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第四章 シフティス大陸横断

第六百六十七話 廃鉱山の奥へ

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 鉱山周辺を警戒しつつ、俺は廃鉱山の中へ進んだ。
 メンバーはエプタとビュイ、ナナー。封印内にはファナとドーグル。
 そして、置いていくなんてあり得ないと、サラ、ベルディア、レミがついてきてしまう。
 合間を見て子供の名前を決めるのにちょうどいい……のか? 
 廃鉱山内で子供の名前を決定したら怒られそうな気もする。
 
「おい、ぼーっとすんな。さっさと行くぞ」
「待てって。かなり暗いだろ? 何か明りになるようなものないか?」
「おめえの封印者の能力使えばいいだろ。いい加減おめえには呆れるぜまったくよ」
「そうは言ってもな……ここまで進撃を重ねてきたんだ。全員の能力をまともに
考える余裕もなく……だ。しかも今はバラバラだから把握も難しいし。
パモに燃斗でも頼むか……いや、鉱山内で火とかあり得ないな」
「おめえ……案外洞察力にかけるな。見てる時は見てやがるってのによ。
いいか! 一度だけだ。それ以降はてめえで考えろ。なんで角に眼があるかよく考えてみやがれ」
「角に……眼? ナナーのことか? おいナナー。封印されたままでいいから
返事してくれ。ナナーはこの中、よく見えるのか?」
「よく見えるだ。暗いところは得意だ」

 角眼鬼族ってのは角部分にそんな力があるのか? 人の構造だと虹彩の
影響により瞳孔の大きさを変化して光を取り込み見えるようにするが、角眼鬼族
の角部分の眼は機能的に違うのかもしれない。或いは魔を行使する力であれば、幻魔神殿による
ジョブの影響と似たようなものか。あれは幻術の部類だろうからまた異なるものだと
思うが……。

「絶心剣……来い。おい、先にいくぜ。俺ぁ斥候だからな。後から来い」

 ナナーの能力を確認しようとしていると、エプタは前にベルドと戦った時に
見せた一本の剣を呼び出し、すたすたと暗い鉱山内へ進んでいった。
 
 ……大分慣れたとはいえやっぱり一人好きなんだろう。
 だが……突然あたりの石が空中に浮かび、エプタ目掛けて飛んでいく。

「いてっ! おいてめえ何のつもりだ!」
「いや、俺じゃない。ドーグルだ」
 
 こっちだって驚いている。エプタに石をぶつけて正面から喧嘩を売るなんて……
いや当たったのは背面なんだ。だがそういうことじゃなくてだな。

 そして直ぐにドーグルが外に出てご立腹モードだった。

「わらが何度も言っているだろう。勝手に先へ進むなと。
次にやったら石を投げると確かに伝えてあったはずだぞ。そして
【やれるものならやってみな。そんな石くらうわけねえけどな】だったか」
「……っ! ふん、うるせえな待っててやるよ。それにくらったのは
わざとだぜ。勘違いすんなよ!」
「いや、あれはどう見ても素だったぞ」
「何言ってやがる。おめえはちゃんと見えてねえだけだろ! さっさと能力行使しやがれ!」
「あ、大分わかってきた。ナナーの能力……」
「ルインよ。ちみは頭に角が生えた事に気づかないのか?」
「えっ?」

 俺は額部分を触ってみると……中二心をくすぐるような立派な角が生えていた。
 後はここから雷でも打ち出せれば完璧だ。
 金棒を持って閻魔をいたぶる補佐官役も捨てがたい。

「おい何にやついてやがる。頭でもおかしくなったか? 
見えるようになったらさっさといくぞ。おめえが先にいけ」
「あ、ああ。ドーグル、戻ってくれ。ファナたちも随分と大人しくしてるが、あんまり
外に出てると勝手に出てきそうだし」
「大丈夫だ。かなりの身重だぞ。道中全力で補助する。
わらの力も試してみるといい」
「ああ!」

 ドーグルの念動力は以前より封印内で行使……してもらっている。
 自分で念動力を使った事は無い。
 こちらも後々行使させてもらおう。
 皆の力を得て戦える。これは非常に心強い。
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