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第四章 シフティス大陸横断
第六百五十三話 なぜ言い訳をしているのか
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列に並んでいると、不意に見知った顔が見えた。
あれは……レッジか? こんなところで何をしているんだろう。
いや、それは俺も同じか。
どうやらこちらに気づいたようで、青い顔をして走って来た。
「シーさんじゃないか! 一体ここで何をしてるんだ」
「レッジだよな、中に入ろうとしたら横入りになるから、並んでるんだよ。それにしてもその恰好は?」
レッジはエプロンに鉢巻をして、見るからに店員のような恰好をしていた。
手伝いでもしているのだろうか。
「しばらく正式に手伝う事になってね。妹と一緒に働いているんだ。
それより……そちらの女性は? どこかで見たことがあるような、無いような……」
「ここで詳しい話はちょっと……中に入ったらするよ。それにしても凄い行列だな」
「おいおい何を言ってるんだ? 君は客じゃなくて従業員側なんだから、こんなところで
並ぶ必要はない。はい、これを上からかけて……そっちのお嬢さんもだ」
「私がでございますか?」
「ああ。これを掛けてれば並ぶ必要はないぞ」
前掛けのようなものを上から掛けると、直ぐに中へ向かうように指示される。
レッジはそのまま列の最後尾の方へ向かい、後方の人に終了の札を渡して、そこから先は
終了と告げ、終わりの木札を立てた。
言われた通りに前列へ向かうと、すんなりと中へ入る。
店内は大賑わいどころではなかった。
皿が宙を舞っているのだ。
さらに厨房には牛鬼がいた。
俺は目をごしごしとやるが、どうみても牛鬼だ。
さらにモモンガのような動物が料理を運んでいた。
どうやら来る店を間違えたらしい。
その恐ろしい店内に一人の見覚えのある女性がいた。
レッツェルだ。
「特製シチュー、早く運んで!」
「レッツェル……だよな? 久しぶりだ。大分元気になったみたいでよかった」
「あーーー! えっと、旦那、そう旦那来たわよー! 今忙しいから! あ、それ二十番テーブルだから!」
「なんか、手伝おうか……」
「本当? それじゃこれとこれとそれを……あれ、でも女性を連れて……あれ? 大変よ!
やっぱりあなたたちの言ってた通り知らない女ひっかけてきたわー!」
しかしほぼ誰も聞いている感じではない。
俺の嫁たちは一体どこへ。
いやまさかあの牛鬼がファナということはないだろうし、吊り糸で皿をつってるのがサラとう
事もないし、モモンガを操ってるのがレミってことも無いだろう……。
さすがに気づいた牛鬼が慌てて元に戻ろうとしていたが、直ぐに次の注文が入る。
真っ先に来るはずのサラも来ない。
ひとまず厨房の奥へ向かう事にした。
「女将さん、いますか?」
『あーーーー!』
奥にいたのはレミとサラ。女将さんは見当たらず、ブネとエプタも見当たらなかった。
「パパ、やっと帰って来たわよ。もう! 先に産まれるかと思ったじゃない」
「レミちゃん待ちくたびれちゃったぁー。こんなにお腹大きくなったけど、忙しいから休めなぁーい」
「二人とも……そうか、こんなにお腹大きくなるんだな。あれから何日経ったか計算がおいつかない
が、出産まであとどのくらいだ?」
「えっとね。予定だと十九日後?」
「でも多少前後はするみたいだって、ブネさんがいってたよぉー。ファナは結局調理しないと
いけないからぁ、牛鬼に変身して厨房にたってるけどねー。キャハハハ」
「ブネやベルディアはどこに?」
「ベルディアはメナスにつきっきりよ。早く会ってあげて。ブネハエプタと一緒に警戒態勢のままよ。
ところで……一体そちらのメルザのような髪色のお嬢さんはどうしたのかしら? まさか
とは思うけど新しい嫁じゃないわよね?」
「メルちゃんに髪色似てる似てるー! いくらメルちゃんがいないからってぇー。ナンパはしちゃ
だめじゃないー?」
「いや、ミレーユ王女なんだが、わけあってミレーユ王女じゃないんだ……」
『はぁ?』
「ごもっともな返しだが、本当なんだ。話せば長くなる……あれ? 何で俺、浮気の言い訳をする男みたいな
返ししないといけないんだ?」
これっぽっちも浮気とかではないのに。
これは全員に説明するのが大変そうだな……。
「そうそう、それともう一つ……ブレディーを復活させる鍵も王女らしいんだよ。その辺の詳しい話は今晩する。夜は忙しくなりそうか?」
「ううん。私たちは昼間の手伝いだけよ。夜はレナとレッジさん、レッツェルさんが店内で受け持ってくれるから大丈夫。私たちは旦那が戻るまでの契約だったの。お金いーっぱい稼いじゃった。でもライラロさんの
借金が払える程じゃないわね……」
「そのことなんだが、メイズオルガ卿に取り合ったところ、借金は不要らしい。だから稼いだお金は各自
好きに使ってくれ。老師はそういえばどこに?」
「荒稼ぎに行ったまままだ戻らないわ……ライラロさんはアネさんと一緒にルーンの町に戻ったし……」
