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第三章 幻魔界
第六百二十六話 封印内でできること
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「ここが転移の場所……瘴気で満ち溢れていてとても中に入れそうにないが……」
「このままでは難しいですな。さてどうしますか」
辺り一面瘴気が噴き出している。特に転移すると思われる場所はこの位置からではまったく見えない。
まず瘴気を吹き飛ばす必要があるが……地面から噴き出す瘴気を吹き飛ばしたところで、直ぐに転移できなければ意味がない。
クリムゾンが斬撃を飛ばしてみるが、やはり瘴気が舞い上がるだけで消えはしない。
土質そのものを変えてみるか……。
まずは彼の力を借りよう。
「ルジリト。出てきて知恵を貸して欲しい」
「はい。仰せのままに」
ルジリトを封印から出して話を聞いてみることにした。
彼は白丕の参謀をしていたようだし、幻魔界にも詳しいだろう。
「例の転移場所が瘴気で充満してしまっているんだ。何かいい打開策はないかな」
「そうですな。この状況……一時的に大きな壁や土で瘴気を封鎖してしまえば
転移可能となるでしょうが、そういった術はお持ちでは?」
「パモ。出てきてくれ。確か幻土術、使えたよな?」
「ぱーみゅ!」
「ふむ。後は沖殿にもお願いしてみてはいかがですか。彼も優秀な幻術使いですぞ」
「あの青白い虎か。そういえば能力はわからず終いだったな」
それを聞いて、答えを出すまでもなく沖虎が出てくる。
膝をつき合掌をしたまま出てくるその姿は、忠義に溢れていた。
「及ばずながらこの沖虎。助力させて頂こう。ですのでどうか、主……いや姉上は今しばらく
休息させてもらえぬだろうか」
「白丕の事か。今しばらくも何も、白丕もサーシュもボロボロだろう。
傷ついた仲間の助けを借りる事は……いや、無いと言い切ったらどやされるな。
今は力を借りない。だが……後で力を借りる事になるだろう。それでもいいか?」
「ええ。そのお言葉、感謝します。こちらの獣と一緒に土術を行使していけばいいのですね?」
「パモだ。俺はどうもうまく幻術を使えなくて。頼むよ」
「それでしたら一つ試してみては? 我々の力を介してご自身で幻術を使うのです」
「お前たちの力を……介して?」
「私ではうまく説明できませぬ。ルジリトに説明をしてもらいましょう」
平伏したまま沖虎はルジリトを見る。
そういえば昔……メルザと手を合わせて、幻術を発動したっけ。
ルジリトは目を細めると、少し思案して口を開いた。
「今しがた封印して頂いたばかりですが気づいた事があります。
これまで主であるルイン殿は、封印内の事に関してどなたかに質問してみましたか?」
「そういえば……みな快適な場所だって聞いた事があるくらいで、詳しく調べた事は無かった。
そもそも俺が入れないから調べようがないんだけど」
「あなたの仲間はこの封印についてどれほど理解していましたかな?」
「あまり……便利なものと思うくらいだった」
「ふむ。装備への封印。いつでも外へ出る事が可能といえば可能。そして……封印内部から技や
術もある程度行使可能。ここまでは認識されておられるな?」
「ああ。そこまでは把握している」
「あなた自身の術や技に多様な変化を加えられる。これは認識していますかな?」
「俺自身の……術や技の変化だって?」
「ええ。一度沖殿と……パモ殿でしたかな。お二人を封印に戻してみてください。
そして、幻術土斗を左手と右手でそれぞれ、行使してみましょう。
左を沖殿。右をパモ殿に。これは封印者との意思疎通が重要になります」
「わかった、やってみる」
二人を収納すると、手を上げて、幻術を久しぶりに行使してみる。
「土斗!」
しかし相変わらず行使出来ない。やはりダメなのだろうか。
「そうではありませんよ。それはあなた自身の力で行使する土斗でしょう。
命令してみなさい。二人に自分の意のままに。土斗を行使しろと。
それがあなたの本来の力でしょう?」
「っ! そうか。まったく頼ってないで自分の力として行使してるからだめなのか。
わかった、ありがとうルジリト……二人とも、いくぞ! 土斗だ!」
目の前に土の塊が放出されていく。辺り一面土斗を発動していき、どんどんと地面を
埋めていった。
ずっと無理だと思っていた。
そうだ。俺の力じゃ無理だった。
でもこれで、本当に一人じゃない。
みんなは俺の内でも戦える。
どこまで力を引き出せるのかはまだわからない。
それでも、新しい戦い方を覚えられた。
「ルジリト。お前のお陰でまた、前に進むことができた。深く、感謝する」
「勿体ないお言葉です。お役に立てたのなら本望。それでは、先を急ぐとしましょう」
「ああ!」
後ろで見ていたクリムゾンも、少し表情が緩んでいた。
