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第四章 シフティス大陸横断

第六百七十五話 ガードネスクロウル戦 後編

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 ティソーナの言う通り、よく糸を見てみると単純な硬糸とはわけが違う。
 これは、鉱石か!? 糸そのものに金属が塗り固められてるってわけか。

「よりによって硬度が高い鉱石だ。まさか、この鉱山で採掘できたのはダイヤモンドか何かか?」
「あのモンスターはきっと鉱物を食べて成長したでごじゃろ。本体も相当な硬さかもしれぬでごじゃろ」

 上空からナナーとビュイの援護が始まる。しかし上部をかなり糸で固められ、攻撃を当てられる箇所は
きまっている。
 
「何か糸をうまく切断する方法は……」
「あるでごじゃろ。どれだけ鉱物を混ぜても糸は燃えるでごじゃろ」
「そうか、耐熱で言えばかなり火に弱い……ってこんな鉱山内で火なんて自殺行為なんじゃ」
「御前、氷術は使えるでごじゃろ? いざとなれば氷術で覆えばいいでごじゃろ」
「う……まぁやってみるか。変幻ルーニー! 炎熱モードだ」
「ホロロロー」

 ルーニーを上空に解き放つと、水が燃えるように糸へと絡みつく。
 すると糸はじょじょに燃えだし、糸を容易に消滅させる。その場所からはぱらぱらと白い粒のような
ものが落ちていた。
 ひとまず爆発の心配もないようだが、糸の数が多すぎる。
 
「ルーニーの範囲だけじゃ小さい。くそ、こんな時こそメルザがいれば……」
「泣き言をいっても仕方ないでごじゃろ。次の攻撃くるでごじゃろ!」

 数本の糸を焼いたところで焼石に水だ。糸で視界が悪くなったところに毒の放射物を吐き出した! 
 しかし……毒は途中で止まり、俺の方までは到達していない。

「やらせねえぜ! ちっくしょう俺を無視しやがって。なーんでこいつら俺たちをひたすら無視すんだ?」
「ツァーリさん。助かったよ……さっきの変な騎士、どこいったんですか?」
「あいつなら、ほれ。あっちだ」
「フガフガフガフガフ」

 おい、そっちは入り口方面に通じる道じゃないのか? 本当に役に立たないな、あれ。
 死神の遣いの方が役に立ちそうだぞ? 
 よそ見をしていたらエプタが怒鳴りつけてきた。

「おい! 何ぼさっとしてやがる! くそ、切れねえ。こいつぁ面子の選択を誤ったんじゃねえか。
イーファがいれば楽勝に切れただろ。この短剣の使い方もいまいちわからねえ」
「ホー君がいれば……くそ。思い出さないようにしてたってのに。エスパーダケマル!」

 再び迫り来る糸に灼熱の剣を打ち放つ。
 視界は悪くなる一方だ。このままじゃまずいのはわかってる。

 暴れ過ぎるな……か。使うなとは言ってない。
 ここはやはり、真魔解放しかない。
 
 そう思い、行動に移そうとした時だった。
 目の前に無数に広がっていた糸が全てバラバラと崩れ落ちた上、強烈な閃光がガードネスクロウルに撃ち放たれ、側面からなぎ倒される。
 
 俺の拳の上には美しい赤髪の女性が乗っていた。

「少々遅くなってしまったのでございます。こちらにいらっしゃったのでございますね。
もうまもなく泉ではございませんか。さぁとどめを。封印するのでございましょう?」

 とっさの出来事で動きが止まってしまったが、迷わずガードネスクロウルに近づき、コラーダを構えた。

「リーサルレデク」


 ギリギリとコラーダが手から離れていき、ガードネスクロウルを貫き……封印できた。
 苦戦を強いられると思ったが、なんて威力の技だ。
 あの硬い糸を全て吹き飛ばしたあれは一、体何の力だ? 

「アメーダ。助かった。信じられないくらい強いんだな……」
「そうでございますね。この大陸にいらっしゃって間もないあなた様、そして復活してまもないベリアル様
よりは強い……と思うのでございます」
「……なぜ俺たちに協力するんだ」
「そうでございますね。気に入った……というだけではお話がつきませんか。
付け加えるならば、我々死霊族にも利が多いから……ということでいかがでございましょう」
「……今は余計な事を考えるのはやめよう。信じるしかない。この力……全員殺されてもおかしくはない」
「そんな事、するはずございませんよ。ただ、そうでございますね。生命体は自分の命を掌握されている
感覚はお嫌いでございましょう。王女もいらっしゃらない事でございますし……しばらくは別の姿で
接するといたしましょう」

 ふわりと片手を上げ、クルクルと回転するアメーダ。
 どんどんと小さくなり、ちょうどナナーと同じ程度のサイズとなった。
 ……髪色といい少し、メルザと同じに見えてしまうな。

「さぁ、泉まで参りましょうか。おや……?」
「フガフガフガフガフガ」

 あ……ツァーリさんが招来したスカルナイトが戻って来た。
 いや戻って来たけども! 

「おい、ツァーリさん? あんたらはモンスターに襲われないって言ってたよな」
「ん? ああ。俺たちは襲われないぞ。呼び出したあいつは襲われるけどな! だっはっはっは」

 スカルナイトは入り口方面から大量のモンスターを引き連れこちらへ向かっているように見える。
 これ、まずくないか? 

「おいおい! あの招来術、消せないのかよ!」
「無理だぜ! 時間が経ったら消えるからよ。しばらくああやって動いてるぜ」
「ルーニー、戻れ! バネジャンプ! 全員封印に戻れ! 急いで泉まで向かうぞ!」

 全員を封印すると、骨蔵族とアメーダ、エプタと共に急いで泉方面へ逃げるように向かうはめになった。
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