならいざ知らず、アメーダが口を挟むなよ」
「う……その通りでございますね……」
少ししゅんとなるアメーダ。やはり上下関係がある世界なのか……シカリーとプリマは
対等な関係のようだが……。
「願い事をするにあたって、可能かどうかを判別したいんだけど、これも質問権とやらに
入るか?」
「それは問題ないよ。不可能なのはプリマの都合だしね」
「それじゃプリマはシカリー、イネービュとのいざこざを、今後全てロブロードで
決めるようにする……というのは可能だろうか」
「……は?」
「だから、願いの一つは今後、シカリーやイネービュなどの絶対神と、殴り合い殺し合いで争う
のをやめて、ロブロードで争えって言ってるんだよ」
「……くそ。可能だよ、それは……」
「それじゃ一つ目はそれだ。次は二つ目の願いだ」
「ちょっと待ってくれ。もっと他にあるだろ? 君が勝って得た願いだぞ? なんだその願い事は。
元々人間じゃないのか? 欲望はどうした。金は? 力が欲しいとかは?
権力がいいんじゃないのか? 君は男だろう? 女が欲しいとかないのか?
数千人の忠実な奴隷は? 君だけが使える領域は? あるだろう? もっともっと」
「あんたの言う通り、確かに元々はか細くひ弱なただの人間。神からすれば石ころも同然だろう。
石ころがそんな大それた望みを持つもんじゃない。あんたが言うものは俺には必要ない」
「なぜだ……?」
「そんなものがあっても、俺は幸せにはなれない。そして、無理やり叶えた願いじゃ、あいつは
喜ばない。だから俺は、あんたたちがこうあって欲しいと思うものを望む。
崩落の領域を、俺たちの領域のルールに従うと約束して繋げてくれ。それが一番手っ取り早い」
「……ふふふふ、アーッハッハッハッハッハッハ! 何だこいつ。本当に面白い。
プリマの領域と、君の領域を繋げる? そんなことして誰に得があるんだ?」
「俺に得がある。その方が……楽しそうだろう?」
「楽しい……楽しいか」
「それにだ……あんたの好きなロブロードにおいて、恐らく最強の相手が俺の領域にいる」
「何?」
「そいつは両目が見えない。だが感覚は誰よりも鋭いと断言しよう」
「へぇ……つまりそいつを倒せばプリマが一番のロブロードの覇者ってわけだ。いいね、それ」
「ちなみにイネービュもシカリーもかなりやるようだぞ。そっちは好きに楽しんでくれ」
「くっ……はっはっはっは! プリマ様。どうやら一本取られたでしょうや」
「うるさいな! ……その願いの答えは可能だ。でも一つだけ言っておくぞ。絶対神のやった事は
許せる事じゃない。プリマたちは安息に暮らしていたんだ。それを踏みにじったのはあいつらだ」
「確かブネが言っていたな……アルカイオス幻魔には敬意を払え……だったか」
「ふん。敬意を払ったところで、死んだ多くの同胞は帰ってこない。神は死を意識しない。
あってしかるべきものだと言う。我々に残った種族は、一部の死霊族と、始祖の末裔だけだ」
「始祖の……末裔……か。別に絶対神を恨んでいてもいいだろうし、シカリーと直接仲良くしなくたって
いいんじゃないか。人だってわだかまりの中、生きていくやつも大勢いる。領域は繋げるがベッドで
