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第三章 幻魔界

第六百八話 こじ開けた先に

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「ちっ。ここまで来てでけぇ門が邪魔で入れねえか……さっさと一匹でも多く取り込まねえと
あいつがくたばっちまうな。黒星……ブラックヘイロー・集!」

 黒輪をさらに集約させ、一点突破を試みる。振り回すラーヴァティンからは異様な声が聞こえた。
 
「なまくらじゃねえんだ! ちったぁ役に立ちやがれ!」

 思い切りラーヴァティンを黒輪とともに叩き込むと、巨大な扉に亀裂が走る。
 その亀裂からわずかに覗く目が見えた。

「ようやく出てきやがったか。さっさと開けろ。来客だ」
「帰らなければ殺す」

 隙間からわずかに聞こえるか細い声……しかしベリアルは容赦なく扉をこじ開けにかかった。

「幻浅の玄。おめえだな」
「近寄るな。地上の魔め」
「別に近寄らなくてもいいぜ。話をさせろ」
「野蛮で下賤の者と話すつもりなどないわ」
「悪い話じゃねえよ。おめえ、地上へ行って暴れたくはねえか?」
「そのような世迷言を聞く気は無い。去れ」
「取引がしてえだけだ。なんだ随分小せぇ女だな。ナナーと同じくらいの背丈か」
「黙れ!」

 亀裂の入った扉が突如として吹き飛ぶ。
 中から現れたのは、黒褐色に緑色の髪をした少女だった。
 一気に間合いを詰め、ベリアルの懐へ拳を叩き込んだ。

 右腕でガードをしているが、次々に攻撃が繰り出されていく。
 防がれた拳は既に右回りに回転して体から離れ、その体制から下段への回し蹴りへ。
 当たる事を意識せず流れるようにそのまま一回転して右上段かかと落としを決める。
 それもつまらなそうに片手で受け止めると、バックステップを踏み正面へ両手を合わせて構えた。

「亀死千万、生を消費し生を消す。魔陽花里報来」

 両手を前方へ突き出すとともに、緑色の衝撃波が正面を撃ち抜く。
 少しだけニヤリと笑うベリアルは片手を前に突き出していた。

「悪くねえ武術だな。まぁ関係ねえけどよ、俺には」
「な……ぜ」

 その衝撃波を片手でくらうと、ベリアルの腕はどう見ても大打撃を受けていた。
 しかしそれと同時に幻浅の玄にも等しくダメージが入る。

「おめえがうかつに直接攻撃するからよ。魔憑きだ。聞いた事くれぇあるだろ? 
アスモデウスのくそ野郎が得意とする技だ。俺にはあまりあわねえな」
「ぐう……卑怯な技を!」
「卑怯? こっちの話も聞かずいきなり攻撃してくるおめえが卑怯だと俺に言うのか?」
「……突然押しかけてきて、小せぇ女とバカにしただろう!」
「ああ? よくわからねえやつだな。小せぇものは小せぇ。だがベリアルは細かい事を気にしねえ。
まだ続けるなら相手してもいいが、あまり力は使いたくねえ。何せ他にも三匹いやがるみてえだからよ」
「三匹だと? 貴様は何をしようとしている」
「全員俺に従わせて力とし、地底のタルタロスをぶん殴る」
「何を言っているのかさっぱりわからない。何を企んでいる」
「別に何も企むつもりはねえな。まあ一つだけあるとするなら……復讐はしてえな」
「復讐だと?」
「今のおめえにはまったく関係ねえ。それに従わねえなら無理やり力を奪うしかねえ。
従うなら悪いようにはしねえ。地上へもちゃんと連れてってやる」
「……到底敵わぬ相手だ。だが私の身まではやらぬぞ!」
「あん? 何言ってやがる」
「貴様は地上のものだろう。いかがわしいことをすぐにすると聞いているぞ!」
「おめえの役割はナナーと同じく飯を作ることだ」
「ほらみろ! やっぱりいかがわしい飯……だと?」
「ああ。ちゃんとやれよ。いいな」
「……何なのだこいつは」

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