「そ、そうか……老師には悪い事をしたな。そちらも招集をかけたいんだけど」
「それはレミちゃんにお任せ~、モモンガちゃんに頼んでおくね。それじゃまた夜にね」
あれは……レッジか? こんなところで何をしているんだろう。
いや、それは俺も同じか。
どうやらこちらに気づいたようで、青い顔をして走って来た。
「シーさんじゃないか! 一体ここで何をしてるんだ」
「レッジだよな、中に入ろうとしたら横入りになるから、並んでるんだよ。それにしてもその恰好は?」
レッジはエプロンに鉢巻をして、見るからに店員のような恰好をしていた。
手伝いでもしているのだろうか。
「しばらく正式に手伝う事になってね。妹と一緒に働いているんだ。
それより……そちらの女性は? どこかで見たことがあるような、無いような……」
「ここで詳しい話はちょっと……中に入ったらするよ。それにしても凄い行列だな」
「おいおい何を言ってるんだ? 君は客じゃなくて従業員側なんだから、こんなところで
並ぶ必要はない。はい、これを上からかけて……そっちのお嬢さんもだ」
「私がでございますか?」
「ああ。これを掛けてれば並ぶ必要はないぞ」
前掛けのようなものを上から掛けると、直ぐに中へ向かうように指示される。
レッジはそのまま列の最後尾の方へ向かい、後方の人に終了の札を渡して、そこから先は
終了と告げ、終わりの木札を立てた。
言われた通りに前列へ向かうと、すんなりと中へ入る。
店内は大賑わいどころではなかった。
皿が宙を舞っているのだ。
さらに厨房には牛鬼がいた。
俺は目をごしごしとやるが、どうみても牛鬼だ。
さらにモモンガのような動物が料理を運んでいた。
どうやら来る店を間違えたらしい。
その恐ろしい店内に一人の見覚えのある女性がいた。
レッツェルだ。
「特製シチュー、早く運んで!」
「レッツェル……だよな? 久しぶりだ。大分元気になったみたいでよかった」
「あーーー! えっと、旦那、そう旦那来たわよー! 今忙しいから! あ、それ二十番テーブルだから!」
「なんか、手伝おうか……」
「本当? それじゃこれとこれとそれを……あれ、でも女性を連れて……あれ? 大変よ!
やっぱりあなたたちの言ってた通り知らない女ひっかけてきたわー!」
しかしほぼ誰も聞いている感じではない。
俺の嫁たちは一体どこへ。
いやまさかあの牛鬼がファナということはないだろうし、吊り糸で皿をつってるのがサラとう
事もないし、モモンガを操ってるのがレミってことも無いだろう……。
さすがに気づいた牛鬼が慌てて元に戻ろうとしていたが、直ぐに次の注文が入る。
真っ先に来るはずのサラも来ない。
ひとまず厨房の奥へ向かう事にした。
「女将さん、いますか?」
『あーーーー!』
奥にいたのはレミとサラ。女将さんは見当たらず、ブネとエプタも見当たらなかった。
「パパ、やっと帰って来たわよ。もう! 先に産まれるかと思ったじゃない」
「レミちゃん待ちくたびれちゃったぁー。こんなにお腹大きくなったけど、忙しいから休めなぁーい」
「二人とも……そうか、こんなにお腹大きくなるんだな。あれから何日経ったか計算がおいつかない
が、出産まであとどのくらいだ?」
「えっとね。予定だと十九日後?」
「でも多少前後はするみたいだって、ブネさんがいってたよぉー。ファナは結局調理しないと
いけないからぁ、牛鬼に変身して厨房にたってるけどねー。キャハハハ」
「ブネやベルディアはどこに?」
「ベルディアはメナスにつきっきりよ。早く会ってあげて。ブネハエプタと一緒に警戒態勢のままよ。
ところで……一体そちらのメルザのような髪色のお嬢さんはどうしたのかしら? まさか
とは思うけど新しい嫁じゃないわよね?」
「メルちゃんに髪色似てる似てるー! いくらメルちゃんがいないからってぇー。ナンパはしちゃ
だめじゃないー?」
「いや、ミレーユ王女なんだが、わけあってミレーユ王女じゃないんだ……」
『はぁ?』
「ごもっともな返しだが、本当なんだ。話せば長くなる……あれ? 何で俺、浮気の言い訳をする男みたいな
返ししないといけないんだ?」
これっぽっちも浮気とかではないのに。
これは全員に説明するのが大変そうだな……。
「そうそう、それともう一つ……ブレディーを復活させる鍵も王女らしいんだよ。その辺の詳しい話は今晩する。夜は忙しくなりそうか?」
「ううん。私たちは昼間の手伝いだけよ。夜はレナとレッジさん、レッツェルさんが店内で受け持ってくれるから大丈夫。私たちは旦那が戻るまでの契約だったの。お金いーっぱい稼いじゃった。でもライラロさんの
借金が払える程じゃないわね……」
「そのことなんだが、メイズオルガ卿に取り合ったところ、借金は不要らしい。だから稼いだお金は各自
好きに使ってくれ。老師はそういえばどこに?」
「荒稼ぎに行ったまままだ戻らないわ……ライラロさんはアネさんと一緒にルーンの町に戻ったし……」
「そ、そうか……老師には悪い事をしたな。そちらも招集をかけたいんだけど」
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