隣り合わせにして寝ろってわけじゃないんだ。一つの大きな町で互いにぶつかり合う時はゲームの上で。
それ以外は話し合いの場を設けて決めればいい。美味い飯や好きなら酒でも飲んで、語り合えば
いいじゃないか」
「それが出来ないから、人間は争うのだろう? 誰しもが自分の事ばかり。欲に塗れて醜く
生きているじゃないか」
「全てがそういうわけじゃない。権力を握った奴次第で変わる事もある。
本当に醜いのは一部だけだった。俺は何人もの優しい人たちに救われた事があるよ」
「……それならさぞ、君の町は優しい人ってのがいるんだな……嘘であって欲しかったけどね。
君が嘘をついていた瞬間、プリマは君を殺していた。しかし一度もその手は伸びなかったようだ……」
プリマには悪いと思ったが、後半俺の頭の中はメルザで一杯だった。
そうか。やっぱりメルザは特別な存在だったんだな。
アルカイオス幻魔、始祖の末裔。
ヨーゼフに会え……か。
会うのが怖くなってきた。
だがここで逃げるわけにはいかない。
話を……聞いてみよう。
俺が少し上の空だったことに気づいてか、プリマが席を立ち、こちらへ近づいてきた。
質問内容は俺の仲間であるミズガルドが無事かどうか。
それとここで一体何をしているのか……だ。
ヨーゼフの安否という形で聞いてもよかったのだが、そちらは本名を知らない。
正確に俺の探しているヨーゼフと一致するかもわからないからだ。
「まず一つ目の質問。君の仲間は無事……というか無傷だ。
ただ領域に閉じ込めてある。君が叫べば声は聞こえただろう。音を定期的に取り込むように
してあるからね。ここで何をしているかは簡単だ。ある男を君の仲間事領域へ取り込んだ。
探し人の一人だと確信していたんでね」
「それはヨーゼフという男で間違いないか?」
「質問権は二つまで。もっと色々深い事を聞くのかと思ったよ」
「俺にとってはビーが無事化どうかが大事だったんでね。それじゃ次は願い事を」
「ああ。あくまで出来る範囲でだ。それが契約というもの」
「しかし今、あなた様はシカリー様の使命の真っ最中でございま……」
「だまれ。シカリーならいざ知らず、アメーダが口を挟むなよ」
「う……その通りでございますね……」
少ししゅんとなるアメーダ。やはり上下関係がある世界なのか……シカリーとプリマは
対等な関係のようだが……。
「願い事をするにあたって、可能かどうかを判別したいんだけど、これも質問権とやらに
入るか?」
「それは問題ないよ。不可能なのはプリマの都合だしね」
「それじゃプリマはシカリー、イネービュとのいざこざを、今後全てロブロードで
決めるようにする……というのは可能だろうか」
「……は?」
「だから、願いの一つは今後、シカリーやイネービュなどの絶対神と、殴り合い殺し合いで争う
のをやめて、ロブロードで争えって言ってるんだよ」
「……くそ。可能だよ、それは……」
「それじゃ一つ目はそれだ。次は二つ目の願いだ」
「ちょっと待ってくれ。もっと他にあるだろ? 君が勝って得た願いだぞ? なんだその願い事は。
元々人間じゃないのか? 欲望はどうした。金は? 力が欲しいとかは?
権力がいいんじゃないのか? 君は男だろう? 女が欲しいとかないのか?