あんたにも感謝してる。
一人じゃ何も出来ない。
だけど……皆と一緒なら、俺はまだまだ進んでいける。
行こう、転移の先へ。
「このままでは難しいですな。さてどうしますか」
辺り一面瘴気が噴き出している。特に転移すると思われる場所はこの位置からではまったく見えない。
まず瘴気を吹き飛ばす必要があるが……地面から噴き出す瘴気を吹き飛ばしたところで、直ぐに転移できなければ意味がない。
クリムゾンが斬撃を飛ばしてみるが、やはり瘴気が舞い上がるだけで消えはしない。
土質そのものを変えてみるか……。
まずは彼の力を借りよう。
「ルジリト。出てきて知恵を貸して欲しい」
「はい。仰せのままに」
ルジリトを封印から出して話を聞いてみることにした。
彼は白丕の参謀をしていたようだし、幻魔界にも詳しいだろう。
「例の転移場所が瘴気で充満してしまっているんだ。何かいい打開策はないかな」
「そうですな。この状況……一時的に大きな壁や土で瘴気を封鎖してしまえば
転移可能となるでしょうが、そういった術はお持ちでは?」
「パモ。出てきてくれ。確か幻土術、使えたよな?」
「ぱーみゅ!」
「ふむ。後は沖殿にもお願いしてみてはいかがですか。彼も優秀な幻術使いですぞ」
「あの青白い虎か。そういえば能力はわからず終いだったな」
それを聞いて、答えを出すまでもなく沖虎が出てくる。
膝をつき合掌をしたまま出てくるその姿は、忠義に溢れていた。
「及ばずながらこの沖虎。助力させて頂こう。ですのでどうか、主……いや姉上は今しばらく
休息させてもらえぬだろうか」
「白丕の事か。今しばらくも何も、白丕もサーシュもボロボロだろう。
傷ついた仲間の助けを借りる事は……いや、無いと言い切ったらどやされるな。
今は力を借りない。だが……後で力を借りる事になるだろう。それでもいいか?」
「ええ。そのお言葉、感謝します。こちらの獣と一緒に土術を行使していけばいいのですね?」
「パモだ。俺はどうもうまく幻術を使えなくて。頼むよ」
「それでしたら一つ試してみては? 我々の力を介してご自身で幻術を使うのです」
「お前たちの力を……介して?」
「私ではうまく説明できませぬ。ルジリトに説明をしてもらいましょう」
平伏したまま沖虎はルジリトを見る。
そういえば昔……メルザと手を合わせて、幻術を発動したっけ。
ルジリトは目を細めると、少し思案して口を開いた。
「今しがた封印して頂いたばかりですが気づいた事があります。
これまで主であるルイン殿は、封印内の事に関してどなたかに質問してみましたか?」
「そういえば……みな快適な場所だって聞いた事があるくらいで、詳しく調べた事は無かった。
そもそも俺が入れないから調べようがないんだけど」
「あなたの仲間はこの封印についてどれほど理解していましたかな?」
「あまり……便利なものと思うくらいだった」
「ふむ。装備への封印。いつでも外へ出る事が可能といえば可能。そして……封印内部から技や
術もある程度行使可能。ここまでは認識されておられるな?」
「ああ。そこまでは把握している」
「あなた自身の術や技に多様な変化を加えられる。これは認識していますかな?」
「俺自身の……術や技の変化だって?」
「ええ。一度沖殿と……パモ殿でしたかな。お二人を封印に戻してみてください。
そして、幻術土斗を左手と右手でそれぞれ、行使してみましょう。
左を沖殿。右をパモ殿に。これは封印者との意思疎通が重要になります」
「わかった、やってみる」
二人を収納すると、手を上げて、幻術を久しぶりに行使してみる。
「土斗!」
しかし相変わらず行使出来ない。やはりダメなのだろうか。
「そうではありませんよ。それはあなた自身の力で行使する土斗でしょう。
命令してみなさい。二人に自分の意のままに。土斗を行使しろと。
それがあなたの本来の力でしょう?」
「っ! そうか。まったく頼ってないで自分の力として行使してるからだめなのか。
わかった、ありがとうルジリト……二人とも、いくぞ! 土斗だ!」
目の前に土の塊が放出されていく。辺り一面土斗を発動していき、どんどんと地面を
埋めていった。
ずっと無理だと思っていた。
そうだ。俺の力じゃ無理だった。
でもこれで、本当に一人じゃない。
みんなは俺の内でも戦える。
どこまで力を引き出せるのかはまだわからない。
それでも、新しい戦い方を覚えられた。
「ルジリト。お前のお陰でまた、前に進むことができた。深く、感謝する」
「勿体ないお言葉です。お役に立てたのなら本望。それでは、先を急ぐとしましょう」
「ああ!」
後ろで見ていたクリムゾンも、少し表情が緩んでいた。
あんたにも感謝してる。
一人じゃ何も出来ない。
だけど……皆と一緒なら、俺はまだまだ進んでいける。
行こう、転移の先へ。
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