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第三章 幻魔界
第六百十五話 笹笛
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見るのに飽きたのか、先ほどまで竹を眺めていたベリアルは、美しく飾られた庭園部分へ
足を踏み入れる。
すると、竹の葉と思われる一部分に手を差し伸べて一枚の葉っぱを持ち戻って来た。
「こいつぁ笹だな。竹しかないと思っていたんだが」
「同じ植物ではないのか?」
「ああ。こいつはあの野郎の故郷にしかねえ代物。大方物語か何かで見つけて
作ったんだろうよ……」
「見た目は同じに見えるだ。何が違うだ?」
「おめえらが食べた料理は竹料理。こいつじゃ竹料理は食えねえな」
「ふーん。何に使う植物だ?」
「こいつは葉っぱ自体を用いて使用される薬剤だ。
他には蒸し料理なんかにも使われるがな。現地人くらいしかわからねえだろう」
「ご主人は何でも知ってるだ。物知りだ」
「一人で二人分みてえなもんだからな。それよりちょっと見てな」
ベリアルは葉っぱの裏側の筋などを取り、丸めて口元にあてる。
するとブゥーーっというような音が鳴り出した。
「ほう、草笛ですな。即席で作られた割にいい音がする。どれ私も」
「ナナーもやってみたいだ!」
「ずるいぞ。のけものにするでない!」
「あんまいっぱいとるなよ。こいつらも成長するかもしれねえ種のようなもんだ。
一人一枚だけにしておけ」
そういうと手頃そうな葉を一人ずつ渡してやった。
「あなたはやはり彼と同じですね。全員平等に扱い、身内にはとにかく優しい」
「あいつはただのお人よしだろ。俺はちげぇ。あれほどバカにゃなれねえよ」
「あれ? うまくできないだ。どうやってやるだ?」
「苦い……」
「食い物じゃねえんだぞバカ野郎! 噛むんじゃねえ!」
ブーーとうまく音を出していたのはクリムゾンだけだった。
そうしている間に、再びルジリトが戻って甘味をテーブルの上に置いた。
「お待たせした。はて? 何をされているのかな」
「ただの暇つぶしだ。ほう……これはなかなかうまそうだな」
「ほんとだ! ナナーも食べるだ!」
「こ、これ! 待たぬか!」
「おめえらまだ食えるのかよ」
「なるべく早めにすませていただこう。まもなく到着する予定なので」
「ああわかってるよ。しかし何で団子が作れねえんだ?」
「材料がありませんからな。形だけはわかりますが」
「……ここにいる間に食わねえと、しばらくは食えそうにねえんだがな」
「ふー、うまかっただ! もっと無いだ?」
「うむ。後は白のいる場所でもらうとしよう」
「おめえら……全部食い尽くしやがった……」
結局甘味処を一つも食べれなかったベリアル。
しかし到着を前に顔色が真剣さを帯びた。
「それではこちらへどうぞ」
「……歓迎されてはいねえな。面白ぇじゃねえか」
来た道を戻るように進むと、景色はがらりと変わっていた。
白い虎のような大きな建物が目に入り、口の扉は固く閉ざされている。
「さて、どんなやつがでてくるのかね……」
ルジリトが扉の前に立ち手をかざすと、赤い印が浮かびあがる。
左右へ割れるように扉がゆっくりと音を立てて開くと奥の部屋が視界に入る。
目の前に一匹の大きな虎のような生物。しかし虎と明らかに異なるのはその色。
白さをより強調した美しい毛並みに黄色い目。
その者は腕を組みこちらを身構えていた。
足を踏み入れる。
すると、竹の葉と思われる一部分に手を差し伸べて一枚の葉っぱを持ち戻って来た。
「こいつぁ笹だな。竹しかないと思っていたんだが」
「同じ植物ではないのか?」
「ああ。こいつはあの野郎の故郷にしかねえ代物。大方物語か何かで見つけて
作ったんだろうよ……」
「見た目は同じに見えるだ。何が違うだ?」
「おめえらが食べた料理は竹料理。こいつじゃ竹料理は食えねえな」
「ふーん。何に使う植物だ?」
「こいつは葉っぱ自体を用いて使用される薬剤だ。
他には蒸し料理なんかにも使われるがな。現地人くらいしかわからねえだろう」
「ご主人は何でも知ってるだ。物知りだ」
「一人で二人分みてえなもんだからな。それよりちょっと見てな」
ベリアルは葉っぱの裏側の筋などを取り、丸めて口元にあてる。
するとブゥーーっというような音が鳴り出した。
「ほう、草笛ですな。即席で作られた割にいい音がする。どれ私も」
「ナナーもやってみたいだ!」
「ずるいぞ。のけものにするでない!」
「あんまいっぱいとるなよ。こいつらも成長するかもしれねえ種のようなもんだ。
一人一枚だけにしておけ」
そういうと手頃そうな葉を一人ずつ渡してやった。
「あなたはやはり彼と同じですね。全員平等に扱い、身内にはとにかく優しい」
「あいつはただのお人よしだろ。俺はちげぇ。あれほどバカにゃなれねえよ」
「あれ? うまくできないだ。どうやってやるだ?」
「苦い……」
「食い物じゃねえんだぞバカ野郎! 噛むんじゃねえ!」
ブーーとうまく音を出していたのはクリムゾンだけだった。
そうしている間に、再びルジリトが戻って甘味をテーブルの上に置いた。
「お待たせした。はて? 何をされているのかな」
「ただの暇つぶしだ。ほう……これはなかなかうまそうだな」
「ほんとだ! ナナーも食べるだ!」
「こ、これ! 待たぬか!」
「おめえらまだ食えるのかよ」
「なるべく早めにすませていただこう。まもなく到着する予定なので」
「ああわかってるよ。しかし何で団子が作れねえんだ?」
「材料がありませんからな。形だけはわかりますが」
「……ここにいる間に食わねえと、しばらくは食えそうにねえんだがな」
「ふー、うまかっただ! もっと無いだ?」
「うむ。後は白のいる場所でもらうとしよう」
「おめえら……全部食い尽くしやがった……」
結局甘味処を一つも食べれなかったベリアル。
しかし到着を前に顔色が真剣さを帯びた。
「それではこちらへどうぞ」
「……歓迎されてはいねえな。面白ぇじゃねえか」
来た道を戻るように進むと、景色はがらりと変わっていた。
白い虎のような大きな建物が目に入り、口の扉は固く閉ざされている。
「さて、どんなやつがでてくるのかね……」
ルジリトが扉の前に立ち手をかざすと、赤い印が浮かびあがる。
左右へ割れるように扉がゆっくりと音を立てて開くと奥の部屋が視界に入る。
目の前に一匹の大きな虎のような生物。しかし虎と明らかに異なるのはその色。
白さをより強調した美しい毛並みに黄色い目。
その者は腕を組みこちらを身構えていた。
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