数千人の忠実な奴隷は? 君だけが使える領域は? あるだろう? もっともっと」
「あんたの言う通り、確かに元々はか細くひ弱なただの人間。神からすれば石ころも同然だろう。
石ころがそんな大それた望みを持つもんじゃない。あんたが言うものは俺には必要ない」
「なぜだ……?」
「そんなものがあっても、俺は幸せにはなれない。そして、無理やり叶えた願いじゃ、あいつは
喜ばない。だから俺は、あんたたちがこうあって欲しいと思うものを望む。
崩落の領域を、俺たちの領域のルールに従うと約束して繋げてくれ。それが一番手っ取り早い」
「……ふふふふ、アーッハッハッハッハッハッハ! 何だこいつ。本当に面白い。
プリマの領域と、君の領域を繋げる? そんなことして誰に得があるんだ?」
「俺に得がある。その方が……楽しそうだろう?」
「楽しい……楽しいか」
「それにだ……あんたの好きなロブロードにおいて、恐らく最強の相手が俺の領域にいる」
「何?」
「そいつは両目が見えない。だが感覚は誰よりも鋭いと断言しよう」
「へぇ……つまりそいつを倒せばプリマが一番のロブロードの覇者ってわけだ。いいね、それ」
「ちなみにイネービュもシカリーもかなりやるようだぞ。そっちは好きに楽しんでくれ」
「くっ……はっはっはっは! プリマ様。どうやら一本取られたでしょうや」
「うるさいな! ……その願いの答えは可能だ。でも一つだけ言っておくぞ。絶対神のやった事は
許せる事じゃない。プリマたちは安息に暮らしていたんだ。それを踏みにじったのはあいつらだ」
「確かブネが言っていたな……アルカイオス幻魔には敬意を払え……だったか」
「ふん。敬意を払ったところで、死んだ多くの同胞は帰ってこない。神は死を意識しない。
あってしかるべきものだと言う。我々に残った種族は、一部の死霊族と、始祖の末裔だけだ」
「始祖の……末裔……か。別に絶対神を恨んでいてもいいだろうし、シカリーと直接仲良くしなくたって
いいんじゃないか。人だってわだかまりの中、生きていくやつも大勢いる。領域は繋げるがベッドで
隣り合わせにして寝ろってわけじゃないんだ。一つの大きな町で互いにぶつかり合う時はゲームの上で。
それ以外は話し合いの場を設けて決めればいい。美味い飯や好きなら酒でも飲んで、語り合えば
いいじゃないか」
「それが出来ないから、人間は争うのだろう? 誰しもが自分の事ばかり。欲に塗れて醜く
生きているじゃないか」
「全てがそういうわけじゃない。権力を握った奴次第で変わる事もある。
本当に醜いのは一部だけだった。俺は何人もの優しい人たちに救われた事があるよ」
「……それならさぞ、君の町は優しい人ってのがいるんだな……嘘であって欲しかったけどね。
君が嘘をついていた瞬間、プリマは君を殺していた。しかし一度もその手は伸びなかったようだ……」
プリマには悪いと思ったが、後半俺の頭の中はメルザで一杯だった。
そうか。やっぱりメルザは特別な存在だったんだな。
アルカイオス幻魔、始祖の末裔。
ヨーゼフに会え……か。
会うのが怖くなってきた。
だがここで逃げるわけにはいかない。
話を……聞いてみよう。
俺が少し上の空だったことに気づいてか、プリマが席を立ち、こちらへ近づいてきた。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
【タイトル回収いつすんの?】この転生は呪詛と願いの狭間で。汝、魔王に任ず。
十輪かむ
ファンタジー
病弱だった主人公は現代日本で、自らの弱さへの失望と強さへの憧れの中で育ち、流行病に罹りあっけなくその人生を終える。
気付くとそこは灰色の空間。目の前に立つ男。男は言った。「お前とは共に面白い旅が出来そうだ」
再び主人公の意識は遠のき、目覚めるとそこは見知らぬ家。再生される、生まれてからそこへ至るまでの記憶。小さな手を見ながら確信する。異世界へ転生したと。
彼の名はリデル・カザク。魔力が支配する世界アルカナムはミドガルズ大陸。その中央の国エレスティア共和国の辺境に生まれ、前世日本の記憶を残す。母はオニ族、父はヒト族。魂には闇の神が合一される。
仕組まれた大いなる呪詛の中で翻弄されながらも、成長していく少年の物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
タイトル回収、それはロマンです。
冒険がしたい創造スキル持ちの転生者
Gai
ファンタジー
死因がわからないまま神様に異世界に転生させられた久我蒼谷。
転生した世界はファンタジー好きの者なら心が躍る剣や魔法、冒険者ギルドにドラゴンが存在する世界。
そんな世界を転生した主人公が存分に楽しんでいく物語です。
祝書籍化!!
今月の下旬にアルファポリス文庫さんから冒険がしたい創造スキル持ちの転生者が単行本になって発売されました!
本日家に実物が届きましたが・・・本当に嬉しくて涙が出そうになりました。
ゼルートやゲイル達をみことあけみ様が書いてくれました!!
是非彼らの活躍を読んで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる