上 下
728 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第六百四十九話 青の目覚め

しおりを挟む
 アメーダに連れられ再び転移した先は、もとの場所よりずれた場所だった。
 既にアースガルズに近い場所であり、気を遣ってくれたのかもしれない。

「こちらはお時間を取らせたほんのお詫びでございます。と言いましても
さほどお時間は経過していません」
「ほぼアースガルズ付近……これなら大幅な時間短縮となる。ありがたい。今のところ付近にもモンスターはいないようだ」
「いえいえ。それにしてもあなた様は落ち着いていらっしゃいますな。
私を見る者は大抵、恐怖の念にとらわれる者でございますが……」
「どの辺りが? どこからみても美しい髪の女性としか見えない」
「あなた様にはそのように見えるのですな。対象をを見る時、その見かたにより大きく変わる
ものでございます。紅色の髪を見て恐怖を覚える者もいれば、そのように感じるものも
いるということでございます。私は恐怖の象徴となりえるのでございますよ。
しばらくはそちらの喋れない王女様の代わりに私が王女となり、喋り、意思を伝えるとしましょう。
これは王女自身が喋れるようになるために必要な事。
シカリー様の褒美の一つでございます」

 するとフッと消えたアメーダ。
 移動したのではなく完全に消えたと感じた。
 するとしばらくして、王女の髪色が紅色へと変わっていくのが見えた。

「お、おい。本人の意思も確認せず……」
「いいのです。お気にせずとも。私はあなたに付き従うように言いつけられた、しがない王女。
魔を行使することしかできないでくの坊なのですから……でございますか。少々悲観的でございますね」
「……それが王女の意思か? 人の意思を読むというのは、見ていて気持ちのいいものじゃないな。
王女がいいというのならそれでいいのだが……」
「……あなた様はどうも嫌われているようでございますね。しばらくは私の意思で話させていただきましょうか」

 嫌われている事に心当たりは無い。
 それに王女を連れて町中を歩くのには変装が必要で、狙われる事も想定していたが……これなら
誰も王女だとは気づかないだろう。
 アメーダのお陰でもあるが、厄介事に巻き込まれたのは間違いない。
 そもそもアメーダに運ばせれば済む事じゃない……んだろうな、きっと。
 俺をその場所へ連れて行かせるのが目的か。
 或いは死霊族がその場所へ行けない理由があるのか。
 どちらも不明だが、まずはブネと合流し、皆の安全も確認しないと。

「なぁなぁ、お腹空いただ。ご飯無いだ?」
「死霊族の場所に土産がないのは残念だったな」
「おやおや皆さんお腹が空いているのでございますな。それでしたら私が料理をして差し上げましょう。
古来より伝わる料理でございます」

 そんな話をしていた時だった。ようやく……意思が感じ取れた。
 外に出たいという意思だが、体が思うように動かないようだ。
 
「その前に……幻奥の青が起きた様だ。大分傷も癒えたのか、少し話がしたいらしい。
特にビュイ。お前とだ」
「私と話がしたいと? 幻奥の青とはあった事がないぞ?」
「そうなのか? あちらはお前の事を知っているような感じだったが……」
「うむ。我ら四幻はそれぞれ異なる場所を管理していた。あった事はないはずだ」
「とにかく今は外に出す。すまないがアメーダは料理を頼めるか?」
「ええ、もちろんでございます。食材もこの辺りで調達できそうなので、行ってまいります」
「ナナーも行くだ! 彰虎と白丕、ルジリトも手伝ってほしいだ」

 各々少し休憩をするため行動をとってもらう。
 俺は幻奥の青を封印から出すと、まだ傷だらけの体をいたわり、手を貸してやった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...