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第三章 幻魔界
第六百三十三話 協戦
しおりを挟む三匹のラージャ。その能力を推し量るのは難しい。
対峙した情報は多少持っているが、その力は未知数。
しかも今回は途中まで耐えればいいというものではない。
敵として認識されているのは間違いないだろうが……目的が見えない。
しかし、退けるしか今は手立てがないだろう。
ルジリトによれば、あのブレスは危険などという簡単な言葉で終われるものでは無いと判断。
つまり囮として使えばそのものは消滅死を免れないので不可能。
ただ、能力の一端として用いる事ができる妖魔の術を駆使できないかという
提案。
さらに、ラージャのブレスが強力ということは直線状で同時に放つことは不可能。
極力広げさせないように対象を誘導……最大の火力を用いて貫通させれば
一網打尽に出来る可能性が俺にならあるという。
「面白ぇ。やっぱり参謀ってのは最高だな。気に入ったぜルジリト。
全身全霊をもって応えてやるよ! 妖氷雪造形術……氷雪魔鬼。ベースはお前だ、ナナー。
アイスノー・ナナ・ゾディアック。星を見、星を願え。上空の視界を潰し居所を
わかり辛くしろ」
巨大な角、その角には大きな目がある氷の巨大な魔人を造形する。
その巨体は大きく息を吸い込むと、口から吹雪を吐き出し、視界を一瞬で悪くする。
「妖炎造形術……朱魔鬼……ヴァーミリオン・サーシュ・ゾディアック。
ナナと離れて行動しな。最上空から奇襲をかけろ」
飛翔する朱色に燃えるソレは、美しい色の炎を舞い散らせながら、素早く宙返りを繰り返し
移動を開始した。
「ルーニー。今一度頼むぜ。サーシュを纏い、サーシュと共に動け」
「ホロロロー!」
さらにその朱色の炎へルーニーを纏わせることで、より炎の勢いが増す。
「妖土造形術……玄魔鬼盾……ビュイ・ゾディアック。用途は違ぇが……力を借りるぜ」
巨大な甲羅を持つ抜群の耐久性を誇る緑色の美しい盾を構築する。
「今できんのはここまでだな。さて……」
上空にサーシュ、地上にナナーを要し、ティラーナと盾を構えながら
三匹のラージャの動きを警戒する。
一度目のブレスを撃ってからはこちらの様子を伺っているようだった。
「視界を相当潰したからな。星の力でかなりのもんに仕上がったじゃねえか」
地上のナナー・ゾディアックは更に息を吸い込むと、上空離れたラージャに向け
強烈なスノーブレスを撃ちつける。
絞り込まれた吹雪が螺旋を描きながら、ラージャの一体を捉えた。
更に上空高々と飛翔したサーシュの炎体は、見えぬ程の速さでラージャへと突撃していく。
揺らめく朱色の炎が空中に焼け跡を残すようにぶれて見えた。
「んじゃ俺も行くとするか。ちっとばっかし扱いがちげえが、足場が欲しいんで……な!」
勢いよく右腕に持つ玄の盾をラージャ方面にぶん投げた。
その上に飛び乗ると、緑色の光線を発しながら加速して一直線にラージャへと向かっていく。
いくら玄の盾が硬そうだとはいえ、くらえば消滅は免れないだろう。
なら武器として使った方がいい。
そう判断して攻撃を開始したが、正解だったようだ。
ラージャは未だに動かない。一匹はサーシュの方向へブレスを放つ構えを取っている。
しかしあいつらを捉えるのは容易ではないうえ、空高くブレスを放つ事になる。
残る二匹は直列に並んでおり、うち手前の一匹はまだこちらを探している動きが見て取れた。
「この盾で二枚抜きできるとは限らねえ。それにこのまま攻撃できるはずもねえ。
実行に移すぜ、ルジリト! 策、西方の白、牙となり我を覆いつくせ」
左腕から肩にかけて、虎の牙を思わせるような美しい腕甲で覆わせ、右手
を後方に構える。
「沖、彰、パモ! おめえらの力も借りるぜ! 玄の盾から離脱する!
いいか全力で後方へ風をおこしやがれ! 彰、てめえの体感の強さを借りるぜ。
爆風を受けた体を安定させろ! 放て!」
右手から大量の風を放出する。ただでさえ勢いよく飛翔している玄の盾から
より前上方へと体を持っていく。
「ふふふ、おめえら……最高かよ!」
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